登山者を退ける神聖なる山「梅里雪山」

オカルトオンラインで「死亡率38%のアンナプルナ」「デスゾーンの死体」などなど、高山のお話しをいくつかご紹介しました。

が、8000メートルどころか標高7000メートル以下であるにもかかわらず、未だにだれもその頂に立ったことがない「未踏峰」があるんです。未踏峰はいくつかあるのですが、今回スポットを当てたいのはチベットにある「梅里雪山(メイリーシュエシャン)」です。

公開日:2019年11月1日 更新日:2020年3月7日

梅里雪山の標高は?どんな山なの?

梅里雪山はチベットにある高山で、単独峰ではなく複数の山が連なっている連峰です。

その一帯の山を差して「梅里雪山」と呼ばれています。

梅里雪山の最高峰はカワクボで、その標高は6740メートルと確かにかなりの高山ではあるんですが、世界最高峰のエベレストや世界屈指の難峰K2、死亡率が高いアンナプルナ、そして、日本人のカリスマクライマーが奇跡の生還を遂げたギャチュンカンと比較すると標高は低めです。

もちろん、高山へのアプローチは標高以外にもたくさんの条件があって標高が低い=簡単というわけではありません。ですが、一般的にデスゾーンと呼ばれるのは標高8000メートル以上のエリアですし、標高が高くなればなるほど酸素が薄くなって環境が過酷になることも事実です。

梅里雪山には、8000メートルオーバーのデスゾーンは存在していません。

そう考えると、化学繊維やクライミングギアなどの道具が進化した現代になってもなお、誰も頂上にたどり着けないのは少し不思議な気もします。

未踏峰の中には技術的、環境的なものではなく、政治的な理由で山に行くことが難しい(危険)というケースや、宗教的な理由で入山が許可されない…つまりアタックできない山もあります。

ですが、梅里雪山は過去に何度も頂上を目指した挑戦は何度もされてきたんです。

それも、かなりのプロが集団でトライしたにも関わらずすべて失敗

梅里雪山の最高峰だけでなく、すべての山が未だに処女峰のまま残されています。

梅里雪山で起こった悲劇

梅里雪山は全部で7峰…

カワクボ(中国語版)(太子峰/卡瓦格博/カワ・カルポ/カワカブ、6,740m)
メツモ(神女峰/緬茨姆、6,054m)
ジャワリンガ(五冠神山、5,470m)
スグドン(斯古都、6,379m)
マーベンゼンデウーショ(馬兵扎堆五学、6,000m)
チョタマ(pk6509、6,509m)
コワテニー(戈大尼、6,108m)

(出典 Wikipedia

です。

最も標高が高い山でも6740メートル…一番低いジャワリンカは5470メートルと高山の中で標高はさほど高いというわけではありません。

ですが、この梅里雪山はすべて未踏峰です。

梅里雪山に、過去にアタックを試みた登山隊は日本と中国の登山隊でした。

が、すべて失敗に終わっています。

中でも悲劇的なのが1991年の遭難事故…日中合同で結成された登山隊計17名が山にキャンプを設営し、梅里雪山の頂上を目指しました。斜面から離れた比較的安全な場所に設営されたキャンプ…のハズだったのですが、第3キャンプに全員が集合して待機していたときのことです。突然、雪が降り始めてみるみると積雪の量が増えています。

そして、遂に積雪は1メートルを超えることになります。そしてその後、登山隊が集合した第3キャンプを巨大な雪崩が襲い連絡が途絶えました。

すぐに、救助隊が結成されるものの、積雪のせいで第3キャンプに到達することもできませんでした。

そして、航空写真で第3キャンプが雪に覆われて埋め尽くされていることを確認…。この第3キャンプは頂上までわずか270メートルの位置だったそうです。

その後、第3キャンプにたどり着けたのは、遭難事故から5年後のこと。ですが、遺品を捜索が行われるも遺体やテントは発見できませんでした。

この時の遭難者の1998年になってようやく遺体や遺品が発見されたのですが、第3キャンプ付近ではなく麓を流れる氷河から遺体が出てきたんです。

損傷が激しい遺体でしたがほとんどの遺体は寝袋に入っていたそうで…寝ている間に雪崩が直撃したことを物語っていたそう。

参考文献 小林尚礼 『梅里雪山-十七人の友を探して』, 山と渓谷社 2006年

梅里雪山は神聖な山

梅里雪山は地元のチベットでは、神聖な山として崇拝の対象になっています。山全体が「御神体」と考える人も多く、登山隊は山を汚すものとして地元の人からあまり歓迎されていません。

エベレストなどの場合、麓の村に住むシェルパやポーターにとって登山隊の仕事を手伝うことは重要な経済活動のひとつですし、他で働くより高給になるので、地元の人も基本的には登山隊を歓迎してくれます。(マナーが悪すぎて歓迎されない国の人もいるそうですが)

高山にトライするときにこの地元住民の協力が得られないことは大きなネックといえます。ですが、一流クライマーの中では「ソロ」とか「単独」という登山方法が定着していて、あえて、誰の助けも借りずに山頂に登ってから下山するという究極ともいえる登山スタイルもあります。

単独登頂で難峰のK2に登れる技術があるクライマーも世界にはいる中で、未だに梅里雪山が未踏峰である理由…。それはなんなのでしょうか。

梅里雪山の頂を未だにだれも落としていない理由は、やはり「神聖なる山」だからではないかと言われています。クライミングギアの進化や天気予報の精度向上などを考えると、登れる山のはず。ですが、誰も登れないのは「山に歓迎されていないから」。

登ろうとしたら大きな雪崩が起きたり天候が荒れたり…こんなことを何度も繰り返した梅里雪山は、本当に神聖な「神の山」なのかもしれません。

実際に梅里雪山を見たことがある人は「神が宿っているような美しさと怖さを感じた」と話しています。

世界屈指の登山技術と最新の設備を持ってしても決してその頂に立てない山なんです。遭難したら何年も立ってから麓の氷河で発見される…梅里雪山は人がその頂に立つことを拒んでいるようです。

まとめ

未踏峰「梅里雪山」は未だに誰も頂上に立つことを許されていない山です。神聖な山として崇拝されてきた美しい連峰に登ろうとした登山隊は悲劇的な遭難事故で命を落としました。

いつかこの山も誰かか上るのかもしれませんが…今のところまだ、誰も梅里雪山の山頂を落としてはいません。

Miiko

ライター歴約10年 法学系院卒 得意記事は、歴史・スピリチュアル・法律等々 福岡の隅っこでコーヒー片手に執筆中