北欧神話では神々は2つの種族に分かれています。
北欧神話の神は古くから豊穣神として信仰されていた『ヴァン神族』と、戦の神として信仰されていた『アース神族』が存在していました。
いわゆる、神話の物語の中で、主人公のような扱いを受けているのは、後者であるアース神族であり、ヴァン神族は住む場所すらもアース神族とは違う場所になっています。
今回はこのアース神族とヴァン神族の間に何がおこったのか?
同じ神でありながら2つの種族の違いなどについて出来る限り分かりやすく紹介していこうと思います。
アース神族とヴァン神族は神々で戦争をしていた
以前の記事で、北欧神話における世界の始まりについては解説しました。
そもそもが結構カオスなお話なので、北欧神話に興味のある方は是非先にチェックしてみて下さい。
さて、北欧神話ではかなりカオスな状況で『世界』というものが作られたわけなのですが、世界が作られてから間もなく、ヴァン神族とアース神族はお互いに戦争を始めることになります。
系統そのものは違う2つの勢力でしたが、やはりそこは神様ということもあり、互角の戦いが長い間続いてしまったそうです。
この戦いの年月については分かりませんが、あまりにも長く戦った神々はお互いに戦うことに倦んでしまい、その結果、両種族の間で和睦をするという話が持ち上がりました。
なぜ神々が争ったのかについては諸説ありますが、北欧神話はゲルマン神話とも呼ばれることがあり、征服者であったゲルマン人の信仰対象がアース神族であったという説があります。
そして、元々ヨーロッパに住んでいた農耕民族によって信仰されていたのがヴァン神族だと言われているのです。
※他の神話に関連して神話形態をお互いに補完するための役割付けだという説もあるそうです※
さて、話を和睦に戻しますが、神々はお互いの種族の重要な神を、相手の種族の人質として交換することで、争いをやめようということになります。
人質交換でまたもや争う神々
画像引用元:ニョルズ
さて、お互いの停戦において人質に選ばれたのは、ヴァン神族からは最高神である『ニョルズ』とその子供に加えて賢神と呼ばれた『クヴァシル』でした。
一方、アース神族からの人質は、美しいことで有名であった『ヘーニル』と知恵者として知られていた『ミミル』の2人が選ばれました。
明らかにヴァン神族が譲歩したようにも見えるこの人質交換でしたが、ここでアース神族はある意味で裏切りとも言える行為を行うのです。
実は、見た目は美しいアース神族のヘーニルでしたが、ミミルが居なければ何も出来ないといういわゆる出来損ないな人物であり、ヴァン神族にとって全く人質としての価値がない存在だったのです。
この事実に気付いたヴァン神族は怒り、ミミルの首を跳ねた上でアース神族の本拠地である、アースガルズへ送り返してしまいます。
これら一連の事件をキッカケにヴァン神族達は北欧神話にほとんど登場しなくなるのです。
ユグドラシルにおける神の住む場所
画像引用元:北欧神話
北欧神話の世界は全部で9つあるとされており、その中心にそびえ立つのが「ユグドラシル」という巨大な樹木です。
人気ロックバンドのバンプオブチキンのアルバムのタイトルになったこともあるので、『ユグドラシル』という言葉は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
このユグドラシルを中心にした巨大な世界には、様々な種族が住んでいるとされているのですが、アース神族は神話の主役でもあるため、世界の中心となっている『アースガルズ』に住んでいます。
アースガルズからは世界の全てが見渡せるとも言われており、さらにその中心の館に居を構えるのがアース神族の最高神である『オーディン』です。
その一方で、ヴァン神族は『ヴァナヘイム』と呼ばれる場所に住んでおり、アースガルズからは遠く離れた場所に追いやられていたとされています。
これらは、神話が構成されてく上で、かつてあったとされる国の名前が元となっているという説があり、北欧・ゲルマン神話における人種の多様性を表しているとも考えられています。
ギリシャ神話などでも神同士の争いはありますが、北欧神話の神様は特にそれらが顕著に現れているように感じられます。
今回はアース神族とヴァン神族という2つの神の種族について紹介しました。
次回は、人間の住む『ミッドガルズ』について触れていきたいと思います。