秦の始皇帝の目指した不老不死と水銀の妙薬

過去2回にわたってキングダムのモデルになった始皇帝の実像や功績について簡単に紹介してきましたが、ここからは少しミステリアスなお話になります。

中国を史上初めて統一した政こと始皇帝は自身の墓となる陵墓を王位についた段階で建設し始めていました。

その一方で、自分自身の寿命を悟ったからなのか、それとも当時の方士と呼ばれる詐欺師のような人間に吹き込まれたのか…

理由は定かではありませんが、中国を統一し、三皇五帝を超えた始皇帝は自分自身を普通の人間とは違うと考え始めたと言われています。

そして求めたのが「不老不死」になる方法でした。

謎の渡来人である秦氏の正体の一説によれば、秦氏は始皇帝の末裔、もしくは始皇帝から不老不死の薬を見つける密命を受けた徐福という人物が日本に辿り着いて定住したという逸話があります。

くわしくは以下の記事をご覧下さい。

もちろん、これ以外にも始皇帝が不老不死の秘薬を探し求めていたのには理由があるのかもしれません。

始皇帝の求めた不老不死の秘薬

画像引用元:始皇帝

始皇帝は中国を統一したあと、国内の巡業を行なっています。

この時、泰山という場所で、古代中国の時代から神に選ばれた天子のみが行なった「封禅」という儀式を執り行います。

始皇帝以前にこれを行なった記録は、殷の後の王朝である周の時代であり、その期間は誰もこの封禅をおこなっていませんでした。

この儀式は天地の神前において、天下泰平を安寧する目的のものでしたが、始皇帝の時代には封禅の正しい手順の記録がなかったことから、始皇帝は自分自身の判断でこの儀式を行います。

その時に願ったと言われているのが「不老不死」という野望だと言われているのです。

これらは神仙思想に基づく考え方だったとも言われています。

神仙思想は紀元前3世紀ころ、あるいはもっと古代から中国では存在しており、瞑想や気功の体得によって「仙人」になることを目指す「方士」と呼ばれる修行者が存在していました。

神仙思想という一種の考え方の中では、この修業を完成させた方士は不老不死の力を持つとも言われていたのです。

実際にはこれらの方士を名乗る殆どは金目当ての詐欺師のような存在であったそうですが、方士は道教が成立したあとに道士と呼ばれることになります。

少し話がずれますが、「封神演義」で活躍した多くの道士は、この神仙思想に基づく架空の登場人物達でした。

話を戻しますが、燕の国には当時このような方士を名乗る人物が多く居たようで、始皇帝が中国を統一した後に、神仙思想の知識を武器に取り入ろうとしたと言われています。

この結果、徐福などに不老不死の秘薬を探すように命じたり、これらの自称方士が始皇帝に渡した妙薬の中には「水銀」が混ざっていたとも言われています。

言うまでもなく「水銀」は猛毒であり、これが原因で始皇帝は短命に終わったのかも知れません。

始皇帝が不老不死を目指した理由とは?

始皇帝は法による統治に非常に重きを置いた人物であり、この考え方はそれまでになかったことでした。

後の時代になれば例えば諸葛亮孔明などは蜀が国として成立した後、内政や軍政に厳しい法律を課したことで有名です。

また、始皇帝から逃げた方士は以下のように史記で始皇帝を評しています。

始皇帝は生まれながらの強情者で、成り上がって天下を取ったため、歴史や伝統でさえ何でも思い通りにできると考えている。獄吏ばかりが優遇され、70人もいる博士は用いられない。大臣らは命令を受けるだけ。始皇帝の楽しみは処刑ばかりで天下は怯えまくって、うわべの忠誠を示すのみと言う。決断はすべて始皇帝が下すため、昼と夜それぞれに重さで決めた量の書類を処理し、時には休息さえ取らず向かっている。まさに権勢の権化と断じた

引用元:始皇帝

これは、一見すると悪評のようにも見えますが、権勢の権化とは言われているものの、実はこれは諸葛亮孔明が劉備の亡くなった後に行なった内政と非常に似ているのです。

また、実際の改革事業には李斯などの人物も関わっていることから、いわゆるペテンの代表であった方士の捨て台詞のようにも見えてしまいますね。

自身を神格化しようとした暴君とも捉えられがちですが、過去に誰も成し遂げなかった中国の統一を安定させるために、始皇帝は不老不死の秘薬を求めたのかもしれません。

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■2019年秋、オカルトオンライン開設 ■2019年11月、副編集長就任 ライター、Web業務歴6年。 映画とマンガと本によってオカルト脳になった人。 分からないことを知るのが喜び。 だがしかしホラーは苦手。 古代史、人物研究、神話が好みです。