台風や大雨などの災害はこの数年で増えているように感じます。
地球温暖化の影響や気候変動の影響があるといわれていますが、それでも安全な場所がないわけではありません。なのに、ときに「自分で危険な場所に行ってしまう人」もいます。
あなたも「大雨で増水した川を見て行ってみたい」とか「台風であれる海を見に行ってみたい」という衝動に駆られたことがありませんか?
危険だと解っているのに、どうして見に行ってしまうのか・・・。そこに隠された人の心理についてはお話です。
台風や大雨などはある程度「来ることが解る」自然現象といえます。
突然やってくる地震とは違って、雨が降り出したり風が吹き始めたりすることが予想できますし、「また、あんな風になるのかな」というイメージもしやすい自然現象です。
もちろん、どんなに経験があっても危険なものは危険・・・それはみんな解っているはずなのに時に「川を見に行って怪我をした」とか「台風の日に海を見に行った」なんて人がいます。
最悪の場合は命を落としてしまうこともある危険な行為ですし、本人だって「そんなことは解っている」はず。ですが、それでも見に行ってしまうというのは人の行動としてちょっと不思議です。
生物としての生存本能があるはずですから、危険な場所には近づきたくないと思うのが自然です。
ましてや「見に行って怪我をした」とか「亡くなった」というニュースを見たことがあるはずですから、ますますそれと同じ行動をしてしまうのは不合理です。
人がこのような不合理な行動をとってしまう理由・・・それは人の心理が関係しているのかもしれません。
危険なのは解っているけど「見に行って見たい」という感覚にはもちろん、シンプルな「好奇心」もあるでしょう。
ですが、単なる好奇心ではなくそこには「どのくらいの危険が迫っているのか調べたい」という偵察や哨戒の意味合いが含まれています。
ですが、これだけで「命の危険を冒す」というのはちょっと考えにくい・・・中には危険を正確に認識していなかったというケースはあるでしょう。
山口大学の高橋征仁教授によると
これらのリスク追求行動は、直観的な役割分業の一種であり、自分の縄張りを維持するために、率先して危険の大きさを見極めようとするスカウティング(偵察・哨戒行動)として、理解した方がよいでしょう。
というのです。
つまり、自分の縄張りを守るための心理が働いているということ。
そして「見に行きたい」という衝動は男性・・・特に若い男性と初老の男性に多く見られるといいます。
自分の縄張りが「どうなっているのか」を確認して把握したいという心理。そして、危険がどの程度なのかを把握したいという心理が男性の方が強く出るのでしょう。
その上、今の時代はInstagramやTwitterなどのSNSが発達していますから「迫力ある写真を撮りたい」「動画撮影して投稿しよう」という承認欲求も作用しているといえそうです。
正常性バイアスは、よく「逃げ遅れる心理」として語られることが多い人の心理です。
簡単に言ってしまえば「まぁ、大丈夫でしょ」というやつ。
「そんなに大事にしなくても大丈夫だよ~」と思っているうちに逃げ遅れてしまうというわけです。
これは、自分にとって好ましくない情報を過小評価してしまうというもので、災害の時に「迫っている危険」を過小評価してしまうんですね。
これを「被害ほ見に行きたい」という行動と照らし合わせてみると・・・。
「危ないってテレビでは言ってるけど、そんなでもないでしょ。だから見に行っても大丈夫大丈夫」と思ってしまうことになります。
つまり「危険を察知したい」という心理と「大丈夫でしょ」という正常性バイアスが働いて「危ないけど見に行ってしまう」という考え方もできそうです。
もし、危険な場所に行こうとしている人が周囲にいたら「危険」をより強く認識させること、そして「何かあったら心配だから」と社会性を含んだ指摘をし理性的な行動をとれるように話をしてみるといいかもしれません。
参考資料:台風接近中なのに「川の様子を見に行きたい」衝動を抑える対処法 – ライブドアニュース
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