15世紀末ルネサンス期のイタリアを代表する芸術家といえば、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
知らない人はいない「万能の天才」ですね。
そしてそのダ・ヴィンチが描いた最高傑作の絵画の一つが、『最後の晩餐』です。
小説・映画『ダ・ヴィンチ・コード』では、この作品にイエス・キリストにまつわる”常識を覆す謎”が隠されており、その謎の解明と主人公を狙う者からの逃走劇が面白い作品でした。
[amazonjs asin=”B00MHG1ZCW” locale=”JP” title=”ダ・ヴィンチ・コード (字幕版)”]このように、絵画自体は有名なのに、
- 絵画の場面
- 描かれた経緯
- 何が傑作なのか?
こういうことはほとんど知らず、名前や謎だけが独り歩きしている絵画ともいえます。
その『最後の晩餐』の魅力を、簡潔に明らかにしていきます。
人間たちが生き生きとしている
ダ・ヴィンチが生きた時代の肖像画などは、良く言えば厳かであり、悪く言えば人間味のないテイストが主流でした。
このダ・ヴィンチの初期作品『ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像』も当時の流行を受け、表情は堅くモナ・リザのような微笑みもありません。
後にダ・ヴィンチはこの流行に逆らい続け、人間を生き生きと描くという自身のこだわりを極めた結果、『最後の晩餐』が生まれました。
最後の晩餐をもう一度じっくり見てみると、全員がまるで今にも動き出しそうですよね。
全員の会話、食卓のざわめき、食器の音などが生々しく聴こえてきそうです。
一人ひとりがどんな気持ちでどんな会話をしているのか想像できてしまう生き生きとした人間模様を、ダ・ヴィンチは一枚の絵画に封じ込めているのです。
実はかなり大きい
実物の『最後の晩餐』は、
- 縦420cm
- 横910cm
という非常に巨大な絵画です。
6畳が約11mなので、六畳一間の部屋の半分を占めるくらいの大きさ。
この巨大な超大作を、ダ・ヴィンチはわずか3年で仕上げています。
バランスのとれた構図
- イエス・キリストが絵画の中心になるように、一点透視図法で描かれている
- 12人の使徒を、3人ずつ4つのグループに分けて描いている
など、『最後の晩餐』は12人もの人間を描きながら、上下左右すべてバランスのとれた完璧な構図で描かれています。
12人全員、実在の人物をモデルにしている
『最後の晩餐』に描かれている12人の使徒は、レオナルド・ダ・ヴィンチがイタリアの街で見つけた人物がモデルになっています。
中でも、イエス・キリストを裏切る「ユダ」のモデルには、かなり苦労したそうです。
わたしは一年以上も毎日、朝から晩までボルゲットに出向いている。そこは下賤で卑しい者たちが暮らす場所で、大半は悪党である。そこに、あの悪党にピッタリの顔がないかを探すために、ただそれだけのために、わたしは毎日、出向いている。
『レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密 天才の挫折と輝き』より引用
まるで映画のキャスティングのように、実在の人物を12人の使徒に当てはめて完成させた作品が『最後の晩餐』なのです。
[amazonjs asin=”4309255663″ locale=”JP” title=”レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密 天才の挫折と輝き”]現存していること自体が奇跡
最後の晩餐は、ミラノにある「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院」の食堂の壁に描かれた作品であり、持ち運んだり丁寧に保存することができません。
1498年に完成してから現在まで、幾多もの侵食や崩壊の危機に遭ってきました。
- 当時食堂として使用されており、食べ物の湿気などで侵食が進んだ
- 修復の際に樹脂などを塗った結果ホコリや汚れが付き絵が黒ずみ、通気性が悪くなりカビも生えた
- 馬小屋として使われていた時期があり、動物の呼気や排泄物のガスでさらに侵食が進んだ
- 1943年の空爆によって修道院の屋根が壊され、土嚢を積んで保護していたものの、約3年間野ざらしの状態だった
これだけの被害に遭いながら、今もなお現存しているのです。
まさに存在自体が奇跡であり、不思議な力に守られているようにも感じられますね。
逸話だけでも十分スゴイが、生はもっとスゴイ!
全長約10mもある『最後の晩餐』は、生で鑑賞するととてつもない迫力です。
ユネスコの世界遺産に登録されて以来、保存状態を良くするため鑑賞は完全予約制となり、観光客の人数が制限されています。
イタリアのミラノに訪れる機会があれば、見学の予約をして実際の『最後の晩餐』を眺めてみてはいかがでしょうか?
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