前回まで、「パラレルワールドに干渉できる可能性」や「夢の中で未来のパラレルワールドを見る方法」を考察してきたが、今回はいよいよ「未来のパラレルワールドの記憶をもったまま、過去の(現実の)世界で目覚める方法」を考える。
それができれば、将来起こる出来事に対処しながら行動していけるので、人生をやり直すための「過去へのタイムリープ」を実現できるかもしれない。
もっと具体的に言えば、明晰夢で夢をコントロールして未来の世界にアクセスし、その記憶を持ったまま目覚める方法だ。
ただし、そのためには下記の大きなハードルを越えなければならない。
人は本来、夢を見ているときの記憶を忘れやすい。
睡眠の主な機能は、脳を外界から切り離し、脳を休息させたり記憶を整理したりすることだ。
その中で夢が担う機能が、昼間蓄積された膨大な情報から、不要な情報を整理・処理することだと言われている。
日常生活の中で、われわれはさまざまな情報を脳に蓄積している。
現代は特に情報過多の時代であり、そのままではオーバーロードしかねない脳の負荷を下げるために、夢を見ることで情報を整理し、不必要な情報を削除していると考えられている。
だとすれば、夢を見ているときの記憶とは本来、覚えておく必要がないものなのだ。
だから朝目覚めてすぐなら昨夜見た夢の内容を簡単に思い出せたのに、それから数十分後、学校や仕事へ出る準備をした後に思い出してみると、すっかり夢の内容を忘れているのだ。
けれどもご安心を。
夢の内容を思い出すためのテクニックがある。
もっとも代表的な夢を思い出す方法は「夢日記」を付けることだ。
「夢日記」とは昨夜見た夢の内容を目覚めてからメモにとるだけのお手軽な方法で、実際にこれを続けた人のほとんどは、夢の世界がどんどん詳細にリアルになっていく。
私も以前、夢日記を試してみた。
目覚めてからすぐ、夢の内容を忘れないうちにスマホのメモに書きとめていった。
コツは、見た夢の内容とともに、その夢を象徴するタイトルをつけることだ。
人の夢など関心ないと言われるかもしれないが、「夢日記の付け方の参考例」として、私(BTTP)の10日間の記録をご覧いただきたい。
【1日目】
●川沿いでリレーマラソンをした。4人走者のうち私は2番目。
【2日目】
●山小屋で同窓会。草原の上空を飛んだ。他に2種類見たが覚えていない。
【3日目】
●仕事関係でどこかへ団体旅行。あまり覚えてない。
【4日目】
●パンデミックが起こりみんな幽霊になってしまう話。
●交通警備員に邪魔されて車で同じ所を走らされる話。
●ヤクザにクルマを弁償させられるというドッキリをテレビで見ている話。
3種類以上見たが、それぞれあまり詳しく覚えていない。
【5日目】
●貧しい町から山を超えて隣町(隣国?)へと逃げる話。
途中でクマやイノシシに遭遇してびびった。
3種類以上見たがあまり覚えていない。
【6日目】
●実家がオシャレなカフェ&レストランになっている。
●上半身ハダカで自転車に乗って走り回る。
5種類ほど見たがあまり覚えてない。
日記をつけるのが少し苦痛になってきた。
【7日目】
●イナズマが轟き、豪雨の中を走っている。
急に場面が変わり、ビリヤードをしている。
あまり覚えてない。
【8日目】
●どこかの街の飲み屋で朝まで過ごす。
●懐かしい人に出会う。
●大好きなバンドのライブを見る。
けっこう覚えている。
【9日目】
●どこかの大学で掃除道具を探してまわる。
大学は外国ぽいつくりで、外人も多い。
斜面に植えられたフェニックスの木と青空が印象的だった。
それ以外に2~3種類見たがあまり覚えてない
【10日目】
●会社で遅くまで仕事。なぜか同じフロアに銭湯があり入る(現実にはもちろんない)。
●会社の同僚とピザを食べにいく。
●自転車でかなり遠いところまでいき、帰りは車に乗せてもらうつもりが当てが外れ、長距離をまた自転車で帰る羽目になる。
3種類ぐらい見た。
10日間続けてみた結果、リアルな夢をいくつか見ることはできたが、夢の中で夢を見ていることに気づく明晰夢を見ることはできなかった。
ただ注目してほしいのは、夢日記を続ければ続けるほど、夢のディテールが詳しく書けるようになることだ。
