【思考実験:トロッコ問題】5人を助けるために1人を犠牲にしてもいい?

突然ですが、皆さんは「たくさんの人が助かるなら、ちょっとぐらいの犠牲は仕方ない」と思いますか?

多くの人を助けるために他の人を犠牲にしても良いのでしょうか。今回はそんな問題を考えるため、「トロッコ問題」という有名な思考実験を紹介します。

トロッコ問題とは?

トロッコ問題は、20世紀に哲学者として活躍した「フィリッパ・フット」が提起した思考実験です。

人間が問題解決のために、命を犠牲にしても良いのかという道徳的なジレンマを解決する問題として、現在でも議論が絶えません。

問1:トロッコ問題(スタンダード)

スタンダードなトロッコ問題は以下の通りです。

あなたは線路の作業員です。線路は、今あなたがいるところから2方向に分かれており、あなたのそばには切り替えスイッチがあります。

そのとき、線路の向こうからトロッコが猛スピードで走ってくるのに気づきました。

線路の先には5人の作業員がいて、トロッコに激突してしまいますが、あなたは側にあるスイッチを切り替えることでトロッコの軌道を変えることができます。

しかし、別方向の線路の先には1人の作業員がいるため、スイッチを切り替えてしまうとその1人が犠牲になってしまいます。

つまり、あなたがとれる行動は以下の2通り。

  • ①スイッチはそのまま。5人が死ぬ
  • ②スイッチを切り替える。1人が死ぬ

現実的には「大声で注意喚起し線路から避難させる」など、その他の方法も考えられますが、この実験ではこの2つの行動しかとれないとします。

5人死ぬよりも1人死ぬほうがマシ

この問題は、②と答える人が圧倒的に多いです。

多数派の意見としては、単純に「5人が死ぬよりも1人が死ぬ方がまだマシだから」というものです。

①と答えた少数派の「もともと、5人は死ぬ運命だった」と考え、「自分が運命に手を加えてはいけない」といいます。

問2:トロッコ問題(派生形)

トロッコ問題には、スタンダードなものから派生したものもあります。

あなたは同じく線路の作業員で、線路の真上にある橋に立っています。

すると、線路の向こうから暴走したトロッコが向かってきているのを確認します。そしてトロッコの向かう先には5人の作業員が。

あなたのすぐそばには太った作業員が立っています。この太った作業員を線路の上に突き落とせば、トロッコは止まります。

スタンダードな問題と同じく、あなたは2パターンの行動がとれます。

  • ①太った人を突き落とさない。線路の上の5人が死ぬ
  • ②太った人を突き落とす。太った人が死に、線路の上の5人は助かる

スタンダードな問題と比べ、行動の先の結果は同じですがどうでしょうか?

直接的な接触に抵抗を感じる

問2は問1と反対に、①を選択して5人を見殺しにするのが多数派です。

この問題、数字を結果的に見ればスタンダードな問1と一緒ですが、問1では「スイッチを切り替える」という行動で、犠牲となる人に物理的に接触することはありません。

一方で問2では、犠牲となる太った人に直接触れ、自身の手で線路に突き落とします。この過程に抵抗を感じる人が多いのです。

トロッコ問題、正解は?

ではこの問題、どちらを選べば良いのかというと、正解は出ていません。

正常な精神状態の人なら、人の死や人を殺すことに抵抗を感じます。しかし、それでも多くの人は多くの人を助ける選択肢を選びます。

しかし犠牲になる人との物理的な接触が生じると、途端に罪悪感や抵抗を感じて何もできず、5人を見殺しにしてしまいます。

多くの人は「1人が犠牲になっても5人が助かる方がマシだ!!」と思っていながら、太った人を橋から突き落とすことはできないのです。

条件を少しずつ変えてみると…?

この問題の条件を少しずつ変えて考えてみましょう。

例えば、この問題は作業員を数的に見ていました。5人の作業員はいずれも知らない人で、スイッチを切り替えた先にいる1人の作業員が、あなたの大切なひとだったらどうでしょうか。

この場合はスイッチを切り替えず、大切なひとを助けることを選ぶ人が多いのではないでしょうか。

また、問2の太った男性を家畜の豚に置き換えてみるとどうでしょう。かわいそうな気もしますが家畜はいずれ人間によって殺されるのですから、突き落とすと答える人は増えそうですね。

このように、元の問題から様々に派生して考えることができるのもトロッコ問題の特徴です。

まとめ

道徳の授業で「命の重さは皆同じ」と習ったことがある人も多いのではないでしょうか。スタンダードなトロッコ問題で「1人を犠牲にして5人を助ける」と答えた人は、この考え方にならっているとも考えられます。

しかし、実際にはその1人が大切な人である場合があり、あなたにとって「命の重み」が違ってくるのも事実です。

この機会に、皆さんもぜひこの問題についてじっくり考えてみてくださいね。

オカルトオンライン編集部

オカルトオンライン編集部一同です。 私たちの存在が一番のオカルトかもしれません。