ナチスが戦時中におこなってきた数多くの非人道的な人体実験は狂気に満ちていた。
実際に純血のアーリア人種にこだわったナチス・ドイツが他の民族を選民思想によって虐殺し、実験台にした事実は変わらないが、実は現代医学に貢献したのではないか?という意見もある。
もちろん諸説あるが、数多くの犠牲と人体実験の「副産物」によって得られたデータが現代の医学界に影響を及ぼしたという説について紹介していこうと思う。
公開日:2019年10月7日 更新日:2020年1月30日
「死の天使」と呼ばれたヨーゼフ・メンゲレ博士を始めとしたドイツの科学者や医師、博士達は当時としては世界最高基準の頭脳と科学力を持っていたと言われている。
そんな彼らによって実施された人体実験において残された記録は、戦後の医学界で重宝されたという。
ただし、これらの記録が現代医学への功績を残していたとしても、これをもってナチス・ドイツの人体実験や非人道的な行為を肯定するものではない。
ダッハウ強制収容所で行われていた低体温からの蘇生実験は、元々は東部戦線で低体温症状になる兵士が続出したことから、生存率を引き上げるために行われたものであった。
この、低体温状態からの蘇生実験では数多くの医学的記録(心拍数、筋反応、体温の変化)などを残している。
これらの研究データは現在の低体温麻酔の研究に役立っているという。
前述したヨーゼフ・メンゲレ博士は数多くの悪行で有名ではあるが、戦時中かつナチス・ドイツの異常とも言える環境下の中にあり、平時では到底出来るものではない人体実験をしていた。
そのほとんどが拷問とも呼べるような生きたまま被験者の生体反応を確認するような恐ろしい実験の数々である。
ヨーゼフ・メンゲレ博士はこの実験対象にした囚人などが死亡した際には解剖データを熱心に取っていたのである。
こういった拷問と呼べるような状況下に置かれた被験者の記録は特に脳科学の分野において参考にされていたという。
上記で紹介したような事実があったとしても、これらはあくまでも人体実験という行為の副産物によって偶発的に発見されたものであることに変わりはない。
悪魔のような人体実験の記録が医学を進歩させたとしても、彼らが行なったことは紛うことなく殺人や人権の蹂躙であったことを忘れてはならないだろう。
実際に医学進歩に貢献をしたという説は今でも多く言われているが、あくまでも特殊な例であることを前提に読んで頂きたい。
ナチス・ドイツの政権下で行われた人体実験では、通常ではあり得ない「生きた人間」を被験者としてきたことが後の医学に貢献した一因だとも言われている。
通常、医学的な研究において生きた人間を被験者にすることは倫理的にも許されないことである。
しかし、選民思想にあった当時のナチスでは、人を人として扱っていなかったのである。
強制収容所や絶滅収容所などは、ある意味「実験場所」でもあったことが、数々の物証から指摘されている。
特に、歴史修正主義者によるアウシュビッツ強制収容所などでの被害実態については議論されてきたが、これらについてはハッキリと否定としておきたい。
これらの被害実態は、ヒトラーの独裁によって行われたと考えられがちだが、実際にはハインリヒ・ヒムラーを頂点とした国家的な戦略によって引き起こされたと言っても良い。