2016年に廃炉が決定した”高速増殖原型炉もんじゅ”は、夢の原子炉と呼ばれていた施設です。なんだか早口言葉みたいですが、早口言葉ではありません(笑)
もんじゅは、発電に使用された使用済燃料からプルトニウムを取り出してもう一度利用するための施設で、高速炉を使って発電するというものでした。使用済燃料をもう一度有効利用するための施設だったから夢の原子炉とまでいわれたのです。
そんな高速増殖原型炉もんじゅですが、廃炉が決定・・・。22年間の運用で稼働したのはわずか250日でした。
高速増殖原型炉もんじゅはいつ作られた?
高速増殖原型炉もんじゅは福井県敦賀市にある敦賀半島の北端にありました。 1991年5月18日に運用開始され、建設費は5933億6565万円!なかなかお高い原子炉でした。
発電に使用されている原子炉のような商業目的のものではなく、あくまでも研究用のため施設の管理は文部科学省となっています。
もんじゅは、簡単に言えばちょっと特別なタイプの原子炉でプルトニウムとウランを混ぜて作られるMOX燃料使用して、消費量よりたくさんの燃料をつくれるという高速増殖炉を実用化するために必要な原型炉です。
消費した量より多くの燃料を作れたら・・・これってスゴイですよね。だからもんじゅは夢の原子炉と呼ばれたのです。
当時、日本政府はこの核燃料サイクルを国家プロジェクトと位置づけており、石油などの資源が乏しい日本のエネルギー源として期待されていました。
この技術は日本を持ってしても難しかった
消費した量よりたくさんの燃料を作れる!
そんなことができたらエネルギー問題は一気に解決!夢の原子炉もんじゅですが、廃炉になった理由のひとつには技術的な面での難しさがありました。
燃料を増やすためにには、高速で中性子がぶつかり合って核分裂を起こす必要があります。中性子が核分裂を起こすときのエネルギーはとんでもなく強く、コントロールがとても難しいのです。
暴走して制御できなくなったら大変の事になってしまいます。
そして、冷却材の取り扱いもとても難しかったのです。実際にもんじゅではナトリウム漏れ事故が起こっています。
高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏れ事故
通常は冷却には水が使われています。ですが、高速増殖炉では水ではなく液体化された金属ナトリウムを使用します。水で冷却すると中性子がぶつかるスピードが低下してしまうので、水は使えない。つまり冷却材の取り扱いだけでも通常の軽水炉より難易度が高いんです。
そして、この金属ナトリウムは水と反応すると爆発を起こし酸素と反応したら燃えるという危険なもの・・・。実際にもんじゅでも火災事故が起こっています。
1995年の事です。もんじゅの二次冷却系で温度計が壊れてしまい金属ナトリウムが漏れてしまいます。そして、火災が起こってしまいます。放射能漏れはなかったものの、この火災事故は国際原子力事象評価尺度レベル1の判定を受けました。
事故後の対応や、事故時に操作の妨げになるという理由で警報器の音を切っていたため火災の発見が遅れたことなどが問題となりました。
その後も事故や問題が相次いだ
ナトリウム漏れ事故から14年5か月後の2010年5月6日に運転を再開しますが、その後も原子炉内中継装置落下事故や点検漏れ、監視カメラの故障などの不祥事や事故がありました。
また、プルトニウムを含んでいるMOX燃料の輸送に関する問題(テロへの警戒)、そして、安全性への問題が議論された末で2016年の廃炉の決定に至ったのです。
廃炉には30年かかる
廃炉といっても建物を壊しておしまいというわけにはいきません。もんじゅを廃炉にするためにかかる時間は30年!
次世代型の原子炉でもあったもんじゅの廃炉もまた、世界でも実例が少なく安全に進めるためには細心の注意と技術力が必要です。
研究用の原子炉というもんじゅの性質から考えたとき、廃炉の作業もまた日本の技術進歩に貢献する経験になるのかもしれません。
まとめ
高速増殖炉もんじゅは、消費する燃料よりたくさんの燃料を生み出す技術の開発のためにかかせないものでした。夢の原子炉と呼ばれたもんじゅですが、核分裂のコントロール、そして、冷却材の取り扱いの難しさといった問題が発生し2016年に廃炉が決まりました。
世界でも珍しい施設ですから、この廃炉作業にもあまり実例がありません。
商業用ではなくあくまでも研究用の原子炉ですから、この廃炉の経験も日本の技術の糧になるのかもしれません。
参考資料:「もんじゅ」のこれまでの経緯 – 日本原子力研究開発機構
行き詰まった核燃料サイクル。「もんじゅ廃炉」で、日本のエネルギー政策はこれからどうなる?