われわれの住む世界は「縦」+「横」+「奥行」の「3次元空間」だが、SF映画やアニメには、われわれの住むこの3次元とは異なるもう1つの空間……「4次元」が登場し、「異次元」とも呼ばれる。
このオカルトオンラインでもいくつか異次元に迷い込んだような話を紹介している。
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この「異次元」、実は科学の世界でも、20世紀半ばから「本当にあるのではないか?」という理論が提案されていて、しかもその理論では4次元どころか10次元まであるという。
今回は、われわれの住む3次元以外の「次元」と、この世界は10次元かもしれないという「超弦理論(ちょうげんりろん)」について、イラストを使って解説していきたい。
まず「次元」とは何か?
「次元」とは、「空間の広がり」のことだ(wikipedia)。
「次元」を「空間の広がり」として、0から3次元までを説明すると、
0次元:点(移動不可能な空間)
1次元:線(前後に移動可能な空間)
2次元:面(前後左右に移動可能な空間)
3次元:立体(前後左右上下に移動可能な空間)
と表現できる。
ちなみに次元のもつ特徴は他にもあり、
●ある次元の断面は、1つ下の次元になる
たとえば3次元の断面は面、2次元の断面は線、1次元の断面は点になる。
これは「ある次元の影は、1つ下の次元になる」とも言い換えることができる。
さらに、
●それぞれの次元は直交する(垂直に交わる)
ただしユークリッド空間(三角形の内角の和が180度の空間、簡単に言えばわれわれが暮らしている曲がっていない空間)という条件付。
それでは、10次元をイラストにする前に、その根拠となる「超弦理論」を説明しよう。
「超弦理論」が生まれたきっかけは、物理学が100年以上に渡って抱えている問題を解決するためだった。
それは「重力」を「量子力学」で説明することだ。
ミクロの世界を研究する「量子力学」では、2つの粒子同士の距離を近づけていくと、近づけば近づけるほど重力が大きくなり、最終的に重力が無限大になってしまい計算不能になる。
これを解決するために考えられたのが、われわれを形作るものの最小単位を粒子のような「点」ではなく、1本の「ひも(弦)」としてとらえる「超弦理論」だ。
※超弦理論は「超ひも理論」とも呼ばれる。
1970年にノーベル物理学賞受賞者の南部陽一郎博士らが、0次元の「点」ではなく1次元の「ひも」と考えると上手く計算ができるぞ、という「弦理論」を発表したのがはじまりだ。
※まだ「超」はつかない。
しかし弦理論は、理論を成立させるためには26次元という途方もない数の次元が必要で、タキオンという光速を超える仮想粒子の問題も抱えており、いったん下火になった。
その後1984年にシュワルツ博士とマイケル・グリーン博士が、素粒子はそれぞれにパートナーとなる超対称性粒子をもち、それを組み込むと自然界の4つの力のうち、重力を除く電磁力・強い力・弱い力を(ビッグバン直後のような)エネルギーの高い状態で統一できる可能性を発表した。
弦理論に超対称性を加えて26→10次元まで減らしたのが「超弦理論」だ。
※つまり超弦理論の「超」は超対称性の「超」。
※ちなみになぜ「次元が10も必要なのか?」というと、この「10」という数字は「次元ー10」×「問題点」という方程式から導き出される。10次元ならば10引くと0になるのでうまく「問題点」が消し去られるのだ。
それから世界中の物理学者が躍起になって「超弦理論」を研究した結果、なんと「ひもの種類」や「超対称性」の組み合わせによって5つもの理論ができてしまった。
けっきょく1995年にプリンストン大学のウィッテン博士により、1次元のひもに、さらに1次元を加えて「2次元の膜」とし、10次元の超弦理論を「11次元」で考えると5つの超弦理論が1つの理論で統一できるという「M理論」が発表された。
現在ではこの「M理論」やそれを含む「超弦理論」が、重力と量子力学を統一することのできる「万物の理論」に最も近いと言われている。
さて「超弦理論」の「ひも(弦)」には「閉じたひも」と「開いたひも」の2種類があり、この宇宙に存在する4つの力のうち「開いたひも」は電磁力と強い力(原子核を結びつける力)と弱い力(原子核を他の原子に変える力)に、「閉じたひも」は重力に相当する。
「閉じたひも」は次元の間を自由に移動できるが、「開いたひも」はブレーンという膜に両端がくっついていて離れることができない。
つまり重力だけが他の力と違って次元を自由に移動できる。
超弦理論の専門家、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の大栗博司博士は、この「開いたひも」をブレーンにはさまれている「閉じたひもの」一部とすれば、実はどちらも同じ「ひも」ではないかというアイデアを提唱している(「大栗先生の超弦理論入門」より)。
それでは、この10次元は、いったいどこにあるのだろうか?
物理学では、われわれの住む3次元空間に時間の1次元を足して「4次元時空」というが、この4次元時空より上の次元を「余剰次元」と呼ぶ。
この余剰次元は、われわれの住む空間の中で、極小サイズに小さく丸まっており、われわれの現在の観測手段では認識することができない。これをコンパクト化という。
「超弦理論」のような10次元ならば、われわれの認識できる4次元時空以外の6次元の空間がコンパクト化されているわけだ。
このコンパクト化された空間を図にしたものが、カラビ・ヤウ空間だ。
さて、それではいよいよ「超弦理論」の10次元をイラストにしてみよう。
イラストの上に並んだ0から9までの数字は「空間の数」を表している。この数字に「時間」の1次元を加えて、全部で10次元になる。
左から順にそれぞれの次元を説明していくと、
0次元空間:点。このときはまだ空間も時間も存在しない。宇宙誕生以前の世界だ。
1次元空間:線。宇宙のはじまり。ビッグバンが起こり時間が生まれ、前後という一方向だけだが空間が広がった(断面は0次元)。
2次元空間:面。前後・左右の2方向へ移動が可能になる。この2次元はわれわれの宇宙のはるか彼方にある境界「事象の地平面」であり、そこにはわれわれを形作りづくる情報が蓄えれている(ホログラフィー原理)と考えられている(断面は1次元)。
3次元空間:立体。われわれの住む世界。前後・左右・上下の3方向に動くことができる(断面は2次元)。
4次元空間:カラビ・ヤウ空間としてわれわれの住む3次元の中に小さく小さく丸め込まれている。その大きさはプランク長(10のマイナス33乗cm)以下とも言われている(断面は3次元)
※イラストでは4次元以降の断面を2次元に省略。
5次元空間:4次元に小さく小さく丸め込まれている(断面は4次元)。
6次元空間:5次元に小さく小さく丸め込まれている(断面は5次元)。
7次元空間:6次元に小さく小さく丸め込まれている(断面は6次元)。
8次元空間:7次元に小さく小さく丸め込まれている(断面は7次元)。
9次元空間:8次元に小さく小さく丸め込まれている(断面は8次元)。
つまり4次元以上の高次元(余剰次元)で現在わかっていることは、「どこにあるか?」(1つ前の低次元の中にコンパクト化されていること)と、「断面」(1つ前の次元が影になること)だけなのだ。
異次元と言えば、なんとなく空の上、宇宙を想像してしまいがちだが、実際はわれわれの生活している空間や、それこそわれわれの身体の中に小さく小さく丸め込まれているのだ。
もしあなたが異次元を見つけたければ、空の上ではなく自分の内側を深く探してみてほしい。
●参考:『Back to the past』「10次元をイラストにしてみた」(超弦理論も徹底解説)