自分だけは大丈夫?正常性バイアスが怖い

 

正常性バイアスって言葉を知ってますか?災害が多い最近になって注目されるようになった心理学用語なのですが、正常性バイアスは誰の心にもあるものなのです。正常性バイアスそのものが悪いものというわけではないのですが、正常性バイアスはときに恐ろしい結果を招く要因になることもあるのです。

今回は、私たちの心に潜む「正常性バイアス」についてご紹介します。

正常性バイアスとは

正常性バイアスとは、社会心理学などで用いられる心理学の専門用語です。簡単にいうと「まぁ大丈夫でしょ」というやつで、自分にとってあまり好ましくない状況や現実を過小評価して「自分は大丈夫だ」と思いこませしまう心理のことです。

災害で注目されるようになった「正常性バイアス」ですが、実際に災害などで自分に危険が迫っている状況でも「大丈夫だろう」と判断してしまうというものです。例えば、避難勧告が出ていても避難しなかったり、危ないと言われているのに台風が直撃している時に海を見に行ったり…これも一種の正常性バイアスだといっていいでしょう。

つまり、自分に被害があるかもしれない様々な状況を無意識化で過小評価して「まぁ大丈夫」「大したことはない」と思ってしまうことを正常性バイアスといいます。

参考資料:
Mika Yamamoto (2015年4月18日). “正常性バイアスを知っていますか?「自分は大丈夫」と思い込む、脳の危険なメカニズム”. tenki.jp. 日本気象協会
広瀬弘忠『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』集英社〈集英社新書〉、2004年1月21日、第3刷

人の脳は元々「突発的なもの」に鈍感?

私たち人間の脳はもともと突発的なものや予期しない自体に対してすこし鈍感に出来ています。これは正常なことで、いちいちいろんなことに反応していたらそのストレスで精神を病んでしまう可能性があるため、心を守るためにそういう自己防衛装置が働ているのです。

ちょっとしたことでパニックになるとその方が危険ですし、ある程度のレベルまではおちついて対応できるように、こういった機能が備わっているのです。

この機能は自分を守るために必要な物なのですが、その一方で「まぁ大丈夫」が行き過ぎると判断ミスを招くこともあるのです。実際に、災害で逃げ遅れた人のほとんどが「まさかこんなことになるとは思っていなかった」といいますし、水害で家の中に水が入ってきてやっと被害に気付いたという場合もどこかで「避難勧告が出ているけど私は大丈夫」とか「そんなに大したことはないでしょ」と思っていたのかもしれません。

少し考えて見ると自分の過去の行動にも正常性バイアスが働いていたような場面がありませんか?
危ないと言われているのに、危険な場所に行ったことありませんか?

危ないかもしれないけど、大丈夫でしょ。そう思わせるのが正常性バイアスの恐ろしさなのです。

参考資料
広瀬弘忠『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』集英社〈集英社新書〉、2004年1月21日、第3刷
山村武彦『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている』宝島社、2015年4月17日、第1刷

自分だけは大丈夫!正常性バイアスが招く結果が怖すぎる

 

正常性バイアスが働いた結果「自分は大丈夫」と避難しなかったり、危険な場所に近づいた結果、その危険が現実になることも多々あります。人間の判断は時に間違えるものですし、自然災害などは予期しない方向に事がすすむものです。

そうなったときの結果は、最悪の場合命を落とすほどの危険に直面するというものになります。命までは落とさないにしても、怪我をしたり大切な物をなくしたり傷ついたりすることもあります。

最近、生配信をしながら冬の富士登山をしていた方が滑落した事故がありましたが、あの事故ももしかすると「危ないけど大丈夫でしょ」という正常性バイアスだったのかもしれません。

災害大国だからより正常性バイアスが働いている?

特別警報が5段階に変更されたり、津波などですぐに避難しなければならないときにアナウンサーが避難を呼びかける言葉が強くなったりと、災害大国の日本では常に災害ーの対応が変化しています。

こうした変化も正常性バイアスに陥りやすい災害大国に済む人にとっては必要な対策だったといっていいでしょう。災害が多い国に住んでいると災害や警報に対策がされるためより「まぁ大丈夫だろう」という正常性バイアスが働きやすくなるとも言われています。

つまり、災害大国で災害への備えが進歩しているから、より「大丈夫だ」と思いやすいというのです。

災害への備えは必要ですが、その備えが強固であればあるだけ正常性バイアスが働き安くなるというのはなんとも皮肉な話です。

参考資料
なぜ逃げない? 災害大国の日本が陥りやすい「正常性バイアス」問題

まとめ

災害時に陥りやすいと言われている心理状態の正常性バイアスは「自分は大丈夫」という危険の過小評価をしてしまう私たちの心理のことです。

正常性バイアスで判断ミスをすると、最悪の場合、命が危険にさらされることもあります。自分の心理をコントロールするのはなかなか難しいものですが、正常性バイアスという心理があることを理解した上で、自分がおかれた状況を冷静に判断できるとベストです。

「まぁ大丈夫だろ」という軽い気持ちが招く重大な結果…人の心は恐ろしいですね。

 

 

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ライター
Miiko  福岡県在住フリーライター
https://twitter.com/wakaba_2501

Miiko

ライター歴約10年 法学系院卒 得意記事は、歴史・スピリチュアル・法律等々 福岡の隅っこでコーヒー片手に執筆中