映画「震える舌」では、破傷風菌に中枢神経を犯された少女が舌を噛み切ったり絶叫したりするシーンが印象的でした。

中枢神経を目に見えないものに犯されていく恐怖は筆舌に尽くしがたいものですが、感染症意外でも神経や身体の器官を犯す病はたくさんあります。例えば、メニエール病などは原因は不明といわれている病気のひとつでよく聞く病のひとつです。

メニエールになると、ある日突然、景色がグルグルと回るような目眩が起こります。薬である程度はコントロールできますが、いつめまいが来るかは本人にも周りにもわかりません。寝ていると天井がぐにゃりと動いて回る…まるでフェリーに乗っているような感じが長い場合は、何日も続きます。

メニエール病には痛みはないのですが、神経を犯す病の中にはとにかく痛みが強い病もあります。そのひとつが”線維筋痛症”という病気です。

線維筋痛症とは

線維筋痛症

『線維筋痛症とは、関節や筋肉、腱など全身にわたり慢性的な激しい痛みが生じる病気です。強い痛みがあるため、不眠やストレス、抑うつ状態を引き起こすこともあります。

現時点では確実に効果のある治療法がみつかっておらず、薬物療法や非薬物療法を含めた対症療法が主体になります(2018年3月時点)。検査所見で異常を認めることができないため、「痛み」という主観的な自覚症状が鍵となる病気であり、周囲の理解も必要とされます。』

引用 メディカルノート線維筋痛症   

線維筋痛症の患者数は、リウマチ情報センターによると人口の1.7%の約200万人です。リウマチは、人口の0.7%ですから、リウマチより線維筋痛症の方が患者数が多いんです。なのにあまり知られていない病気でもあります。


線維筋痛症は、身体の至るとこに痛みが走る病気で検査をしても異常が見られないのが特徴です。痛みが強く日常生活が送れなくなる患者さんも多いのですが、原因は不明…。原因が解らないので、治療法もなく痛みに対する対処療法がメインです。

リウマチ情報センターのホームページでは、線維筋痛症は痛みを伝える脳の神経伝達機能に何らかの不具合が生じたもので、痛みも刺激も現実にはないのにそれを感じてしまうとされいます。痛みのアクセルが踏まれた状態でそのブレーキが気かなくなる…だけど、異常はどこにもない…。

脳というコンピューターのバグで痛みのコントロールができなくなった状態だけど、どこに原因があるのかは解らないのです。

 

参考資料:リウマチ情報センター 

線維筋痛症はうつなどの病気の引き金になることも…


線維筋痛症を発症した方は、自分の痛みと症状をこのように表現されています。

『三叉神経がまずおかしい。
コメカミに矢が刺さる。
頭頂部に剣山、下顎全体に痙攣や痺れ
眼球、視神経にアイスピック滅多刺し
後頭部ハンマーで連打され続ける
僧帽筋は常にパンパン、石像背負わされてる
二の腕から指先にかけては百足が何百匹も肉の中を這ってる
背中から腰にかけては言い表せない鈍痛。強いて言えば車に轢かれたような感じが延々と続く。
脚に関しても腕と同じで百足が数百匹這いずり回ってる。
夜は痛みで眠れず、自重の重みが痛みとなり寝返りをうつだけで目が覚めるほど痛む。
昼は日の光が目に入るだけでアイスピックの嵐。オフィス内においては蛍光灯の光が眼球アイスピック連打。
疲れ切っても、眠ることすら許されない痛みが24時間365日。
最終的には一挙手一投足が全て痛みに変わり、ロキソニンやボルタレン、リリカなどでは効かない。
温感療法を用いてようやく少し緩和する程度。
しかし冷めるとまた痛みの連続。そして精神がおかしくなってくる。もう嫌だ殺してくれ、となる。拷問を受け続けていると捉えてくれれば良い。動く度に拷問。寝る間も許されない。食事も喉を通らない。

