「天才」と聞いて、皆さんそれぞれいろんな人物が思い浮かぶでしょう。
その中で”万能の天才”と呼ばれる天才中の天才といえば、イタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチです。
といった誰もが知る絵を描いた画家であり、自画像から堅物おじいちゃんのイメージがありますが、実は容姿端麗のイケメン。
社交性もあって多くの弟子を持ち、当時の貴族を楽しませる機知とユーモアも併せ持っていたとか。
まさに一切の隙が無いパーフェクト・ヒューマンですが、実は「発達障害」だったのでは?という説があります。
“発達障害≒天才”というイメージもありますが、本人はその特性に苦しんでいたりするものです。
ダ・ヴィンチも人生のすべてが順風満帆だったわけではなく、やはりそれなり以上の苦悩を経験してきています。
この「ダ・ヴィンチ発達障害説」について、詳しくまとめていきます。
「発達障害」と一言で言っても、いろいろな症状がありそれぞれ名称が異なります。
その中でもダ・ヴィンチは「注意欠如・多動性障害(ADHD)」だったのではないか、と考えられています。
発達年齢に見合わない多動‐衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。学童期の子どもには3〜7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。
ADHDは、主に以下の3つの特性を持っているとされています。
先に述べておくと、ADHDをはじめとした発達障害は病気ではありません。
様々な人に共通する”特性”であり、その特性に本人が苦痛を感じる場合は治療を勧められることがあります。
その人の性格やキャラクターのような部分も含まれることがあり、大人になって「実はADHDだった」と気づく人も近年増えてきていますよね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの伝記や考察本を読むと、驚くほどADHDの特性に当てはまっており、また特性に苦しめられてきたことが分かります。
この3つの特性を、名画製作時のエピソードを交えながらみていきましょう。
「集中力にムラがある」という特性を表す最たる逸話が、『最後の晩餐』製作中のエピソード。
最後の晩餐の製作中のダ・ヴィンチは、ろくに食事もとらず1日中製作に没頭したかと思えば、数日間一切絵に触れないこともざらにあったといいます。
最後の晩餐製作時の逸話は、この「集中力にムラがある」というADHDの特性を端的に表しています。
ADHDの2つめの特性が、落ち着かずじっとできないこと。
ダ・ヴィンチは1つの物事や作業に集中することができず、遅筆の芸術家として知られています。
ダ・ヴィンチの最高傑作とされる『モナ・リザ』は、実に16年もの歳月をかけ、何度も何度も修正された痕跡があることが分かっています。
絵を修正しては完成形を想像し、また手を加えては「これでいいのか」と悩み、結局ダ・ヴィンチはモナ・リザを完成させることができませんでした。
モナ・リザ製作時も自身の興味があちこちに移り変わり、長く筆を取り続けることができなかったといいます。
ダ・ヴィンチはあらゆる物事に興味を持ち、その原理や仕組みを徹底的に追求・解明しないと気が済まない人物でした。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ手稿」と呼ばれるメモには、ヘリコプター(人を乗せて空を飛ぶ機械)のアイデアや、
人体図に関するデッサンから、
胎内を解剖した時のデッサンまで。
仕事をほったらかしてまで自分の興味を追及したというダ・ヴィンチは、ADHDの特性である衝動的な行動に当てはまる部分があります。
ダ・ヴィンチが仮にADHDだったとすれば、その気質である落ち着きの無さや衝動性・集中力によって、時代を先取りする新発見・発明をたくさん行ってきたことになります。
ADHDと聞くと、「かわいそう」とか「ダメな人」という印象を持ちがちですが、自分が欠点だと思う部分も、実は長所だったり他人が羨む特性であったりもします。
ダ・ヴィンチは、欠点と思いがちな自分の特性を活かす天才でもあったのです。