岩手県の五葉山ピラミッドからヒヒイロカネが発掘?【日本のピラミッド⑤】

ピラミッドといえばエジプトやメソ・アメリカが有名ですが……日本にもピラミッドがあったことは知っていますか?

1980年代後半にブームになり、全国から10ほどのピラミッド候補が発見されました。

今回は日本のピラミッド特集第5弾、岩手県の五葉山ピラミッドを紹介します。

謎の古文書『竹内文書』によれば、五葉山ピラミッドは超古代文明ムー大陸の子孫によって作られ、幻の金属「ヒヒイロカネ」が生産されていたといい……実際に、酒井勝軍氏によってヒヒイロカネらしき金属が発見されました。

本当だったらすごいですよね。今回は五葉山ピラミッドとヒヒイロカネの真相に迫ります!

五葉山ピラミッドが見つかった経緯【竹内文書とは?】

ピラミッドというとエジプトのものを想像する人が多いように、完全人工の三角錐の構造物で、王の墓だと思う人が多いかもしれません。

しかし日本のピラミッドの提唱者である酒井勝軍(さかいかつとき)氏が定義するピラミッドは、エジプトやメソ・アメリカのピラミッドとはまったく異なります。

  • 完全人工ではなく、自然の山を利用して作られた半自然・半人工の建造物
  • 日本のピラミッドは墓ではなく神殿
  • 山は左右対称の二等辺三角形の稜線を描き、山頂部には石組みの遺構(磐座)がある(この石組みの配置によって四つの様式に分けられる)

岩手県の五葉山の山頂は綺麗な台形をしており、さらに「日の出岩」と呼ばれる人工的な巨石群が発掘され、日本のピラミッドとして認定されました。

酒井勝軍氏は、『竹内文書』という古文書をもとに五葉山ピラミッドを発見しました。

『竹内文書』とは竹内巨麿氏の家に代々伝わってきたという膨大な古文書で、竹内巨麿氏が昭和前期に開いた新興宗教「皇祖皇太神宮天津教」の聖典です。

聖典というと戒律を書いたようなものと思うかもしれませんが、神話という方が近く、日本神話には載っていない日本の本当の歴史を記した書物だとされています。

そんな『竹内文書』の内容を要約すると、日本人は伝説のムー大陸(ムー文明)の子孫で、ムー大陸沈没後も、日本は世界の中心だったといいます。そのため釈迦(ブッダ)やモーセ、キリストといった大宗教の教祖は皆日本に来て、天皇に仕え、英知を学んだ……と、あまりにも荒唐無稽な話のオンパレード。

騒動後には科学的な調査が行われ、近代の紙だとわかり、偽書と確定しました。おそらくは自分が興した宗教の権威付けのために架空の神話を創造したのでしょう。

五葉山ピラミッドとヒヒイロカネとムー大陸

そもそも酒井勝軍氏は幻の金属ヒヒイロカネを発掘するために、岩手県の五葉山ピラミッドを訪れました。

というのも、『竹内文書』によればムー大陸が沈んだ際に、ムー文明人の一部は日本にのがれ、岩手の五葉山のあたりに居を構えたといいます。

そして五葉山をピラミッドに作り替え、岩手県釜石市で産出される特有の磁鉄鉱「餅鉄」「隕鉄」を原料に、ヒヒイロカネを生産したというのです。

ヒヒイロカネについて『竹内文書』では、「謎の金属で、火炎のゆらめきにも似て、朱くかがやき、けっして錆びることのない金属である。比重は金よりも軽く、その純粋な物は、鉄よりも柔らかだが、合金すると、プラチナよりも硬くなる、まぼろしの金属、それが、ヒヒイロカネである」と説明されています。

酒井勝軍氏は実際にヒヒイロカネを発見したというのですが、陸軍に破壊されることを恐れて(実際に過去の遺物のいくつかは不敬罪として破壊された)実物はどこかに隠してしまったので、本物のヒヒイロカネかどうかは謎のままです……

五葉山ピラミッドとムー大陸の謎

普通に考えればムー大陸なんてあるわけがありませんし、ヒヒイロカネも存在しません。

そもそも『竹内文書』は偽書なのですから、当然ピラミッドもムー大陸もウソ……と考えてしまうのですが、ここに1つの謎があります。

酒井勝軍氏の著作『神秘之日本』に発掘の記録が残されているのですが、五葉山がピラミッドだとか、ヒヒイロカネが作られていたなどの話は、当然地元の人は誰も知りませんでした

しかし調査を続けると、超古代文明を示唆するような伝説が、民謡に形を変えて残されていることがわかったのです。

そして実際に、(ヒヒイロカネはともかく)五葉山ピラミッドの山頂からは、歴史家も発見していない巨石遺構が発掘されました

ムー大陸やヒヒイロカネ伝説が事実かどうかはさておいて、酒井勝軍氏は偽書である『竹内文書』から、当時どこにも書かれていない伝承や遺跡を発見したのです。

『竹内文書』が100%の創作ではなく、何らかの歴史的裏付け(資料)から作られたものだとわかるエピソードです。

このミステリーの真相は、『竹内文書』を編さんするにあたって、竹内家は本当の隠された歴史資料を持っていて、それをもとに竹内巨麿が自身の新興宗教の権威付けのために盛りに盛った創作を加えた……と筆者は考えています。

似たような例として、オカルト好きには有名な日本のキリストの墓や、青森県とユダヤとのつながりも、『竹内文書』が発端となって発見されています

日本のキリストの墓についてはコチラでくわしく紹介していますのでぜひご覧ください。

青森県には日本最古のピラミッドである十和利山ピラミッドと大石神ピラミッドやユダヤの風習が残る戸来村(新郷村)のキリストの墓があります。秋田県には、人工のピラミッドである証拠が科学的に発見された黒又山ピラミッドがあります。

東北に、歴史に残されていない古代文明が存在していたのは確かなのかもしれません。

次回は日本のピラミッド特集のまとめ回を掲載します!

日本のピラミッドや『竹内文書』は、推理小説家やSF小説家などに大きな影響を与え、多くの壮大かつ面白い傑作を生みだしました。

筆者のオススメは、あの『戦国自衛隊』の原作者である半村良氏が書いた『石の血脈』『黄金伝説』と、大河ドラマ『炎立つ』の原作者である高橋克彦氏が書いた『竜の柩』です。どちらも大傑作ですのでぜひご覧ください。

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夏藤涼太

神話に魔法、UMAにUFO、超能力に超古代史、最新科学に都市伝説まで、オカルトならなんでもござれのWebライター。「日々にロマンを。毎日を豊かに。日常を非日常に」をテーマに書いています。学生時代の専攻は民俗学。