かつてCIAによって主導された洗脳実験『MKウルトラ計画』とは -前編-

私たち人間は”理性の生きもの”です。人間が本来的に備えるこの理性によって、私たちの生きる世界では一定の秩序が保たれています。
しかしそんな理性を司る私たちの脳は、いとも簡単に誤作動を起こし、暴走してしまうものなのです。

「洗脳」
-brainwashing-
:支配を目的として、強制力を用いてある人の思想や思考を変えること

今回は、かつて実際に行われた極秘の洗脳実験を解説します。CIAが主導したとされるその実験の実態とはいかに。

極秘の洗脳実験『MKウルトラ計画』とは

『MKウルトラ計画』

どこか不穏な印象をまとったこの名称は、かつてCIA(中央情報局)がタビストック人間関係研究所と極秘裏に実施していた洗脳実験のコードネームです。ちなみにこの”MK”とは、被験者(被害者)の名前に由来しています。

タビストック人間関係研究所

1922年、ロンドンで設立された研究機関。ロックフェラーと深い関りがあり、かねてからCIAと協力関係にあった組織。
表向きは人間管理や心理学などの研究所であるが、実質的にはロックフェラーをはじめとしたイギリス支配階級のための国際諜報機関。
現在に至るまで数多くの大衆洗脳工作に関与しているといわれ、その最終目標は「大衆プロパガンダ」や「完全な人間心理のコントロール」。目的達成のためには反社会的な手段も辞さないとされる。

ロックフェラー:アメリカの名門一族。「世界2大財閥」の一つであり、陰謀論と結びついたさまざまな噂に事欠かない。

『MKウルトラ計画』の誕生

現在休戦中である朝鮮戦争(2020年4月現在)。未だこれが戦闘状態であった1953年当時、中国による米軍捕虜たちの洗脳が注目されていました。
そんな時代背景の中、同年にちょうどCIA長官に就任したばかりであったアレン・ウェルシュ・ダレスによって、この『MKウルトラ計画』が始動。それからさまざまな非人道的ともいえる人体実験が行われることに。

冷戦下にあった1964年、『MKウルトラ計画』は「MKサーチ」と改名されます。これは憶測ではありますが、この洗脳実験を極秘裏におこなっていたCIA側が、このときその発覚を予見していた可能性が考えられます。それを裏付けるように、それから数年してこの極秘実験の存在が発覚することになります。
これで知られざる実験の実態が明るみになるかと思いきや、それを恐れた時のCIA長官リチャード・ヘルムズが関連文書を破棄し証拠を隠滅。結果的にこの実験が行われていたという事実は闇に葬られます。しかしながら、辛うじて残されていた数枚の文書が発見され、1975年にその内容がアメリカ連邦議会において公開されたのです。

これからご紹介するのは、極秘の洗脳実験『MKウルトラ計画』に関するごく僅かな情報です。

実験の内容

先述のとおり、計画の記録のほとんどが破棄されてしまったため、その実験の全貌は解明されていません。こうした中、数少ない情報から明らかになったのは、残忍ともいえるその実験内容でした。

明らかになったその実験内容


『MKウルトラ計画』において、実験にはLSD(麻薬)をはじめとした薬物が利用されていたことが分かっています。薬物をさまざまな方法で被験者に投与し、これにより被験者がどのような行動に及ぶのかを観察したのです。尚、こうしたこの薬物の投与は被験者の同意なしに行われました。

77日間連続でLSDを投与したり、過剰な投薬により被験者を昏睡状態にすることもありました。ほかにも、”実戦”を想定した事前予行的なことも行われていたことが分かっています。それはさながらスパイ映画のような内容でした。

-売春婦を使ってターゲットを誘惑。その上でLSDを混入した飲料を飲ませた。さらにその後の様子を盗聴。その結果、このときターゲットであったギャングのリーダーは自身が犯した犯罪に留まらず、自身の組織が犯した重大な犯罪(殺人や詐欺など)についても話した-

こうした事実から、かつてCIAは麻薬によって自白を引き出す手法の確立を目論んでいたことが窺えます。

LSD

幻覚剤の一種。日本においては1970年、これを麻薬に指定。
ごく微量の摂取でも効果が現れるという特徴を持つ。その効果は摂取量だけでなく、それまでの摂取経験や精神状態、摂取時の環境により大きく変化する。
その一般的な効果は、「感覚」や「感情」、「記憶」、「時間」が拡張・変化する体験をもたらす。これらは摂取量や耐性によって左右されるが、概ね6~14時間ほど継続する。

CIAでは、スパイ容疑者などに自白させるため、対象に自白剤を投与していたといわれています。体のよいこの「自白剤」という名称ですが、実際のところこれはLSDをはじめとした麻薬でした。

こうした薬物による実験以外にも、

  • 通常の30~40倍の強さの電気ショックを与える
  • 被験者の睡眠を数日間断った上で、メッセージ音声を繰り返し聴かせ続ける
  • 超音波を利用して記憶を消去する

といった実験も行われていたことが分かっています。

尚、この『MKウルトラ計画』には実に54種にも及ぶ「サブ計画」が存在していたといわれています。こうした事実から、その闇の深さが計り知れないことは誰の目からみても明らかでしょう。


この続きは、『MKウルトラ計画』の更なる闇に迫る【後編】にて。

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