これはかつて、東京都西部のスーパー従業員3人が射殺された『八王子スーパー強盗殺人事件』に関する記事の【パート3】です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1~2】をお読みください。
事件の解説
以下に時系列で示す各出来事において、時刻表示がオレンジ色になっている箇所は、事件のポイントとなるイベントが発生していることを表しています。
事件当日の経過 (時系列)
21時06分
稲垣さんが店を戸締り・消灯。これにて、この日の矢吹さんと稲垣さんの勤務は終了
⇒店舗脇の通路に不審な男がいるのが目撃される。目撃者は店舗駐車場に停めた車の中からこの男を目撃。この車のライトに照らされると、男は顔を伏せるようにしてその場を立ち去った。
21時07分
盆踊りが終了
⇒店舗周辺は静まり返ったが、盆踊り会場である公園ではまだ屋台が営業しており、公園やその周辺では祭りの参加者が未だ多くいた。
21時15分
稲垣さんによって事務所のセキュリティシステムが作動。事務所の出入り口が施錠される
⇒この直前に稲垣さんが事務所から知人男性に電話をかけ、迎えに来てくれるよう頼む。
21時16分
再び事務所のセキュリティシステムが作動。これに伴い事務所の出入り口が解錠される
⇒事務所に続く階段下で待ち構えていた犯人に拳銃で脅され、3人は事務所内に押し戻されたと推察。
21時17分頃
犯人が拳銃を発砲。3人を殺害
⇒スーパーからほど近い交差点付近にいた高校生2人が、このとき複数回鳴る銃声のような音を聞いている。また、スーパーの近所に住む複数の住民も同様の音を聞いている。
稲垣さんが知人男性に電話をかけてからこの銃声が鳴るまでは、約2分30秒であったといわれている(ウィキペディアより)。これは事務所電話の通話記録と銃声を聞いた人の証言から算出している。
これに基づけば、3人は事務所を出てからおよそ2分ほどの間に事務所内に押し戻された上、殺害されていることになる。本事件の犯行が非常にスピーディーであったことは間違いないのだが、これには少々無理があると思われる。その根拠は、やはり約2分という犯行時間である。この超短時間で矢吹さんと前田さんを粘着テープで拘束し、3人を殺害することは非常に難しい。
状況からみて犯人の手慣れた犯行の様子が窺えるが、まず間違いなく犯行時間にはもう少しの余裕があったと本記事では推察。
現代(2020年現在)と違い、事件当時に銃声が鳴った正確な時間を知る術はない。あくまでこれを聞いた人の証言に依存するので、犯人が発砲した時刻は不正確である(これは他のイベントも同様)。
※イベント:”21時20分”や”21時45分”などの各項目のこと
21時20分
迎えの連絡を受けた稲垣さんの知人男性がスーパーに到着
⇒約束通りに稲垣さんが外で待っていなかったので、男性は車を駐車場に停めて車内で稲垣さんが事務所から出てくるのを待った。事務所の明かりは点いており、事務所内に稲垣さんがいると思ったためである。
21時45分
男性が稲垣さんを待っておよそ25分経過。稲垣さんは事務所から一向に出てこず
⇒男性は”まだ着替えているか、先に小料理屋へ行ってしまった”と思い、稲垣さんの所在を確認するために小料理屋へ向かう。
21時50分
男性は小料理屋に着いたが、そこに稲垣さんはおらず
⇒これを男性は不審に思う。男性は事務所内で女性がまだ着替えている可能性を考え、女性である小料理屋の女将に事務所内を確認してもらうよう頼み、一緒に事務所へと向かう。
22時00分
女将が明かりの点いた事務所内を確認
⇒事務所の鍵は開いており、女将は事務所の出入り口で中へ声をかける。しかし中からは返事がなく、女将は”誰もいない”と思い、一旦は車へ戻った。男性と女将は再度2人で事務所内を確認しにいく。ここで拳銃で頭部を撃ち抜かれ、死亡している3人の姿を発見する。
女将は身長が約150cmと小柄であった。これに加え、事務所出入り口前のカウンターが高かったため、女将は事務所の奥までは確認できなかった。女将は事務所の出入り口から内部に向かって声をかけただけであったが、他所(よそ)の店の事務所にずかずかと入っていけないというのはごく一般的な感覚である。
22時08分
男性と女将は現場近くの北八王子駅前交番に駆け込む
⇒事件発覚
犯人の犯行動機は一体何なのか―。【パート4】に続く。