奈良の心霊スポット「白高大神」とは?中井シゲノと廃神社の正体

白高大神(しらたかおおかみ)……。

奈良県に住んでいる人は、一度はその名を聞いたことがあるでしょう。奈良県屈指の心霊スポットでありながら、戦後初期までは多くの悩める人が通いつめた聖地です。

山奥にひっそりとそびえ立つ廃神社「白高大神」では、数多くの恐い話が語られています。

「少女が悪霊に取り憑かれて精神を崩壊させた」
「防空壕跡地で恐ろしい幽霊を見た」
「訪れた後に大怪我をした人がたくさんいる」

取り上げれば数え切れないほどの、ホラーストーリーの数々。地元民には「本当に危険な場所」として認知されています。

そんな恐ろしい廃神社、実はあの京都伏見稲荷大社にルーツをもつ人気の神社で、その裏には「中井シゲノ」という1人の巫女の人生が隠されていました。

今回は奈良県屈指の心霊スポットであり、パワースポットともされる廃神社「白高大神」について紹介し、過去の歴史や中井シゲノなる人物についてお話します。

廃神社「白高大神」は悪霊に取り憑かれる危険な心霊スポット

まずは白高大神の場所から紹介します。

白高大神が廃神社になったのは、平成3年からです。思ったよりつい最近の話なんですね。

山奥にそびえたつ廃神社は、静かでありながら不気味です。

単なる廃墟としての不気味さではありません。修行に使われた滝つぼや、祈祷のあとが残る祠、生々しい歴史を語る防空壕、そして朽ちた鳥居と首の落ちたキツネの像……。

霊感のない人でもなにかを感じずにはいられない、まさに奈良県屈指の心霊スポットです。

面白半分で近づいた16歳の少女が洞窟内で悪霊に取り憑かれ、老婆のような姿になって精神に異常をきたしたという話はあまりにも有名。

怪談師として有名な稲川淳二が「奈良の廃神社」として紹介したことで、全国的な心霊スポットになりました。

その映像はAmazonなどで今でも配信されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

心霊スポット?パワースポット?廃神社の正体にまつわる中井シゲノとは

そんな危険な心霊スポットとして認識されている白高大神ですが、「ここは聖地だ」「心霊スポットではなくパワースポットだ」という人もいます。

というのも、実は平成初期に廃神社になるまでは、この山奥にそびえ立つ神社に、関西内外から多くの悩める人が通いつめていたからです。

白高大神はそもそも、あのおキツネ様の総本山「京都伏見稲荷大社」のお墨付きをもらった、由緒正しき神社でした。

1939年に伏見稲荷大社の特別講社に、そして1964年には正式に大阪南支部に昇格しています。

京都伏見稲荷大社といえば、おキツネ様。コンコン。

あの鳥居がずらーーーっと並ぶ The Japanese なロケーションで有名ですね。

その伏見稲荷大社から認められ、白高大神にたくさんの人が集まったのは、当時の宮司(正しくはオダイ)であり、昭和初期にその名を日本中にとどろかせた霊能者「中井シゲノ」という人物なくしてはありえませんでした。

中井シゲノは霊能者、というよりも祈祷師(シャーマン)の一家に生まれた巫女です。幼い頃にその才能に目覚めて以降、数々の功績を残し、やがて白高大神を建てるにいたります。

