エデンの園といえば、『旧約聖書』に登場する楽園です。アダムとイブは、神ヤハウェの言葉を破って禁断の知恵の実(リンゴ)を食べて楽園を追放されました……。
そんなエデンの園は実在するのか、モデルはあるのかといった議論は何千年にもわたって行われてきましたが、いまだにはっきりした答えは出ていません。
しかし、実はエデンの園のモデルが日本だという説があるのです。
中世ヨーロッパでは日本がエデンの園だという噂が流れており、実際にそのことを記した伝説も日本の古文書『竹内文書』に残されています。
そして青森県十和田市にある高原「迷ヶ平(まよがへい)」こそ、エデンの園だというのです!
知恵の実がリンゴだったのは、青森の特産がリンゴだったからとか……こんなウソのようなホントの話の真相を追求します。
エデンの園日本説(青森県迷ヶ平説)のお話をするには、まずは『竹内文書』と日本のキリストの墓について説明しなければなりません。
『竹内文書』とは竹内巨麿(たけのうちきよまろ)の家に代々伝わってきたという膨大な古文書で、竹内巨麿が昭和前期に開いた新興宗教「皇祖皇太神宮天津教」の聖典です。
聖典というと戒律を書いたようなものと思うかもしれませんが、神話という方が近く、日本神話には載っていない日本の本当の歴史を記した書物だとされています。
そんな『竹内文書』の内容を要約すると、日本人は伝説のムー大陸(ムー文明)の子孫で、ムー大陸沈没後も、日本は世界の中心だったといいます。そのため釈迦(ブッダ)やモーセ、キリストといった大宗教の教祖は皆日本に来て、天皇に仕え、英知を学んだ……と、あまりにも荒唐無稽な話のオンパレード。
騒動後には科学的な調査が行われて近代の紙だとわかり、偽書と確定しました。おそらくは自分が興した宗教の権威付けのために架空の神話を創造したのでしょう。
で、その竹内文書にキリストが日本の青森県戸来村(へらい-)にやって来たと書いてあるのです。
竹内文書によれば、ゴルゴダの丘で処刑されたイエス・キリストは影武者(弟のイスキリ)で、本物のキリストはかつて神学を学んだ日本の青森県に逃げのび、戸来村でその一生を終えたという。そのためキリストの墓が青森県戸来村にある、といいます。
『竹内文書』が偽書なのですから、普通に考えれば日本の青森県キリストの墓も偽物です。
しかし竹内巨麿は『竹内文書』をもとに、青森県戸来村(現新郷村)からキリストの墓である「十来塚」を発見。さらに戸来村からは、地元の人も歴史学者も知らない、キリスト・ユダヤと関係のある風習や繋がりがいくつも発見されたのです!
日本のキリストの墓についてはコチラでくわしく紹介していますので、ぜひご覧ください。
竹内巨麿が、今まで歴史学者も地元の人も知らなかった青森県戸来村のユダヤ・キリストにまつわる伝説を発見したのはまぎれもない事実です。
しかしそうなると、なぜ偽書である『竹内文書』に戸来村のキリストの墓のことが書いてあったのかが不思議ですよね。
この謎の真相は、筆者は次のように考えています。
竹内家の祖先は東北の歴史書に載っていない伝説や言い伝えを収集していた蒐集家で、実際に青森県へのキリスト渡来伝説が存在していました。しかし時代が下るにつれてその伝説は、地元ですら失われてしまったのです。
竹内巨麿は青森県のキリスト渡来伝説を利用して、キリストが日本の天皇に仕えた→日本は古代世界の中心だった→その神秘を受け継ぐ皇祖皇太神宮天津教こそ世界最高の宗教というロジックを組み立てるために『竹内文書』を作ったのではないでしょうか。
つまり「『竹内文書』は100%創作ではない。本物の伝承も含まれている」というのが筆者の考えです。
話をエデンの園日本説に戻します。
『竹内文書』とキリストの墓に感銘を受けた山根キクという研究者は、独自の調査を重ね、『光は東方より』というキリスト渡来説の決定版ともいえる本を出版。キリスト渡来説や日本のキリストの墓が日本で全国的に話題&ブームになりました。
そして山根女子は、戸来村のすぐ近くにある高原、「迷ヶ平」こそ、『旧約聖書』に書かれた「エデンの園」であると断言したのです。
迷ヶ平は『竹内文書』にも書かれているのですが、はっきりエデンの園とは書かれていません。しかし……
「迷ヶ平に十和利山という三角形の締麗な山があって、この麓にかつて華麗な都が栄えていた。年代は不明だがアメノニニギノミコト天皇が遷都した」
遷都したということは迷ヶ平が古代日本の中枢だったということです。『旧約聖書』のパレスチナ以前の世界の中枢はエデンの園。
さらに当時迷ヶ平は、地元で「天国」と呼ばれていたのです。天国といえば、まさにエデンの園。
山根氏によれば、エデンの園の禁断の木の実がリンゴなのは、青森の名産であるリンゴだから、とちょっと冗談みたいな話なですが……実は「エデン=天国=日本説」もなかなかバカにできません。
ヨーロッパでは、エデンの園が日本にあるという伝説が広まっていたのです。
イギリスのヘレフォード大聖堂に、中世の世界地図(ヘレフォード図)が保管されているのですが、奇妙なことに、方位が九十度傾いて東が真上に書かれた地図です。
となれば極東の日本は世界の真上に位置することになるのですが……実は日本が位置する場所を「ヘブン」及び「エデンの園」と表記しているのです。
ヘレフォード図はマルコポーロの『東方見聞録』と同時期の13世紀ごろの地図とされています。
マルコポーロが日本のことを「黄金の国ジパング」と紹介したことは有名ですが、当時のヨーロッパはキリスト教の時代であり、作成者もキリスト教の聖職者ですから、それだけの理由で極東のアジアにヘブンなどと書くわけがありません。
そもそもマルコポーロは、東洋にあると噂されていた伝説のキリスト教国の国王「プレスター・ジョン」を探すために旅をしていました。
日本とキリスト・ユダヤの関係は、ヨーロッパでも何かしらの噂がされていたのかもしれません。
今回は日本とヨーロッパに残されていた、エデンの園日本説を紹介しました。
『竹内文書』はたしかに偽書ですが、日本とキリスト・ユダヤに何かしらの関係があったのは事実なのかもしれません。
実際に、日本とユダヤ人が共通のルーツをもつという「日ユ同祖論」という説は明治時代から語られています。
日ユ同祖論についてはコチラでくわしく紹介しています。ぜひご覧ください。