鹿児島県に悪石島という離島があります。
最近では、地震が多発していることで注目されているトカラ列島ですが、大和文化圏と琉球文化圏が交差している鹿児島県本土の南端に位置するこの場所で行われている”悪石島のボゼ”についてのお話です。
そもそもどうして悪石島という名前?
鹿児島県の悪石島は、鹿児島の最南端。
とても美しい海がある場所ですが、それにしても悪石島なんてなかなかものすごい名前だと思いませんか?
どうして、島に悪なんていう漢字をつけたのでしょうか。いくらなんでもこんな漢字を当てなくてもいいじゃないの!と思ってしまいますよね。
実は、悪石島の由来に関しては、様々な説があるそうですが
「島のあちこちに石があり、崖から落ちてきそうだから」
「平家の落人が、追手が来たがらないような名を付けた」
引用:悪石島フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
という説があるそうです。
悪石島は、火山特有の地形をしていて島の周囲は断崖絶壁。起伏があり平坦な土地が少ないのが特徴ですので、岩が今にも落ちてきそう・・・だから「悪い石」悪石という説。そして、平家の落人が命からがら逃げ延びて、追っ手が来ないようにするためにわざと、気味が悪い名前をつけたのではなかという説もあります。
確かに、こう説明をされると、悪という字を島の名前にした理由としては納得できるような気がします。
悪石島のボゼ
トカラ列島のひとつ、悪石島ですが、ここには 73人の島民が居住しています。そして、この島の伝統行事がボゼです。
ボゼは、 ユネスコ無形文化遺産ら登録されている行事でもあります。
独特の風貌をしており、大きな耳と目と口。そして、長い鼻が特徴的な仮面を被ります。そして、体にビロウの葉を巻き、手足にシュロ皮やツグの葉をつけます。さらに、「ボゼマラ」「マラ棒」という棒も用いられます。
鹿児島県悪石島の「ボゼ」。旧暦のお盆の最終日に現れ、人々から悪霊を追い払う神とされ、耳のように見える縦長のまぶたと大きな口が特徴です。
ユネスコ無形文化遺産に登録されたことを記念した観光ツアーが企画され、大勢の人たちが独特の島の文化を楽しみました。https://t.co/Aw7jWoss90 pic.twitter.com/mdhDmV75MS— NHKニュース (@nhk_news) June 3, 2019
日本の神事としてはかなり変わった感じのお祭りですよね。
これは、悪石島に伝わる神事。そして、行われるのは夏で、ボゼは悪石島の盆踊りと呼ばれることもあります。ボゼの踊りは、共同墓地として使用されている寺や墓地でも踊られます。
「お墓で踊るの?」と驚かれる方もいらっしゃるかと思いますが、この神事は、災厄を祓い、そして、幸いを呼び込むための行事です。
夏の八朔に行われるもので、不思議なお祭り・・・ちなみにこの行事で使用されるお面は、3日間かけて作られるもので、島の青壮年が手作りしています。そして、お祭りのあとは、形が残らないようにすべて壊してしまい。そして、テラの裏山という場所に捨てられます。
どうして捨てられてしまうのかは解っていませんが、ボゼには、死霊臭の漂う盆を終えた時期に行われるもの・・・そして、お盆明けに人々を生の世界へと蘇らせる役目を持っているそう。
確かに、お盆は亡くなった人がこの世に帰ってくる日とされています。地域によっては、お盆には海に入ってたらダメ。川で遊んではいけないという言い伝えが残っているところもあります。
「お盆に海に入ったら、霊に道ずれにされてしまう・・・」
なんて言われることもあります。
海に囲まれた悪石島で、伝統としてお盆に踊られるボゼという神事。
災いを払い、幸福を引き寄せるだけでなく、死霊の世界から生の世界へと導く神事。個性的なボゼのお面の風貌などもとても印象的です。
いかにも南国という印象のお祭りですが、このあたりの地名(悪石・鬼界等)が変わっている理由と何が関係があるようにも思えてきます。
参考資料:トカラ列島の来訪神行事・悪石島のボゼ 鹿児島地域振興局総務企画部総務企画課