今回紹介したいのは「世界の七不思議」の中でも、最も史料の乏しいとされている巨大なゼウス像のお話です。

ギリシャ神話に語られるオリンポスの最高神とされるゼウスは今では多くの人が知っている神様の1人です。

ギリシャ神話はその物語自体が面白く、いわゆる冒険ストーリーなども多いことから様々なメディアの題材に取り上げられることも多いですよね。

人気の題材にされた代表的なもので言えば、昭和世代であればビックリマンシールのキラキラではないでしょうか?(古い)

近年のゲームなどでもゴッド・オブ・ウォーシリーズ、パズドラなど幅広く登場するゼウス神ですが、古代オリンピアでは当然ながら最高神として多くの人に信仰されてきました。

そんな信仰の集大成とも言えるのが、紀元前430年頃にオリンピアで作られたと言われる巨大なゼウス像でした。

この壮大な建築物は、現在でも遺跡が残る有名なパルテノン神殿のアテナ像を作ったとも言われている彫刻家フェイディアスの作品であったとも言われています。

古代オリンピアに存在した巨大ゼウス像

ギリシャ神話の信仰は実は歴史的な宗教の問題で一度途切れたことがあります。ちょうど、古代ローマ帝国が覇権を伸ばしていたキリストが生きていたとされる西暦が始まった頃からヨーロッパを支配下においていきました。その結果、西暦391年にローマ帝国はキリスト教以外の信仰を禁止します。

ローマの支配下にあった古代ギリシャでも自動的にギリシャ神話やオリンピアへの信仰が禁じられた為、ギリシャ神話の口伝などはあまり公にならなかったのです。

世界の七不思議の数えられるオリンピアのゼウス像は、ローマ帝国の支配が及ばなかった紀元前430年前後に活躍したフェイディアスという一流の彫刻家によって制作されました。

フェイディアスが一流だとされた根拠はいくつかありました。

アクロポリスの丘にあった10メートル近い「アテナ・プロコマス像」や、先にも紹介したパルテノン神殿の「アテナ像」など、当時の美術品の最高傑作と呼ばれた作品を造った人だったからです。

この高名な彫刻家に声を掛かけたのはゼウス聖域評議会と呼ばれる団体であったと言われています。

既に彫刻家としては最高峰の評価を受けていたフェイディアスは政治的な問題によって一度アテネから追放を受けていたとされています。しかし、その後評議会の要請を受けてオリンピアへ向かいます。

歴史上最初のオリンピックが行われたと言われているのが紀元前776年、そしてその後もオリンピアではオリンピックが続いていました。

これらのオリンピックに集まる多くの人々はギリシャ人であり、当時は多くの神々が祀られており、その中でもゼウスは最高神として象徴的な存在であったのです。

この偉大な神を称えるために、ドリス式と呼ばれる神殿にゼウス像の制作をする仕事がフェイディアスに託されることになります。

この依頼を受けたフェイディアスが制作したとされる巨大なゼウス像は、1メートルの大理石の台座に象牙と金をあしらった高さ13メートルにもなる巨大な彫刻だったのです。

ゼウス像の崩壊と焼失

画像引用元:コンスタンティノープル

フェイディアスがゼウス像を制作したとされてた時期はおよそ紀元前430頃でしたが、その後、紀元前200年頃にダモフォンという人物がゼウス像を修復したという記録が残っているそうです。ここまでおよそ250年ほどの間は多くの人に見られた巨大なゼウス像もローマ帝国の影響を受けてしまいます。

紀元37年頃、ローマの皇帝であったカリグラによってこのゼウス像をローマへと移動させようと計画しましたが、失敗に終わります。

その後、キリスト教徒によって異教とされたことからゼウス像の神殿の近くにあったとされるフェイディアスの工房はキリスト教の教会になり、オリンピアが見放されたことでオリンピックも行われなくなりました。

これらの要因からゼウス像はコンスタンティノープルへと移動されたと言います。コンスタンティノープルは現在のトルコ、イスタンブールの前身であり、古代東ローマ帝国の首都でした。

現在でもイスタンブールにはコンスタンティノープル総主教庁と呼ばれる正当教会の本部があります。

さて、東ローマ帝国に移動させられてしまったオリンピアのゼウス像でしたが、移動から約70年ほど経った紀元462年、コンスタンティノープルでの火事が原因でオリンピアから運ばれたゼウス像は完全に歴史から焼失してしまいます。

ゼウス像の実在性について

世界の七不思議に数えられるこのゼウス像の実在性は当時その姿を確認した古代人によって現在に伝わっています。

例えば地理学者であったストラボンや、詩人のカリマコス、旅行家パウサニアスなどが、このゼウス像の出来栄えを評価しているのです。

ちなみにこのゼウス像は実は座っている姿だったとも言われています。

地理学者ストラボンがゼウス像について、

参考出典:考古学70の不思議

「彫刻家フェイディアスは座っている大ゼウス像をつくった。それでも頭は天井にとどきそうなほどなので、もしゼウス像が立ち上がったら神殿の屋根をはじき飛ばすのではないかと思われる。」

という言葉を紀元1世紀ころに残しているそうです。

このことから、ゼウス像は実在していたものの、火事によって完全に焼失した幻の彫刻となってしまったと考えられます。

さらに、歴史の遺物から散見する僅かな姿しか確証が取れないため、完全な当時の姿は誰にも解明出来ないとも言われています。

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