豪雪地帯の新潟県で今も行われている奇祭の”婿投げ”のちょっと怖い由来をご紹介します。
投げられた婿の嫁がみたものとは…。
公開日:2019年8月31日 更新日:2020年1月9日
みなさんは、婿投げという言葉を聞いたことはありますか?
婿投げとは、今でも新潟県に残っているお祝いの行事です。
小正月の1月15日に、1年の間に結婚した婿(その集落に婿入りした者ではなく、その集落の女性と結婚した男性)…
つまり婿を集落の住民が崖の上から投げ落とすというものです。
今でも婿投げが行われているのは、日本三大薬湯に数えられる松之山温泉です。
豪雪地帯として知られるこの地区では、たくさん積もった雪の中に、婿を投げるという風習が残っていますが、これももちろん、婿投げのひとつです。
ですが、この婿投げの風習は、もともとこの地区で行われていたものではありません。
実は、時代とともに一度、衰退していたのです。
その衰退した風習を、町おこしとして、引き継いだのが、今も行われている婿投げ。
つまり、残っているのは、現代版の婿投げといったところです。
現代版の婿投げは、安全に十分配慮して行われています。
お祭りですから、怪我や死者が出ないようになっています。
なんといっても豪雪地帯ですから、たくさん積もった柔らかい雪の上に婿を投げるだけ…
ちょっと手荒な、田舎のお祝いの風習として楽しむものです。
決して、婿をイジメてやろうというものではありません。
投げ落とされる側の婿も、そして、投げ落とす側の住民も、笑顔で楽しんでいる様子でテレビ中継されることもある奇祭です。
実はこの婿投げ、もともとは、松之山温泉街の奥にある、天水越(あまみずこし)集落というところに古くから伝わっている風習だったといわれています。
これだけ聞くととってもおめでたい、ちょっと変わったお祭りですが、実は、この婿投げには、決して穏やかではない恐ろしい由来があるのです。
その由来は…今から数百年前に遡ります。
今よりもずっと、集落というコミュニティの絆が強かった時代のお話です。
婿投げは「よその集落の男性に女性をとられた」というやっかみから生まれています。
まず、大前提として、当時の田舎の集落では、年頃の娘は貴重な嫁候補だったわけです。
その貴重な嫁候補はみんなが狙っているということになります。
その当時はいわゆる「夜這い」ということが一般的だったので、みんな「隙あらば」という状態でした。
現代に置き換えると、これだけでも恐ろしい話しです。
そんな貴重な年頃の娘を、他所の集落の男に取られたらどうなるでしょうか。
そう、当然、集落の住人はやっかみを覚え、そして、徐々にそのやっかみが憎悪に変わっていくことは想像に難くありません。
簡単に言ってしまえば「俺が狙っていたのに、よそ者がのこのこやってきて、もっていきやがって!くそぉ」といったところ。
そういった、背景がある中で、とうとうある事件が起こります。
ある時、この集落で年頃の娘が、他所の集落の男から、まるでさらわれるように結婚することになってしまったのです。
当然、集落の住人は大激怒し、ついに行動を起こすのです。
まず、小正月(1月15日)の薮入りに、その婿が嫁の実家に泊りに来ていたところに大人数で押しかけて、集落の若者全員で外へと無理やり引きずり出します。
これだけでも、今なら、立派な犯罪ですが、怖いのはここからです。
その引きずり出した婿を、崖の上に運んで薬師堂が立ってい崖の上から、投げ落として殺してしまったのです。
嫁の側からすれば、こんなに恐ろしいことはないといってもいい大事件です。
ここからは、お嫁さんの視点でちょっと考えてみましょう。
先ほど「さらわれるように結婚した」と言いましたが、それは、あくまでも集落の住民側の見方です。
その嫁にとっては、婿は最愛の旦那だって可能性が高いのです。
だって、小正月にわざわざ嫁の実家に帰省する位ですから、無理やり結婚したというわけではなさそう。
そもそも、集落の男性が「隙あらば」と自分を狙っている訳ですから、よその集落の人に惹かれるのも無理のないことです。
他所の集落の男性と結婚し、小正月の藪入りに久しぶりに実家に帰省してゆっくりしていたところに、よく知っている集落の男衆がドヤドヤとやって来るわけです。
これだけでも十分、怖いわけですが、、
男衆は自分の旦那を力任せに家から引きずり出して、崖まで連れ去って、あろうことか投げ落として殺してしまうわけです。
何十メートルも下の崖に落とされた遺体…きっと、ひどい状態だったことでしょう。
楽しいはずの帰省が一転、旦那を投げ殺されるという悲劇を生んでしまいます。
この後、この嫁がどうなったのかは記録が残されていません。
ですが、こんなことがあったらもう、他の集落のどんな男性とも結婚は難しいでしょう。
その後は、同じ集落の男性と結婚したのかもしれませんね。
いかがでしたか?
今では、豪雪地帯の手荒な伝統行事として残る婿投げ…お神酒を飲んでから行われる神事的な意味合いもありますが、その由来は、やっかみが運だ恐ろしい、殺人事件だったのです。
小正月に帰省していたところを襲われた婿、そして、嫁。
そして、その両親の心境を考えると、なんとも恐ろしいものです。
現代の日本では一見華やかに見える行事でも、それらの由来には恐ろしい出来事が絡んでいることも…
あなたの身近で行われている行事にも、ひょっとすると恐ろしい秘密があるかも知れませんよ。。