自殺者多数。そりゃこんな拷問毎日なら当然そう思う。

病院にいけば、線維筋痛症の病名すら知らない医師が多数。
痛み止め、向精神薬など、大量薬漬け、意識を飛ばして、対処療法のみ。根幹治療は無し。

そして身体は衰弱していき、ステージ3まではなんとか薬で抑えながら日常生活は送れる人が多いが、ステージ4は常に出産の痛みの10倍数値、ステージ5は末期癌患者よりも強い痛みを伴う。

尚、モルヒネなどは利用できない。

アメリカ医術の方が認知度、対処共に優れていることが多く、金銭面で余裕があればアメリカに渡航する人も多い。

近々ではタイでマリファナ治療が可能になった為、世界中から線維筋痛症患者が殺到している。』

 

 

どこにも異常はないのに激しい痛みだけがある…線維筋痛症は治療法がないこともあって対処療法がメインです。

痛みが強く一日中続いて治療法もない…そんな状況に追い込まれた患者さんが心の病のうつ病を発症するケースも珍しくありません。このような病状に毎日耐える日々が続けば、うつ病になってしまったとしても不思議ではありません。

原因不明の痛みがあるのに治せない…となれば精神を病んでも無理のないことです。漢方薬を使用して痛みを和らげることも出来るそうですが、根本的な解決は今はできません。

参考資料 
vol.127 早期診断・治療が可能になってきた「線維筋痛症」
線維筋痛症診療ガイドライン 2017(第2部~第3部)

中枢神経や経脳にバグが生じる怖さ

画像 pixaboy

人間の脳は痛みや記憶など色々なものをコントロールする器官です。

原因不明といわれる病の中には、脳の細胞が壊されるものや脳のバグで痛みを発症するものなどがあります。映画『震える舌』のように、中枢神経に侵す破傷風菌に感染すると人は自分の身体や行動をコントロールできなくなるわけですが、線維筋痛症のようにどこにも異常がないのに全身に強い痛みをおこす病気もあります。

破傷風菌は、感知も望めますが線維筋痛症は今のところ治療法がなく、発症すると薬を飲んで痛みに耐えるよりほかに方法はありません。

そして、小脳や脊髄の神経細胞に異常をきたす病としては小説『一リットルの涙』で有名になった精髄小脳変性症などがあげられます。精髄小脳変性症もそして、線維筋痛症も意識ははっきりしているため発症した場合の苦しみは想像以上に辛いものとなります。

原因不明と言われている病ですから、私たちの誰もがある日突然、病に侵される可能性もあるのです。

線維筋痛症は指定難病ではない

原因不明の痛みが身体中を駆け巡る線維筋痛症ですが、指定難病になっていません。

指定難病とされると医療費助成の対象になり、平成30年には56疾患から331疾患に拡大されていますが線維筋痛症はその指定から除外されています。

指定難病ではい場合、公的な補助を受けにくくなり患者さんはよりつらい立場に立たされることになります。原因不明の病がなぜ難病指定されないのか…それには「0.1%」という指定難病の要件があるからなんです。

難病の患者に対する医療等に関する法律で「 患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと; 客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)」とされているのです。線維筋痛症は患者数が多いから指定難病になっていないんです。

 

患者数が多いから指定難病にならない…障害年金を受給できるケースもありますが、十分な公的なケアを受けられているとは言い難いのが現状です。患者数が多い病気を指定難病にすれば、それだけ公的な費用を投じることになる…子供や高齢者への手厚社会福祉制度がある一方で、こうして指定難病にもされずに苦しむ多くの人がいることにも私たちは目を向ける必要があるのではないでしょうか。

 

参考資料 厚生労働省 指定難病

       厚生労働省 難病対策

       厚生労働省 指定難病の要件について

まとめ

中枢神経や脳に異常をきたす病…治療法がないものも多く、もし発症すれば対処療法に頼るほかないのが現状です。

指定難病にもなっていない原因不明の痛みを伴う難病の「線維筋痛症」は疝痛という目に見えない痛みが発症する病のため、理解されにくいという側面もあります。

私たちの身体は、中枢神経や脳、そして、遺伝子といった自分でコントロールできないものに支配されているのかもしれません。