前編では「ファティマの奇跡」と呼ばれた一連の出来事について大まかに紹介してきたが、この逸話には他にも沢山のエピソードがある。
もちろん、ファティマの予言自体が充分に大きな出来事ではあったのだが、この予言の後にも奇跡と呼ばれている現象が起こっている。
今回はポルトガルの小さな街で起こったファティマの奇跡が”どうしてここまで大きな騒動になったのか?”ということについてエピソードを交えながら紹介していこう。
ファティマに現れた聖母は最初に3人の子どもたちに「毎月13日に会いに来てほしい」というお願いをしている。
これは1917年5月13日に初めて聖母マリアと対峙した時の話である。しかし、この毎月13日という約束には邪魔が入った。
同年の7月13日にファティマの予言を受けた時の群衆は5000人ほど居たとされている。
流れとしては、3人が予言を受けてそれを両親達に伝えるのが毎月の恒例になっていたようだが、小さな街に大勢の参拝者が訪れ始めると治安的な問題もあったのだろう。
この事態を重くみた当時の行政の責任者が毎月の予定であった8月13日の朝にルシア、フランシスコ、ジャシンタの3人を監禁している。15日には解放されたが、当時のファティマでどの程度この問題が注視されていたのかが分かる出来事の1つだ。
結果的に予言を与えられてから1ヶ月経った8月13日に3人はマリアとの約束を果たすことが出来なかった。
※8月13日には2万人近い数の人々がファティマに訪れていたとされている※
しかし、この監禁行為が引き金になったのか8月19日にマリアが現れて以下のような言葉を残したという。
『もし人々があなたたちを無理やり町へ連れ出したりしなかったなら、奇跡はもっと壮大なものとなったでしょう。あなたたちは、聖ヨセフと、人々を祝福する幼子イエスと、”ロザリオの聖母”と”苦しみの聖母”を見るでしょう。』
出典:ダニエル・レジュ; 梶野修平訳 『第3の予言: UFOからの警告・ファティマ』 たま出版
この言葉が示す正確な意味は分からないが、おそらくルシア達が行政責任者によって邪魔をされていなければ、もっと大きな奇跡が起こったという意味に解釈が出来るのではないだろうか?
そして、9月13日にはついに3万人もの群衆が集まり
翌月10月13日には7万人とも言われる群衆の中でその奇跡は起こった。
画像引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E3%81%AE%E5%A5%87%E8%B7%A1
1917年の5月13日からルシアたちの3人は聖母マリアに会ったことを親や周囲のカトリック教徒に事細かく伝えていたという。
その中に、10月13日には皆がこの聖母を信じられるようにと奇跡を起こすという予言もあったのだ。
最初の出現から僅か5ヶ月後の同日、半径50キロメートルという広範囲な場所で目撃されたのが「太陽の奇跡」と呼ばれるものだった。
集まった群衆の前で、太陽が縦横無尽に動いたり、ある者は様々な色に見えたという。
この奇跡を見た群衆の中には神学校の教授であったり、弁護士など職種を問わずにカトリック教徒が多数いたとされる。また、18キロ離れた場所では後に神父となる少年がこの太陽の動きを見ていたという証言もある。
天体的な影響は実際には確認されていないという事だが、子どもたちが見た天使も後の幻視であったという事を本人が自覚しているように、少なくとも大勢の群衆がこの「太陽の奇跡」を目の当たりにしているのだ。
前編で紹介したように、フランシスコとジャシンタは10歳、9歳という若さで亡くなってしまったが、後年聖人としてその名前をカトリック教会に広めることになった。
先に亡くなってしまった兄妹でも特に妹のジャシンタは多くの逸話を残している。
ルシアの伝記によると、死の直前の予言だけではなく私的啓示と呼ばれるものを多く受けていたという。
さらに、ジャシンタの遺体は1935年と1951年に合計で2度掘り返されたが、顔に一切の腐敗がなかったという。
2017年の5月13日にヨハネ・パウロ2世によって正式に聖列者とされることが決められた。そのため、現在では聖ジャシンタ・マルトとして扱われている。
ルシアは3人の中でマリアに告げられた通り天命を全うし、97歳という高齢で心不全によって亡くなった。
ファティマの奇跡の騒動が起こった後は、ロザリオの聖母と名乗った聖母マリアの言いつけを生涯守り、ドロテア修道会に入りシスターになる。
ファティマの予言を直接受けた唯一の生き残りであった彼女は伝記や回顧録などを残しているが、フランシスコとジャシンタを列福したローマ教皇であるヨハネ・パウロ2世とも晩年には会っている。
ファティマの奇跡の伝道者となった彼女は、いちシスターでしかなかったものの、生前はもちろん、現在でもカトリック教会において絶大な影響力を持っているという。