日本が「敗戦国」となった先の大戦…今、学校では第二次世界大戦と教えていますし、ほとんどの人が第二次世界大戦というのではないでしょうか。もちろん、第二次世界大戦という表現は今は間違いではありません。ですが、第二次世界大戦には別の呼び名…正式な呼び名があるんです。それは「大東亜戦争」あまり使われない言葉ですが、たくさんの悲劇を産んだあの大戦には、決して学校では教えられない事実が隠されているのです。

大東亜戦争についての真実に迫る連載の最初の話は「ソ連伝説のスパイ リヒャルト・ゾルゲ」についてです。

 

リヒャルトゾルゲとは?

リヒャルトゾルゲは旧ソ連のスパイで、ベルリン大学を卒業後、第一次世界大戦の際に陸軍として西部戦線で戦場に立った人物です。

 

戦場で怪我をしたゾルゲはロシア革命後に 軍事諜報部門の労農赤軍参謀本部第4局に配属されて後に、日本とも深く関りを持つことになります。ゾルゲは、上海でのスパイ活動の後、日本とドイツの動向を探るべく横浜に来日します。そして、とうとう当時のドイツの駐日大使オイゲン・オットに取り入ることに成功し、大使の顧問にまで接近します。この経歴から、リヒャルトゾルゲがスパイとしてとても優秀な人物であったことが伺えます。

 

そのあとも、要人の信頼を次々に勝ち取っていきその情報を短波受信機を改造した無線機で母国に送っていたのです。そして、ゾルゲ事件を引き起こすのです。

 

ゾルゲ事件はどんな事件だったのか

ゾルゲ事件とは、日本国内でリヒャルトゾルゲを中心としたスパイが諜報活動や謀略を働いていたという事件です。

1941年9月からの約半年の間にゾルゲを始めとするスパイが逮捕され、ゾルゲはその後の裁判を経て処刑されます。

ゾルゲは日本の共産党系の関係者や米国、そして、ドイツなど様々なルートから情報を仕入れて、開戦前の日本を揺るがしました。ゾルゲが逮捕された後も、ドイツはゾルゲの逮捕を「不当」と主張していました。心からゾルゲを信頼していたのでしょう。「友邦国民に対する不当逮捕」とまで言わせるほど、ゾルゲはドイツ大使館関係者の信頼を勝ち取っていたのです。

ゾルゲは、自分で改造した無線機で情報を送っていたことがバレて逮捕されます。そしてゾルゲと一緒に20人以上の人物が逮捕されるという大事件でした。最初、ゾルゲは容疑を認めなかったそうですが、次々と証拠を突き付けられて、最後には自供に至ったそうです。

参考資料 エルヴィン・ヴィッケルト『戦時下のドイツ大使館』P.33 中央公論社

大胆不敵なゾルゲの行動と卓越した諜報能力

スパイとか諜報員と聞くと、あまり外に出歩かずに、暗い家の中で暗号の解読をしている…みたいなイメージでしたが、ゾルゲは違っていました。ゾルゲは、オートバイで移動し、警察署のすぐ近くに住んで外国人はすべて特高警察の監視下に置かれていることをすべて解った上で行動していたのです。

 

そして、あらゆる人物の信頼を勝ち取り、とうとう、近衛文麿首相のブレーンから日本の今後の方針を決定する会議の内容まで知るに至ります。この時、ゾルゲに協力していた人物の中には、大阪朝日新聞の元社員の尾崎秀実もいました(後に逮捕され死刑となっています)

 

この時、ゾルゲが母国に送っていた情報は「日本が北上しないこと」でした。なぜこの情報が重要だったかというと、満洲から日本軍が北上しさらに同盟国のドイツが反対側からソ連に進行するのか、それともアメリカと衝突するのかは微妙だったんです。もし、日本とドイツに挟み撃ちにされればソ連は国家の危機を迎えることになります。そのような動向が日本とドイツにあるのかはソ連にとって極めて重要なことだったのです。

 

ゾルゲは卓越した諜報能力を駆使して様々な情報を取得し、祖国に送り続けます。そして、ゾルゲが逮捕されたのは、真珠湾攻撃のわずか二ヶ月前のことでした。つまり、大東亜戦争開戦ギリギリまでゾルゲは日本で諜報員として活動していたということになります。

ちなみにゾルゲには日本人の彼女がいました。結婚はしていなかったようですが、ゾルゲと深い関係にあった石井花子さんは2000年に88歳で他界されています。彼女との関係ももしかしたら、計算ずくだったのかもしれませんね。

参考資料 愛情はふる星のごとく 上巻 尾崎秀実 著 三笠書房 1951 (三笠文庫)

     モスクワで発掘された「特高功労上申書 - 渡部富哉「ゾルゲ事件の真相究明から見えてくるもの」(ちきゅう座スタディルーム)

ゾルゲが大東亜戦争に与えた影響とは

ゾルゲは祖国に「日本はソ連には進行しない」という情報を送っていたわけです。そしてその情報をもとにソ連は日ソ中立条約を破棄し、日本との駆け引きを進めソ連対日参戦を仕掛けてくることとなります。

 

そして、この戦争が現在も解決しない北方領土や当時の満洲、北朝鮮で戦闘を繰り広げることとなります。南樺太や千島列島を巡る駆け引きも全てが繋がってくるのです。

 

日本とアメリカに戦争をして日本が負けた訳ですが、大東亜戦争でまるで漁夫の利を得たのはソビエト連邦だったという考え方もできるというわけです。日本があの大戦で負けた理由やそもそも大東亜戦争とはなんだったのか…については次回の記事でご紹介していきますね。

 

 

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参考資料

外務省編『ゾルゲの獄中手記』山手書房新社

『ゾルゲ事件獄中手記』(岩波現代文庫)岩波書店

みすず書房編集部編『ゾルゲの見た日本』みすず書房