キツネの神さまに洗礼を受けた中井シゲノの人生

幼い頃から祈祷師としての才能に恵まれた中井シゲノは、様々な修行を積みながらその才能をさらに開花させ、また女性としても恵まれた人生を歩みます。

成人になる頃には結婚し、子供を出産。子育てや家事をしながら修行に打ちこんでいた矢先、事故によってなんと両目を失明してしまいます。

しかし目が見えなくなった彼女はその障害にも立ち向かいました。

その昔、盲目の天皇が開眼したという伝説が残る観音菩薩の滝つぼで、来る日も来る日も修行を行ったのです。

その結果、失明により暗黒に閉ざされていた彼女の目に白いキツネの姿が浮かび、なんと両目の視力を回復していたのです。

そして、キツネの神様から真言(仏の言葉)を授かりました。

以来、彼女のシャーマンとしての霊格は格段に向上。すさまじいパワーを生みだしていくことになります。

中井シゲノと白高大神のはじまりは大阪

中井シゲノはある日、キツネの神様を夢に見て1つのお告げを聞きます。

「大阪にある安居天神とその中の玉姫社に行け」

けっして裕福ではなかった彼女ですが、翌日、なけなしのお金を握りしめて大阪にある安居天神へと向かいます。

中井シゲノは安居天神のことはなにも知らなかったのですが、境内には本当に「玉姫社」と書かれた祠がありました。

安居天神の宮司に、夢のお告げとこれまでの経緯を説明したところ、なんと玉姫社を譲り受けることに。

中居シゲノは奈良県から大阪の玉姫社へと身を移し、この地でさらなる修行に励むことになりました。

中居天神に悩み相談に来た人などに対して、誰も知りえないような的確なアドバイスを与えたといいます。

その結果、彼女のもとに集まる信者は日に日に増え、なんと政治家までもがその行末について相談に足繁く通うようになりました。

そういった数々の功績がたたえられ、中居天神のはからいから京都伏見稲荷大社へと取り次がれ、洗礼を受けた白いキツネの経緯などを伝えた結果、実績を鑑みて京都伏見稲荷大社から特別な講社に選ばれたのです。

玉姫社と中居シゲノ氏は、伏見稲荷大社からお墨付きをもらい、故郷である奈良へ戻ります。

再び奈良へ 白高大神と玉姫教会の誕生

奈良に戻った中井シゲノは、滝行(滝に打たれる修行)の道場として、白高大を築きあげます。

これがやがて「白高大神」と呼ばれるようになるのです。滝は今でも残っており、静かな廃神社に水の落ちる音が響いています。

京都伏見稲荷大社のお墨付きをもらった彼女の名声は天高くとどろき、神の言葉を聞ける巫女様として崇め奉られるまでにいたります。

玉姫社はその信者規模に応じて大きくなり、ついに1つの宗教法人しとて独立を果たし「玉姫教会」とその名を変えます。

廃神社となった聖地 そして心霊スポットへ

中井シゲノを中心としたおキツネ様によるパワーを求めて数々の信者が足繁く通った白高大神原因不明の病に苦しむ人や、人生の行く末に迷った人に対して、中井シゲノは神の力をもって解決の策を伝えていきました。

信者数は増加の一途をたどるものの、神の加護を得た中井シゲノもさすがに年齢には勝てず、徐々にその老いを隠せなくなっていきます。

信者数の激増とその評価から、一時は伏見稲荷大社の大阪南支部にまで昇格したものの、1991年、中井シゲノは89歳にてこの世を去りました。

彼女の死を境に信者は行き場をなくし、次第に神社も廃れていきました。宗教法人といっても弟子への伝授やマニュアルがほとんどなく、中井シゲノの天才性に依存していたからです。

そして残念なことに平成3年、正式に廃神社へと姿を変えてしまいました

中井シゲノと白高大神については、アンヌ・ブッシイという宗教民俗学者の著書にもっと詳しく載っています。思わず現代の信仰や人生について考えてしまうオススメの良書です。

奈良県屈指の心霊スポットでもありパワースポットでもある白高大神

白高大神は修行場として開かれていましたが、前述の通り、そのルーツは京都伏見稲荷大社の分社にあります。

キツネの神様が存在していた場所なのです。

廃神社と化した今でもそのパワーは健在で、昼間に訪れれば霊験あらたかな空気感を味わうことができるでしょう。

聖地パワースポットとも呼ばれるのはそのためです。

しかし夜に訪れた場合には、その霊的なパワーを喰らいに様々な悪霊がふきだまる「危険な心霊スポット」へと変貌します。

全国の廃神社に漏れず、幽霊には霊的パワーを求めて集まる習性があります。そのため夕方より先の「魔が差す」時間帯は、神聖な神社仏閣は一転して危険な場所になってしまうのです。

また昼間に訪れたからといっても、面白半分で探索したり、悪ふざけをすれば、キツネの神様に祟られることもあるでしょう。

悪霊に取り憑かれた少女がいるといいますが、それはいわゆる「狐憑き」だったのでしょう。キツネの霊が憑依して精神を錯乱、人生を棒に振ることもありえます。

様々な「いわく」のある白高大神ですが、しっかりと参拝する心構えで行けば、おキツネ様も迎え入れてくれるはずです。

悪ふざけは決してせずに、誠心誠意、ご祈祷の気持ちをもって訪れることをオススメします。

コンコン。

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夏藤涼太

神話に魔法、UMAにUFO、超能力に超古代史、最新科学に都市伝説まで、オカルトならなんでもござれのWebライター。「日々にロマンを。毎日を豊かに。日常を非日常に」をテーマに書いています。学生時代の専攻は民俗学。