世界の七不思議に数えられる建築物の多くは古代ローマ帝国の影響を受けていると言われていますが
現在のトルコ南西にあるボドロムという都市に残されているマウソロス霊廟はペルシャ帝国の時代に造られたと言われています。
古代ペルシャ帝国はアケメネス朝とも呼ばれ広大な範囲に拡がっていました。紀元前330年にアレクサンドロス大王によって滅ぼされる以前は、ペルシャ帝国が世界の覇権を握っていたのです。
そんな広大なペルシャ帝国支配下にあったカリア国の王であるマウソロスが首都としていたのがハリカルナッソスであり、現在のボドロムでした。
この霊廟はマウソロス王が亡くなった後に、女王アルテミシアによって夫であり兄でもあったマウソロスを納めるために建造されたものです。
画像引用元:マウソロス霊廟
近年の研究によって推定されているマウソロス霊廟の完成は紀元前353年~紀元前350年であったという説があります。
現在残っているマウソロス霊廟遺跡には、いくつかの円柱の石材や瓦礫、基礎になったと考えられる部分しかなく、その姿を見ることは出来ませんが
建設された当時は、なんと高さ約45メートルにもなる巨大なものだったそうです。
この巨大な霊廟の建設に関わったのはギリシャの一流の建築家達であったとも言われています。
霊廟には豪華な装飾が施されており、ここでも古代ギリシャ人の建築技術が評価されていました。
マウソロス王はペルシャの支配下にありながら周辺の国も支配下におき、後にペルシャへの大反乱として呼ばれる「サトラップの大反乱」の中心人物であったともされています。
マウソロスは存命中にギリシャ語を話したりもしていたことから、既にギリシャとの交流を持っていたのです。要塞化したハリカルナッソスは強固な首都になっていたようですが、霊廟が完成した前後に原因は分かっていませんが、マウソロス王は亡くなり、その後の統治権を得たアルテミシア女王の主導によって完成されたのです。
この霊廟を後世に伝えたのは大プリニウスでした。
しかし、現在でも倒壊してしまった時期はハッキリとしておらず「地震説」や「戦争説」などが考えられています。
実は、このマウソロス霊廟は倒壊時期は分かっていないものの、霊廟を燃やされた記録が残っています。
11世紀ころから始まった宗教騎士団の1種である聖ヨハネ騎士団という集団がいました。いわゆるキリスト教による十字軍です。
この聖ヨハネ騎士団がマウソロス霊廟に足を踏み入れたのが、およそ15世紀頃、一説によれば1522年だとも言われていますが、マウソロス霊廟に使われていた大理石を燃やしてモルタルなどにし、ボドロムに築いていた城を要塞にする材料に、多くの遺跡を破壊したとされています。
マウソロス霊廟はお墓でもあったことから、マウソロスだけではなく、マウソロスの死後、数年で亡くなったと言われるアルテミシア女王も同じ霊廟に安置されていたんのです。
しかし、墓室に侵入した十字軍によって全てのものが略奪されてしまい、記録などもほとんど残っていない状態にされます。
その後、19世紀や20世紀に入って発掘調査が行われたところ、1857年の発掘で、現在は大英博物館にある霊廟の北で見つかった彫造が発見されました。
この彫造はマウソロス王とアルテミシア女王のものと推測されていますが、ハッキリとした確証には至っていないそうです。
同じく大英博物館にはマウソロス霊廟から見つかったレリーフなども残されています。
画像引用元:マウソロス霊廟
実は19世紀に入ってから、マウソロス霊廟の調査には主にイギリスが関わっていました。
大英博物館から派遣されたのは考古学者のチャールズ・トーマス・ニュートンという人物であり、彼がこの遺跡発掘のために現地の住民などと交渉した結果、いわゆる墓室などが発見されることになったのです。
また、15世紀当時の十字軍がこの霊廟から持ち去ったと思われる一部の遺物や、この後年の調査で発見されたものなども合わせて大英博物館が管理保管している状態にあります。
大プリニウスの説によると、夫であったマウソロスを弔うために霊廟建造の主導を取った女王アルテミシアも、完成前に亡くなり、その後はギリシャ人達が自身の名誉になるという考えで完成させたとも言われています。
道徳的には首を傾げるところですが、指揮を取っていた人物が亡くなってでも完成させようとしたとう事は、当時一流と呼ばれていたギリシャ人彫刻家達にとっても、相当にスケールの大きい仕事だと感じたのではないでしょうか?
現在でも実際の姿はハッキリと裏付けられる史料はありませんが、高さ約45メートルと豪華な装飾の施されたマウソロス霊廟は彫刻が非常に評価されていたとも伝えられています。
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