これはかつて、東京都西部のスーパー従業員3人が射殺された『八王子スーパー強盗殺人事件』に関する記事の【パート10】です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1~9】をお読みください。
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「八王子スーパー強盗殺人事件」:本記事筆者 テンペ・ワゾウスキによる考察
犯行時の様子
犯人(実行役)が被害者3人を事務所内に押し戻した後、犯人は拳銃で稲垣さんを脅し、矢吹さんと前田さんそれぞれの片手同士を拘束させた(拘束に用いたのは自身で持ち込んだ粘着テープ)。
次に、犯人は稲垣さんに金庫を開けるよう迫った(矢吹さんと前田さんは未成年であり、稲垣さんが金庫を取り扱っているのは明白)。ところが、責任感の強い稲垣さんはこれを拒否。このとき犯人は焦っており、稲垣さんの態度に逆上。そして稲垣さんのこめかみに発砲。続けて頭頂部にもう1発。その後、すぐさま2人のこめかみも撃ち抜いた。
収まらない怒りと金庫内現金への執着心から、最後に1発金庫へ発砲。事務所内を物色することなく、外で待つ仲間の車で逃走。結果的に犯人グループは金庫内の売上金の強奪に失敗した—。
犯行時間は5分ほどであったと推察。
勤務終了後、3人が事務所から出てくるのが遅かった
これは”盆踊りが思っていたより早く終わってしまった”ともいえる。これにより周辺に静寂が訪れ、銃声をかき消せなくなった。
稲垣さんが金庫を開けることを拒否した or 開け方を知らなかった(知らないふり)
稲垣さんは金庫の開け方を知っていた。しかし、犯人に現金を渡さないために知らないふりをした可能性も充分に考えられる。
なぜ盆踊り大会の夜に実行したのか
筆者はこれが非常に疑問である。なぜなら、店は盆踊り会場の斜向かいであり、多くの人が周辺にいる状況。閉店後の21時以降には人の数が減るにしろ、それでも平時に比べたら店舗周辺に人はいたのではないか。
事件当夜、確かに勤務していたのは女性従業員2人のみであり(結果的に非番の前田さんが滞在していたので実質3人)、その点においては強盗するにはいい機会であった。また、事件当日は日曜であることもさることながら、セールを行っていたという話もある。すると多くの売上金が期待できる日ではある。この点においてもいい機会ではある。
ところが店の近くで祭りとあれば、前田さんのような非番の従業員が祭りへ赴き、祭りが終わる頃(=閉店直後)にその足で店へ立ち寄る可能性を筆者は考えるのだが。下手すれば、オーナーなどが祭りの出店(でみせ)で買った焼きそばやたこ焼きなどを持って、差し入れとして事務所を訪ねるケースまで考える。当然、犯人グループは閉店後、事務所を見張っていたことは間違いないにしても、やはりこの日の夜に実行するのは平時よりもリスクが高いように思われる。犯人グループは”ハイリスク・ハイリターン”の賭けに出たのだろうか―。
筆者は本事件において、これが重要なポイントであると考える。なぜなら殺意の有無で、事件における推察が大きく変わるからである。
直感的には犯人に殺意はなかったと強く感じるのだが、犯行状況から自分自身を納得させるには、「犯人グループが本事件において従業員の殺害を前提にしていた」と結論付けなくてはならなかった。その理由は、やはり犯行を盆踊り大会の夜に実行したことである。また、盆踊りが終了し、辺りが静まり返ったのにもかかわらず、事務所に乗り込んだ実行犯が発砲したこと。これには感情的、衝動的なものを感じる。
犯人グループが(少なくとも実行役が)冷酷であったことは間違いない。
凄惨な事件の舞台となった「スーパーナンペイ 大和田町店」。
事件後、同店は「ひまわり」に改名したが、1998年に閉店。建物は解体され、現在は駐車場となっている。そこにはもう”ナンペイ”の面影はない。
「銃犯罪のターニングポイント」とされた本事件―。
2020年7月30日で事件が起きてから丸25年。今も尚、事件は未解決のまま。しかしながら、事件から長い年月が経過した近年においても事件に関する新たな情報が公開されている。また現在では、殺人や強盗殺人などは公訴時効が撤廃されている。つまり、”事件はまだ生きている”。
とはいえ、事件は発生から四半世紀を迎え、関係者の記憶は薄らぎ、亡くなってゆく人も。下手をすれば、犯人すらも罪を償うことなくこの世を去っている。
無抵抗の女性3人を殺害した犯人を許してはならない。捜査関係者は被害者と遺族の無念を晴らすため、現在も奔走している―。
(2020年7月現在)
【情報提供】
八王子警察署特別捜査本部
TEL:042-621-0110
テンペワゾウスキ