これはかつて、東京都西部のスーパー従業員3人が射殺された『八王子スーパー強盗殺人事件』に関する記事の【パート6】です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1~5】をお読みください。
殺害現場の様子
犯行現場の様子
稲垣さんの様子
- 事務所内の金庫の傍らで、壁にもたれる姿勢で絶命していた
- 拘束されていなかった
- こめかみの辺りに皮膚の焼けた跡が残されていた (銃口の熱によるもの)
矢吹さん 前田さんの様子
- 2人はそれぞれの片手同士を粘着テープで巻かれ、背中合わせの状態であった
- 2人は事務所の中央、金庫の前で倒れていた
- 2人とも頭部を1発ずつ撃たれており、粘着テープで口をふさがれた状態であった
犯人の動き
- 片手に拳銃、もう一方に粘着テープを持っていたと推察
- 矢吹さんと前田さんに使用した粘着テープには、犯人の指紋の一部と汗が付着していた
- 殺害された3人の周りには血溜まりができていたが、犯人はこれらを踏まずに逃走した
- 金庫に向かって発砲した (1発のみ)
- 事務所内を荒らさなかった
犯人像
警察による現場検証の結果、いくつかのことが明らかになった。それらは以下のとおり。
犯行は単独犯による
犯行現場となった事務所内には、10か所ほどに犯人の足跡が確認された。靴のサイズは26cm。
足跡からは微細な鉄粉と粘土、苔が採取された。これらの付着物から、犯人は溶接作業を伴う仕事に従事していた、もしくは鉄工所などに出入りしていた人物である可能性が示唆された。
靴底の模様から犯人の履いていた靴は特定され、これは事件の起きた多摩地区では「パルコ 吉祥寺店」や「パルコ 調布店」などで10,000~15,000円で販売されていたもの。
銃器の扱いに精通した人物
「スカイヤーズビンガム 38口径回転式拳銃」 (左・犯行に使用されたものと同モデル)
犯人が犯行に使用した拳銃は「スカイヤーズビンガム」と呼ばれるフィリピン製のもの。これはアメリカのコルト社製拳銃のコピーで粗悪なため、性能が低い銃である。そのため、対象から離れて発砲すると命中させるのが難しい。
この事件において、犯人は被害者3人に対して至近距離から発砲。これは犯人がスカイヤーズビンガムの特徴を把握していたためと思われる。さらに、犯人は3人の脳幹を正確に撃ち抜いていることから、銃で確実に死に至らしめる術を心得た人物であると推測されている。
こうした急所を撃ち抜いて殺害する犯行手口や躊躇なく発砲した様子から、犯人は銃器の扱いはもとより殺害に慣れた人物であると考えられている。また、銃を所持していることから裏社会に身を置く人物である可能性が高いとされている。
2009年(平成21年)1月、ある暴力団員が覚せい剤営利目的所持で逮捕された。その際、この男が所持していた拳銃が本事件の犯行現場に残された銃弾の旋条痕と酷似していることが判明した。このことから警察はこの男の交友関係などを洗い、入手ルートに関する捜査を進めている。
また、日本の警察はフィリピン警察の協力のもと、本事件で使用された拳銃の製造元(フィリピン)を訪問。これにより、本事件で使用された拳銃の旋条痕情報などの照合から、この拳銃の流通ルートを調べている。(2020年7月現在)
旋条痕(せんじょうこん)とは
銃には銃身(バレル)の内側に旋条(ライフリング)と呼ばれるらせん状の溝が施されている。これは銃弾に旋回運動を与え、弾軸の安定を図る目的による。
銃弾は発射されると、この溝の跡が銃弾自身に付く。これを「旋条痕」という。この旋条痕によって、その銃弾が発射された銃を特定することができる。
ライフリング (らせん状になっている)
画像引用:wikipedia
本事件には何人もの容疑者が—。続きは【パート7】にて。