古代中国の殷王朝は中華の歴史の中で初めて成立が確認されたとする最古の国でした。

この殷王朝末期に起こった歴史の出来事を面白く脚色したのが、明の時代に書かれた「封神演義」という小説です。

中国には三大奇書、もしくは四大奇書として挙げられる「三国志演義」や「西遊記」といった有名な物語があるため、封神演義そのものはあまり取り上げられる事が少ないです。

しかし、日本でも週刊少年ジャンプに連載されていた藤崎竜の「封神演義」によって面白い話だと認知されるようになっていきました。

ただし、この封神演義に関しては意訳の間違いや漢字の読み間違いなども指摘されていたり、原作となった翻訳版にも問題点があったことが指摘されています。

では史実としての時代背景や登場人物はどんな存在だったのでしょうか?

まずは、中国の悪女としもて名高い殷の王妃であった「妲己」について取り上げてみたいと思います。

史実の妲己もやはり悪女だったのか?

画像引用元:妲己

殷の王朝が成立したとされているのは、およそ紀元前1500~1600年頃のことだったと言われています。

分かりやすくするために日本での火付け役となっている藤崎竜の封神演義と対比しますと

妲己が殷の最後の王であった紂王に見初められ、当時の女性の中では妃という自由自在な生活が出来る身分へとつきました。

藤崎竜のマンガでは妖怪仙人が多く書かれていますが、封神演義の中で伝わる「妲己」もいわゆる妖怪、もののけの類であったのではないか?とも噂されています。

日本の有名な妖怪で言えば玉藻の前などに始まる狐の妖怪です。かの葛飾北斎は妲己を九尾の妖狐として描いています。

さて、この妲己は紂王に非常に寵愛されていたことは中国の「史記」などからも確認出来ます。

マンガでは妖術?テンプテーションを使うキャラでしたが、実際には紂王から最も愛されていた妃であった訳ですね。

そして紂王自身は殷王朝最後の王でした。これを倒したのが周の国を築いた武王や太公望などですね。

最終的にはマンガはちょっと異次元に飛んでいきますが、それは一旦置いておきましょう。

元々、紂王そのものも評判の悪いとされていた人物でしたが、実は殷が使っていた甲骨文という文字を解読した結果、それまで悪習として行われてきた人身御供などの制度をやめさせたのは、紂王だとも判明しているそうです。

一方で、妲己の言うことは何でも聞いてしまっていたという悪評もやはり史書などでは伝わっています。

そんな妲己の言いなりになった紂王の放蕩話の中で有名なものと言えば、現在でも残っている「酒池肉林」という言葉です。

「酒池肉林」の語源となったのは、紂王と妲己が行っていたとされる遊びの1つです。

人工池に酒を満たし、木々には肉を掛けて、平民や貴族の男女を裸にして追いかけ合いをさせ、それを眺めながらお酒を飲むというのが妲己にとっての楽しみだったのです。

(既にサイコパス感がやばい)

しかし、妲己の怖さというのはこういう変わった趣味だけではなかったんですね。

炮烙を見て笑ったとされる妲己

中国の「史記」によると、当時の刑罰の1つであった炮烙という人間を焼けた丸太にくくりつける、もしくはその上を歩かせて耐えれば免罪(事実上の処刑)という案を考えたのは妲己であり、紂王はこれを採用して実行したようです。

この辺りの描写は先の漫画版ではサラッと書かれていますが、史記によればこの刑罰に失敗した人間を見て紂王と妲己は笑い転げていたそうです。どう見てもサイコパス。

他にも、「列女伝」という中国の女性像をまとめた史書や「漢書」などの中でも残虐な行為を見て楽しんでいたことが妲己の記録として残されています。

封神演義で書かれたように、妲己の甘言を聞いたことが原因で紂王、牽いては殷の国は滅んだという説も多いです。

当時の殷王朝では残虐な処刑が多く実行されており、これが原因となって武王と文王などの周辺諸国が立ち上がり、最終的に殷が滅ぼされたとする説が多く残されています。

妲己の最後

そんな放蕩生活にあぐらをかいて楽しんでいた妲己ですが、史記などによると紂王が討たれた際に、武王によって処刑された、もしくは紂王が自殺してしまい、その後に武王によって首を落とされたとされています。

後者の説では「紂を亡ぼす者はこの女なり」と評された事も記述されているようですので、やはり史実上での妲己も相当の悪女であったのではないかと予想されます。

が、最後に問題点が1つ。

実は、殷の遺跡となっている場所から妲己に関して記述のある甲骨文は今の所見つかっていなかったりします。

ただし、史記などの史書で触れられていることから、封神演義でのストーリー性をもたせるために脚色はされているものの、妲己に相当する人物は実在したのかもしれません。

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