“万能の天才”と称され、画家だけでなく科学・建築・発明などあらゆる分野で活躍した、イタリアの芸術家「レオナルド・ダ・ヴィンチ」。
そんなレオナルド・ダ・ヴィンチについて、彼の生後から弟子・独り立ちの時代・そして死ぬまで手を加え続けたとも言われる『モナ・リザ』に至るまでの作品を解説する連載を書いてきました。
今回この記事では、連載のテーマから少し外れて、「レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた絵画作品が鑑賞できる美術館」をご紹介していきます。
今から500年前に活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチの各作品は、長い年月を経て、ヨーロッパを中心に世界各地に渡っています。
しかしながら、これほど画家として有名なレオナルド・ダ・ヴィンチが生涯に製作した絵画は、わずか十数点しかありません。
つまり、彼の作品をすべて自分の目で鑑賞することは、実はそれほど難しいことではないのです。
そんな世界各地の美術館や教会を、有名な作品もマイナー作品もすべて含めてご紹介していきます。
フランスのパリにある、世界最大級の美術館・博物館といえば「ルーヴル美術館」です。
ルーヴル美術館に収蔵されている美術品は全部で約40万点にものぼり、そのうちの4万点ほどが常設展示されています。
毎年多800万人以上の観客が訪れる、世界で最も入場者数の多い美術館としても知られています。
この世界的な美術館の一番の目玉は、何と言っても『モナ・リザ』(ラ・ジョコンダ)でしょう。
『モナ・リザ』(正式名称「ラ・ジョコンダ」)
『モナ・リザ』は常に防弾ガラスに覆われ、数メートルほど離れた場所からしか鑑賞できないにも関わらず、休日やバケーションの時期には行列ができるほどの人気ぶりです。
また、『モナ・リザ』の隣の部屋には、
以上の4作品が展示されており、レオナルド・ダ・ヴィンチの真作を5つ一度に鑑賞できる唯一の美術館でもあります。
『洗礼者ヨハネ』
その他の作品も、どれも広い館内に一挙に飾られており、著名な画家・芸術家の作品を流れるように鑑賞することもできます。
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サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の食堂には、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた最も有名な絵画の1つ『最後の晩餐』が描かれています。
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会は、イタリアの都市・ミラノにあるカトリック教会の聖堂であり、この教会とドメニコ会修道院はともにユネスコの世界遺産に登録されています。
『最後の晩餐』
『最後の晩餐』の見学は、作品を保護するため予約制&人数制限が設けられており、1回あたりの閲覧時間も15分と細かく決められています。
こうした様々な劣化・崩壊の危機に直面してきたにも関わらず、度重なる修復作業や保存活動によって当時の様子をなんとか再現し現存できている、まさに存在自体が奇跡とも言える作品です。
画像で見るとどれくらいの大きさなのか判別できませんが、実は『最後の晩餐』は縦420cm×横910cmと非常に巨大であり、地面から2mほど高いところに描かれているため、全体を見渡すことすら困難な作品でもあります。
この大きさと荘厳さ・迫力や、この作品をレオナルド・ダ・ヴィンチ一人で描ききったこと、またわずか3年で描いてしまったという事実を知ると、実際に見た時の感動は何ものにも代えがたい体験になることでしょう。
イタリアの都市・フィレンツェにある、レオナルド・ダ・ヴィンチが活躍した「ルネサンス期」の絵画や彫刻の傑作を鑑賞できる美術館です。
当時の芸術・文化の中心だったフィレンツェの芸術家の作品が数多く展示されており、イタリア国内の美術館の中では最大の収蔵数と質を誇ります。
ウフィツィ美術館の常設展示物は約2500点あり、その中にはレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、
といったレオナルドと同じ時期に活躍したイタリアの巨匠たちの作品を鑑賞することもできます。
ウフィツィ美術館で鑑賞できるレオナルド・ダ・ヴィンチの真作は、『受胎告知』です。
レオナルドが師匠の工房を卒業し、独り立ちのデビューを飾った初々しさが残る作品です。
『モナ・リザ』や『最後の晩餐』など、知名度も完成度も優れた大作が目立ちますが、『受胎告知』にもレオナルドらしさがふんだんに盛り込まれており、若かりし頃から才能を発揮していたことに気付かされる快作です。
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バチカン美術館は、イタリアの領土の中にあるバチカン市国にあり、主に歴代ローマ教皇の収蔵品が展示されている世界最大級の美術館です。