「起きたら夢日記をつけなければ」という脅迫観念に駆られ、寝不足気味の日もあったが、その後、50日間ほど続けてみた。
(途中忙しくて6日ほど取り忘れていた日があり、実質44日間分だが)次にそのデータ分析をご紹介したい。
※個人の夢データの分析など「誰得?」と思われるかもしれないが、あくまで参考として……。
●夢を見た夜は95%。ほぼ毎日夢を見ている。
よく晩酌をするので、アルコールの摂取との相関も調べたが、私自身のデータではお酒の有無は夢見にはそれほど関係なかった。
●平均すると毎晩2つぐらい夢を見ている。
内容を覚えている夢とあまり覚えてない夢をあわせた平均が1.98回。そのうち内容を覚えている夢は85.1%。
ただしデータを見返して思ったのは、覚えてないだけで本当はもっとたくさん夢を見ているのかもしれない。
覚えている夢の割合は実際はもっと下がるはずだ。
●夢を完全にコントロールできたのは0回。ただし明晰夢っぽいリアルな夢は4回あった(9.1%)。
明晰夢っぽい夢の内容は、
・「魚の手づかみ」
川の魚を眺めていて水の中に手を入れると寄ってきた。
下あごをつかんで捕まえることができた。魚の種類はブラックバス。
バス釣りをした経験のある方ならご存じだろうが、素手でつかむと鋭いバスの歯で指が傷つく。でも傷がつかなかったので不思議に思ったのを覚えている
・「異世界の飛行装置」
ヘルメット(通信機能付き)をかぶり、翼を抱えて飛ぶ(この世界にはない技術の)飛行装置を使って空を飛んだ。ナウシカのメーヴェが近いかも。
頬に受ける風の感触がやけにリアルだった。
・「昔の友人と危険なドライブ」
高校の友人に会う夢で、今夢を見ているのだとかすかに意識できた。
車を運転していてカーブを曲がり切れず落ちそうになり目が覚めたが、今度は何の夢を見るのだろうと思いながら再び寝た。
※無意識に、2度寝の際に夢を思い出そうとする「MILDテクニック」を試していた。
・「明晰夢まであと一歩」
2度寝する際、再びMILDテクニックを試していた。
まず手足の自由が効かなくなった。
次にまぶたの裏側に白や赤や緑などのいろいろな光が飛び交い、さまざまな光景がランダムに浮かんでは消えた。
最後に道路を走る車の音や自分の呼吸音が聞こえなくなった(だが意識はけっこうはっきりしていた)。
結局その日はそのまま眠ることができず、起床する時間まで起きていた。
明晰夢を見られる直前のような感じに思えたので惜しかった。5感のうちで睡眠時に最後まで残る感覚は聴覚なのかもしれない。
夢の内容として、
空を飛ぶ夢が3回(6.8%)。
1人称の夢(自分自身が体験する夢)が77.0%。
3人称の夢(映画やドラマを見ているような夢)は21.6%。
仕事関係の夢が14.9%。恋愛が8.1%。SFやサスペンスぽいのが18.9%。
悪夢(死のウイルスに感染したり高いところから落ちたり、命にかかわる夢)が2.7%。
昔の家族知人が登場する夢が17.6%。現在の家族知人が登場する夢が13.5%。
けっきょく完全にコントロールできた夢は1度もなかったが「明晰夢」っぽい夢は4回経験し、夢日記は意外にお手軽で効果的な方法だとわかった。
※ただしあまり義務的にとらわれすぎると睡眠不足になるのでご注意。
※夢日記をつけ忘れたら「仕方ない、また次の日試そう」ぐらいの気楽さがいい。
今回は、夢の世界の記憶を持ったまま目覚める方法として「夢日記」をご紹介した。
今ままで「過去へのタイムリープ」を実現するための方法を考察してきたが、「本当にこんなもので実現可能なのか?」と納得できない人もいるだろう。
私もまだ実際にタイムリープに成功していないので、「わからない」というのが正直なところだ。
また、タイムリープして元の世界に帰ってこられる保証もない。
これまでの考察は、あくまで「タイムリープ」とはどのようなもので、どのような仕組みならそれが説明可能かを考えた「仮説の1つ」としてとらえてほしい。
次回は、「タイムリープ入門」の最終回として、数年前に発表された実践的な「明晰夢のテクニック」を使って、実際に明晰夢を見ることに成功した体験記をご紹介する。