大きな犯罪が発生するとときに、その犯罪を真似する人が現れて新たな犯罪が発生してしまうことがあります。
模倣犯と呼ばれる現象ですが、どうして犯罪を模倣してしまうのでしょうか。
模倣犯とは?リスクしかない犯罪を犯してしまう?
冷静に考えれば、たとえどんなに理不尽に仕打ちを受けていても、大嫌いな人がいて「できれば殺してやりたい」と思ったところで、犯罪に手を染めることは「リスク」だという事が解るはずです。
犯罪を犯せば刑事罰を受けることになりますし、仮に逮捕されなかったとしても「いつ逮捕されるのだろうか」というストレスを長期間受けることになります。そして、自分がしてしまったことに対して後悔し心理的なダメージを受けるということもあるでしょう。
今の日本のような法治国家においては特に、犯罪を犯すことはリスクでしかありません。いいことなんてひとつもありゃしないのです。
逮捕されれば社会的な信用は失墜しますし、場合によって死刑になるという可能性もあります。どんな理由があっても犯罪はリスク・・・なのに、どうして模倣犯が現れるのでしょうか。
模倣犯が現れるということは、すでにひとつの犯罪が起っていて、被害者が出ているということ。そして、多くの場合、その犯人は捕まっているかそうではないにしてもすでに警察から追われる身となっています。
冷静でいればその状態を見て「自分もやってやろう」とは思わないはず・・・ですが、最近でも模倣犯という現象は起こっていて、例えば先日のジョーカー事件。
10月31日に京王線の車内で、ジョーカーに分した男が刃物で周囲の乗客を切りつけ、ライターオイルで放火したという事件がありましたが、この事件を模倣した犯罪が九州新幹線車内で発生しました。
また、中には実際に起こった犯罪ではなく、ドラマや映画のようなフィクションの世界の犯罪を見て、それを実際に実行しようとしてしまうというタイプの模倣犯もあるでしょう。
模倣犯の心理とは?
犯罪を真似する模倣犯ですが、これ「普段は理性というブレーキで制御している闇」の部分が解放されてしまうという考え方があります。
例えば「あいつ大嫌い!緩されるなら殺してやりたい」と思っても、そう簡単に行動に移す人はまずいませんし、憎しみを持っていたとしても行動に移すことはまずありません。せいぜい、陰口をたたいたり、文句を言ったりする程度でしょう。
それは、どうしてなのか・・・それは、正常に理性が働いているからです。ですが、そんな負の感情が強くなっていて「いらいらしている」というタイミングでたまたまテレビをつけたとしましょう。ニュースで「怨恨で知人を何人も殺した」という事件を取り上げていて、犯人に関する様々な情報が漏れ聞こえてくる。実際に事件を目にしたわけではなくても、情報がどんどん入ってきます。
そのニュースを見たときに「自分もできるんじゃないか」「成功させられる」と思ってしまう・・・。自分が普段、理性で抑えている行動を他の誰かが取ったという情報に触れることで「犯罪はリスクだ」「やってはいけない」というブレーキが緩んでしまうのが模倣犯の心理の一端と言えそうです。
もちろん、模倣犯だろうとなんだろうと、犯罪に手を染めてはいけませんし、理性を働かせて自制するのが正しい行動です。
模倣犯と愉快犯は違う
模倣犯と並んでよく聞く言葉が愉快犯ですが、意味が全く違います。
模倣犯は、重大犯罪などを真似して実行すること。愉快犯は、人が混乱したり怖がったりするのを見て楽しむこと。
前者は、人の真似ですが、後者は人を慌てさせて楽しんでいるというもの・・・どちらも褒められたものではありませんが、背後にある心理は全く違います。
他人を恐怖に落とし入れることで自分の存在を示そうとする心理が背後に見え隠れしているのが愉快犯です。愉快犯という言葉は、やってしまったことが法に触れなくても「愉快犯」と呼ばれることもあります。
人が混乱しているのが楽しい・・・ずいぶんと歪んでいるように思えてしまいます。
参考資料:模倣犯の心理 心のブレーキが外れるとき