レオナルド・ダ・ヴィンチと同時期に活躍したもう一人の万能の人「ミケランジェロ」らによって装飾されたシスティーナ礼拝堂をはじめ、イタリアで活躍した巨匠たちの作品も多く展示され、見学することができます。
バチカン美術館に収蔵されているレオナルド・ダ・ヴィンチの作品は、『荒野の聖ヒエロニムス』です。
遅筆のレオナルドは、未完成のまま終わった作品も少なくなく『聖ヒエロニムス』もその1つ。
よく見ると、背景や右下のライオンが下書きのまま残されていることが分かります。
しかしながら、ヒエロニムスの骨格や筋肉は未完成ながらもダイナミックに描かれており、レオナルド・ダ・ヴィンチの素描力の高さを知ることができます。
関連記事>>『荒野の聖ヒエロニムス』『東方三博士の礼拝』
チャルトリスキ美術館は、ポーランド南部の都市・クラクフにあるポーランド最古の美術館です。
チャルトリスキ公爵が運営と管理を行う私立美術館であり、ヨーロッパでも最大級の規模を誇ります。
ここでは、あの『モナ・リザ』に匹敵する女性肖像画、『白貂を抱く貴婦人』を鑑賞することができます。
「その一瞬を切り取る」ということにこだわりを持っていたレオナルド・ダ・ヴィンチらしく、今にも動き出しそうなポーズが特徴です。
『モナ・リザ』にも通ずる女性の肖像画であり、レオナルド作品の中でも評価が高く完成された作品の1つです。
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ルーヴル美術館にも、タイトルも構図もまったく同じ『岩窟の聖母』が収蔵・展示されていますが、どちらもレオナルド・ダ・ヴィンチの真作とされています。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーに展示されている『岩窟の聖母』は、ルーヴル版の修正を行った、いわゆる“バージョン2”です。
『岩窟の聖母』
ルーヴル版の『岩窟の聖母』は、依頼主の注文をほとんど無視して自由に描かれた(描いてしまった)ものであり、レオナルドらしさこそ表れてはいるものの、作品をめぐって長らく裁判になった「問題作」でもありました。
『岩窟の聖母』は、ルーヴル版もナショナル・ギャラリー版も縦189.5cm×横120cmの巨大な油彩画であり、レオナルドのこだわりや個性・彼と世間の乖離を知ることができる、鑑賞価値の高い作品です。
関連記事>>レオナルド・ダ・ヴィンチ史上最大の問題作!?絵画『岩窟の聖母』解説
アメリカのワシントンD.C.にある国立美術館「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」にも、レオナルド・ダ・ヴィンチの真作である『ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像』が収蔵されています。
ロンドンのナショナル・ギャラリーを訪れたアンドリュー・メロンの「母国アメリカにも同様の国立美術館を建てたい」という思いから実現した、年400万人が訪れるアメリカ最大級の美術館です。
メロンは「誰でも入れる美術館」を目指しており、誰でも無料で入場することができます。
展示されている作品には、
など、美術史上の数々の巨匠が描いた名画を数多く鑑賞することができます。
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エルミタージュ美術館は、ロシアのサンクトペテルブルクにある国立美術館です。
1990年に世界遺産に登録されており、収蔵品の数は300万点以上。
毎年400万人以上が訪れる、世界的にも規模の大きい美術館としても知られています。
エルミタージュ美術館では、レオナルド・ダ・ヴィンチが聖母マリアを描いた2つの作品を鑑賞できます。
『ブノアの聖母』
『リッタの聖母』
以上の2作品がレオナルド・ダ・ヴィンチの真作として展示されていますが、『リッタの聖母』に関してはレオナルド本人が描いたものかどうか、未だに確証はありません。
といったレオナルド作品におなじみの写実的な要素は『ブノアの聖母』に顕著に見られ、『リッタの聖母』は無機質で神々しい印象を受けます。
両作を比較して、真作が別の画家の作品か、どちらが魅力的か、考察するのも面白いですね。
関連記事>>レオナルド・ダ・ヴィンチの代表作『ブノアの聖母』
この記事で紹介した美術館以外にも、ドイツにある「アルテ・ピナコテーク」の『カーネーションの聖母』など、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたとされる作品が収蔵・展示されている美術館はいくつかあります。
今回は、真作と判明している、もしくは真作である可能性が極めて高い作品を所有する美術館に限定しました。
もし「レオナルド・ダ・ヴィンチの作品を鑑賞したい!」と思っていただけたら、まずは、
このどちらかがおすすめです!
レオナルドの聖地巡礼という意味ではイタリア旅行がおすすめですが、一生に一度は見ておきたい『モナ・リザ』はパリにあり、どちらに行こうか迷ってしまいます。
海外旅行する際は、ぜひ美術館も巡り、レオナルド作品を直に見て思いを馳せていただけたら嬉しいです!