※これはかつてとあるホテルの貯水槽内で死体が発見された『エリサ・ラム事件』に関する記事の【後編】です。本記事をお読みになる前に、ぜひとも【前編】 / 【中編】をお読みください。
【考察】貯水槽内で死体が発見された『エリサ・ラム事件』の真相 -前編-
【考察】貯水槽内で死体が発見された『エリサ・ラム事件』の真相 -中編-
遺体の発見と警察の見解
エリサの失踪後、ホテルでは宿泊客からの苦情が相次いでいました。その内容は「水道の水の出が悪い」というものでしたが、やがて「蛇口から出る水の色が黒い / 異様な味がする」といったものに変わっていきます。これを受け、2月19日の朝、警察が屋上にある4つの貯水槽内を確認。そして、そのうちの1つからエリサの遺体が発見されました。このとき彼女は全裸の状態であり、直腸が脱出していたといわれています。また、衣服(エレベーター内の映像と同じもの)は貯水槽内で浮いており、彼女が身に着けていたと思われる腕時計や部屋の鍵も貯水槽の底で発見されています。
エリサの遺体は腐敗した上にガスで膨張、緑色に変色していたといわれています。遺体からは性的暴行といったものによる外傷はみられず、警察は他殺の線を否定。
遺体からは少量のアルコールと、エリサの残した所有物から見つかった持病の処方薬(抗うつ薬や精神安定剤)のほか、処方薬ではない鎮痛剤などの成分が検出されました。ちなみにこのとき、違法なドラッグの成分は検出されなかったといわれています。とはいえ、遺体の損傷が著しかったことから、このドラッグ成分の未検出に対して疑問視する者もいます。
遺体発見から2日後の2月21日、警察はエリサの死を「双極性障害の症状に起因する事故死」として発表。彼女は”持病によって不慮の死を遂げた”と結論付けました。
『エリサ・ラム事件』:本記事による考察
ここまでお伝えしたとおり、『エリサ・ラム事件』はエリサの自殺による事故として結論付けられました。
しかし本記事では、この『エリサ・ラム事件』におけるエリサの死は他殺によるものであると結論付けました。その理由として、この事件における不可解な点を以下に挙げます。
残されたいくつもの「不可解な点」
検死によりエリサの死因は特定され、自殺であるとして『エリサ・ラム事件』は解決されました。しかしながら、この事件にはいくつもの不可解な点が残されています。それらは以下のとおりです。
①エリサがどのようにして貯水槽に辿り着いたのか
貯水槽はホテルの屋上にあったが、屋上に通じる扉は施錠されていた。これを解除するためにはパスコードないし鍵が必要であり、これを有するのは当然のことながらホテル関係者のみである。扉は頑丈な上、もしもこれを無理に開けようとすれば警備システムの警報が鳴る。
②仮に屋上に到達できたとして、貯水槽内にどうやって自ら入ったのか
エリサがなんらかの方法で屋上に到達できたとして、彼女が一人で貯水槽内に入ったという点には疑問が残る。というのも、4つの貯水槽はいずれも高さ2.4メートルである上に、これがコンクリートブロックの上に乗っていた。これを加味すると、貯水槽の高さは2.5~2.6メートルに相当すると考えられる。
この貯水槽にははしごが備え付けられていなかったことに加え、エリサの遺体発見時に貯水槽周辺には脚立などの足台になるような物はなかった。さらに、貯水槽上部の蓋は非常に重く固いため、女性のエリサがこれを開けることができたとは到底思えない。
また、警察犬を使ったホテル内の捜索において、屋上もその対象であった。しかしながら、このとき警察犬は貯水槽に反応は示さなかった。
③エレベーター内防犯カメラの映像:エリサの奇妙な行動と扉の動作
この事件において、注目すべきはやはりエリサの行動である。他の宿泊客から苦情という形で報告された彼女の奇行。そしてなによりも気になるのは、エレベーター内防犯カメラに収められた彼女の奇妙な行動だ。これについては、さまざまな説を論じるものがいる。
例えば、
【何者かに追われていた】
たしかにしきりに廊下を見まわし、何かの存在を気にしているようにみえる。しかしその後、”危険”であるはずの廊下で奇妙なジェスチャーをはじめることを考えると、少なくとも”実体”から逃れているようにはみえない。
【エレベーターの故障に苛立ちをみせていた】
映像内で彼女はボタンを覗き込むような仕草や、ボタンを乱打するような行動をみせる。映像終盤の”扉がひとりでに開閉を繰り返す点”だけで考えれば、エレベーター故障の線は捨てきれない。しかしながら、その他の点がエレベーターの故障とどうしても結び付かない。
④検死報告書の信憑性
この事件において、検死報告書に対する疑念は拭いきれない。
エリサは遺体となって発見されたとき、全裸の状態であった。この状況からみて、彼女が強姦殺人の被害者である可能性は十分に考えられる。それを裏付けるように、この事件の検死報告書にはレイプキット(強姦の証拠保全ができる検査道具)使用の有無が記されていない。さらには、この報告書は最終的に「事故」と記されているが、それ以前に「未決」としていた形跡がある。つまり、一度は「未決」としていながらも後に「事故」として修正したということになる。この事実から、この事件における検死の精度には甚だ疑問が残る。
また、エリサの肛門部に損傷があったことも、この事件が強姦殺人事件である可能性を高めると同時に、検死報告書に対する疑念を強めている。
⑤エリサの死後、何者かによって彼女のブログが更新される
エリサの死後、なぜか彼女のブログが更新された。この点については、エリサが予めブログの「予約投稿機能」を使っていたとすれば何ら不思議ではない。しかしながら、わざわざ彼女がブログ更新において予約投稿する理由が見当たらない。つまり、エリサの死後のブログ更新が彼女自身によるものではない可能性が高いということ。これを決定づけるのは、彼女の遺体発見時、遺体周辺やホテル室内から彼女の携帯電話が見つからなかったという事実だ。これは何者かに盗まれた可能性が極めて高いといえる―。
ご覧のとおり、「事故死」として片付けられてしまった『エリサ・ラム事件』。あなたはどのようにお考えでしょうか?
本記事では、『エリサ・ラム事件』の真相を以下のように考えます。
『エリサの奇妙な行動に関しては、持病またはドラッグによるものであるが、これが彼女の死と直接的な因果関係はない(自殺ではない)。彼女は何者かによって殺害され、ホテル屋上の貯水槽内に遺棄された』
この事件の真相を知るのはエリサだけです。そしてもしも黒幕がいるとすれば、それを知るのはエリサとその人物(たち)ということになります。
『エリサ・ラム事件』は”解決済み”とされていますが、実質的には未解決事件なのです。
テンペワゾウスキ