『モナ・リザ』は知ってる。
『最後の晩餐』も知ってる。
でも、何が凄いか分からない。
こういう方、少なくないと思います。
絵画ってものすごくハードルが高くて、なんかいろいろ知ってないと楽しめない感じ…。
しかし、「なんとなく」で絵画の魅力を知らないのは、非常にもったいない!
「ダ・ヴィンチって何が凄い?」と興味を持ってくれた貴方には、せめてダ・ヴィンチの絵画の魅力だけでもお伝えしたい。
以下から、誰もが知るレオナルド・ダ・ヴィンチの主要作品を取り上げ、
- 作品の魅力
- ダ・ヴィンチの凄さ
などをご紹介していきます。
『ウィトルウィウス的人体図』から見る、人体を知り尽くしたダ・ヴィンチのリアルで迫力ある人間。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、人体の構造に非常に興味を持っていました。
「画家なのに、人体?」
と思うかもしれませんが、人間の骨格・筋肉・皮膚・パーツ・バランス等を知らずに人間を描こうとすると、間違いなくいびつな人間になってしまいます。
ダ・ヴィンチは、街を散歩しながら目に留まった人物を1日中尾行し続け、その表情や身体をデッサンしていたそうです。
天才と変態は紙一重というか、完全にアブナイ人ですね(笑)。
しかも、芸術家ダ・ヴィンチが尾行していた人物は、均整のとれた美しい人ではなく太っていたり顔がしわくちゃだったり、どこかイビツで「個性」を感じさせる人だったといいます。
医師より人体に精通していた、解剖学者ダ・ヴィンチ。
またダ・ヴィンチは、自ら人間を解剖しその様子をデッサンするなど、解剖学の知識も医師顔負けでした。
人体解剖図を見て勉強するのと、自分で人体を見て触れて感じるのとでは、人間の描き方はまったく変わってきます。
ダ・ヴィンチの絵画には、人間観察と解剖学の知識・経験に基づくリアリティがあり、たった1枚の絵に生々しい迫力が宿っています。
人間の一瞬のリアルな動きを絵画に永久に残そうとした画家が、レオナルド・ダ・ヴィンチなのです。
『最後の晩餐』に見る、ダ・ヴィンチの計算し尽くされた絵画の技法。
人間の錯覚を駆使して、絵画の世界を「体験」させてくれる作品が、レオナルド・ダ・ヴィンチの代表作『最後の晩餐』です。
この絵画の主人公は、イエス・キリストですよね。
さて皆さん、この13人のうち誰がイエス・キリストか分かりますか?
このシーンのことも、聖書のことも、ましてキリストのことさえ一切知らなくても、
「真ん中の人物が、イエス・キリストだ」
ということが誰にでも無意識に分かる、あるいはそうだと予測できてしまいますよね。
これは最後の晩餐が「一点透視図法」によって描かれており、その消失点がイエス・キリストの右こめかみに位置しているため、誰もが自然とキリストの顔に注目してしまうのです。
『最後の晩餐』がもたらす体験
また最後の晩餐は、当時食堂だった部屋の壁の床から2mほど高い部分に描かれています。
ある位置から最後の晩餐を見ると、絵の天井と食堂の天井・壁がピッタリとつながり、あたかもその食堂が最後の晩餐の舞台であるかのような錯覚を感じさせてくれるのです。
当時のキリスト教徒たちは、イエス・キリストと一緒の食卓を囲むという「体験」ができたことでしょう。
レオナルド・ダ・ヴィンチは舞台演出にも長けており、貴族を楽しませるエンターテイナーでもありました。
このように、ダ・ヴィンチの絵画は見るだけでおしまいではありません。
その絵画でしか得られない「体験」さえも提供してくれるのです。
『モナ・リザ』に見る、自然を追求し続けた結果生まれたオリジナルの技法。
「万能の天才」と呼ばれるダ・ヴィンチは、それこそ万物あらゆる物事に興味を持っていました。
その中でも特に関心を持ち続けたものが「自然」です。
- 鳥はなぜ空を飛べるのか?
- 葉はなぜ色が変わるのか?
- 水はどのように流れるのか?
- 月はなぜ夜でも明るいのか?
こうした日常でみかける自然のささいな現象に、ダ・ヴィンチは特に関心を示し続けていました。
自然としての調和がとれていることと、絵画ならではの表現技法を追求し続けた結果、レオナルド・ダ・ヴィンチが開発した技法が「スフマート」と呼ばれる描き方です。
スフマート(イタリア語:Sfumato)は、深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法。特に、色彩の移り変わりが認識できない程に僅かな色の混合を指す。
普通の人からしたら、「なんのこっちゃわからん」って話ですよね。
このスフマートを用いた代表作が、かの有名な『モナ・リザ』です。
たとえばあなたがモナ・リザを模写しようとした時、まずペンを使って輪郭を描いていきますよね。
モナ・リザには、この「輪郭」が無いんです。
口元や目元・鼻筋などが皮膚と滑らかに溶け合い、顔の輪郭さえも髪の暗さに混じり境界が曖昧になっています。
当たり前ですが、人間の身体に境界は無く、輪郭もありませんよね。
しかし人間を描こうとすると、なぜか皆輪郭を描いてしまいます。
モナ・リザにはこの輪郭が無く、絵の中の人物ということを忘れさせてくれるのです。
肌の柔らかさや体温まで感じられそうですよね。
限りなく写実的でありながら写真ではなく、絵画ならではの技法を追い求めた結果『モナ・リザ』という究極的なリアリティを感じる絵画が創られたのです。
ダ・ヴィンチの絵画の魅力は、とってもシンプル。
レオナルド・ダ・ヴィンチが描く絵画には、私たち「人間」の魅力が詰まっています。
ダ・ヴィンチの生い立ちとか、キリスト教の知識とか、絵画の技法といった小ネタを知るほど楽しめることは否定しませんが、そんな知識は一切無くても良いんです。
- 人間の力強さ
- 美しさ
- 躍動感
- 存在感
などなど、言葉では説明できない「人間」の魅力を、ダ・ヴィンチの絵画からは特に感じることができます。
絵画に吸い込まれそうになったら、もうアナタはダ・ヴィンチの虜!
いろんな作品を鑑賞して、感じるものをありのままに楽しんでください。