「ウィトルウィウス的人体図」
と聞いてパッと図が思いつく人は、なかなかの知識をお持ちですね。
そうでない人も、絵を見れば一発でそれと分かります。
ウィトルウィウス的人体図は様々な芸術家が描いていますが、最も有名なものが、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたもの。
それが、こちら。
既視感ありますよね。
「円と正方形の中に両手両足を広げた人が入っている絵」といえば、まず誰もがこれを思い浮かべるでしょう。
それくらい、未だに人体を象徴する絵であり続けています。
さて、このウィトルウィウス的人体図について、
「一体何が凄いの?」
というお話。
「円の中に人がいるから、何なの?」
という感じですよね(笑)。
この絵の凄さを知るには、ダ・ヴィンチが生きた時代にまで遡る必要があります。
ウィトルウィウス的人体図について、
この疑問にお答えしていきます。
いきなり結論です。
ウィトルウィウス的人体図は、「宇宙の中心は人間である」ことを証明しています。
はい。
わけが分かりませんね(笑)。
実際の人体図から、この「宇宙の中心は人間である」を見ていきましょう。
ウィトルウィウス的人体図とは、「人体は数学的に比例している」ことを説明する図です。
このように、体にはいろんな比例が見つかることを示しています。
今では「モデルは皆顔が小さい」と分かってますから、この法則が当てはまらないと誰もが分かりますけどね(笑)。
しかし当時、これをもとに作られたウィトルウィウス的人体図は、天地がひっくり返るほど革新的だったのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチが生きた時代、
を示す象徴であり、これら2つが合わさることで「宇宙」を表していました。
そして、ウィトルウィウス的人体図に描かれる人間は、真円にも正方形にも完璧に内接し、2つの象徴の中心に完璧な比率で存在しています。
つまり「宇宙の中心に人間がいる」ということを、この人体図たった一枚が証明しているのです。
実は、この考えは古代ローマ時代からあり、
素早く美しく作るため、実用的に使われていました。
人体の比率を哲学的に捉える人は、ダ・ヴィンチを除いて誰一人いなかったのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチが生きた時代は、「宇宙の中心には神がいる」という考えが常識でした。
それこそ「地球は丸い」ということくらい、誰もが信じて疑わないことでした。
地球は本当に丸いのか、実際に見た人はほとんどいないのに…。
この地球と同じように、
「神は見たこと無いけど、宇宙の中心は神でしょ」
という考えも、常識中の常識だったのです。
今の時代に、
「地球は平らで、端っこに行くと落ちちゃうんだよ」
って言っても、誰も信じませんよね(笑)。
同じく、ダ・ヴィンチの時代に「世界の中心は人間なんだよ」って言っても、誰も信じてくれません。
だから、ダ・ヴィンチが描いたウィトルウィウス的人体図は公に出ず、この考えが受け入れられるまで「手稿」というメモにずっと描き残されたままでした。
実はこの「人間が世界の中心説」は、ダ・ヴィンチ以前から囁かれていました。
しかしそれまでは、論文やら哲学者の主張やらで主観的に語られ、誰もが認められる説ではありませんでした。
その説を、ダ・ヴィンチは誰が見ても「宇宙の中心は人間である」と一発で分かるよう、たった一枚の絵に表現してしまったのです。
それまでの空想的な説を具体化して、誰もが認める形にしてしまったのです。
「地球は丸い」と主張する人を宇宙に連れて行って、本当は平らだった地球を見せつけるようなものです。
これほどに、この人体図は天地がひっくり返るほど強烈なものだったのです。
ダ・ヴィンチといえば、
のような「絵画」が有名ですよね。
この絵画がこれほど有名である理由の1つは、ダ・ヴィンチが人間を徹底的に観察していたから。
人間を完璧に描くには、骨格、筋肉、皮膚、表情、その他人体のすべてを知る必要がありますよね。
ダ・ヴィンチは、自身で人体解剖まで行い、人間について外からも中からも徹底的に観察し、記録していました。
そしてたどり着いた到達点が「人体の黄金比率」であり、「宇宙の中心は人間である」という概念です。
画家でありながら、常識を覆す哲学をも生み出してしまうのが、レオナルド・ダ・ヴィンチの凄さ。
そしてその凄さを端的に表している絵が、ウィトルウィウス的人体図なのです。
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