かつてCIAによって主導された洗脳実験『MKウルトラ計画』とは -後編-

※これはCIAによって極秘裏に行われた洗脳実験『MKウルトラ計画』に関する記事の【後編】です。本記事をお読みになる前に、ぜひとも前編をお読みください。

かつてCIAによって主導された洗脳実験『MKウルトラ計画』とは『MKウルトラ計画』 -前編-

被験者は「ボランティア」という有志

ここまでお伝えしたとおり、『MKウルトラ計画』の実験内容はとても恐ろしいものでした。しかしその実験内容もさることながら、被験者の獲得方法もまた恐ろしいものだったのです―。

いかなる実験にも被験対象(被験者)は必要不可欠ですが、『MKウルトラ計画』実行に向け、これを得るためにCIAが目を付けたのが精神病院でした。
やがてCIAは被験者を獲得するため、精神病院に収容されていた患者たちに対して”新たな治療のための実験”として説明し、その協力を仰ぎました。このとき、この実験の背後にあるCIAや元ナチスの人間の関与がひた隠しにされていたことはいうまでもありません。

『MKウルトラ計画』のキーマン

“精神病院の収容者を被験者に”

ここで暗躍したのが、ドナルド・イーウェイン・キャメロンという人物。彼は『MKウルトラ計画』における被験者集めに大きく貢献したといわれています。それもそのはずで、彼は権威ある精神科医であったため、こうした患者たちを取り込むための説得力や信頼は、十分すぎるほどに持ち合わせていたのです。
そのため、多くの精神疾患の患者たちが”精神医学に貢献したい”という善意と期待に駆動され、ボランティア(有償)としてこの実験に協力することになったのです。その誰もが、まさか自分たちが後の犠牲者となることは知る由もありませんでした。

ドナルド・イーウェン・キャメロン

アメリカの精神科医。カナダ・アメリカ両国の精神医学会会長。世界初の精神科デイケアを行ったことで知られている。
また、「ニュルンベルク裁判」において、ナチスの副総統であったルドルフ・ヘスの精神鑑定を行った人物でもある。

ニュルンベルク裁判:第二次世界大戦における戦争犯罪者を裁くための国際軍事裁判。多くのナチス党員が裁かれ、死刑となった。被告となったのは主要戦犯であり、ナチスの最高指導者アドルフ・ヒトラーをはじめ最高幹部のヨーゼフ・ゲッペルス、親衛隊トップのハインリヒ・ヒムラーが自殺していなければ、これにて裁かれていた。

精神科医キャメロンは「シロ」か「クロ」か


精神科医キャメロンは、かつて携わったニュルンベルク裁判によってナチスの恐ろしさを目の当たりにしていました。そのため彼は、”二度とナチスのような組織が出現してはならない”と自身の論文の中で記しています。
これを踏まえた上でこの実験の関与を好意的に捉えるならば、”精神科医である自分ができることはなにか”、その答えを見出したのが『MKウルトラ計画』であったということ。つまりキャメロンもまた、被験者(犠牲者)となった精神疾患の患者たちと同じように、医学実験だと信じてこの非人道的な実験に関わった”被害者”という見方です。
逆に捉えるならば、CIAからの膨大な資金援助によって突き動かされてしまった”黒幕”という見方もできます。

被害者は数千人規模

この実験における被験者集めのターゲットとなったのは、精神病院だけではありませんでした。精神病院以外の病院やホスピス、大学、軍隊、売春宿などがその対象であったといわれています。そのため、医師や軍人、さらには妊婦といった人たちが被害者となりました。驚くことに、この被害者の中には身内であるはずのCIA職員もいました。つまりこの実験において、被験者たちの属性は問わなかったことを意味しています。

この実験の参加によって被験者たちには報酬の約束が交わされていましたが、多くの被験者がそれを受け取ることなく命を落としました。また生き残ったとしても、終生障害に苦しめられることになります。

かつてのナチスによる人体実験。それにも引けを取らぬ非人道的な実験として、確かに存在していた『MKウルトラ計画』。
しかし証拠物となる関連文書は破棄され、証人となる被験者の多くは殺されました。辛うじて生存者となったものは皆、記憶喪失などの障害により口をつぐまれました。

今となってはその全貌を知ることはもはや不可能であり、真実は闇の中。
『MKウルトラ計画』は「マインドコントロール(洗脳)の効果を立証するための実験」として、これから先もその名を遺すのです。

テンペワゾウスキ

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