最近、アメリカの都市伝説や陰謀論で話題の「Qアノン」を知っていますか?
アメリカのトランプ大統領の集会で、最近「Q」というプラカードや、Qと印字されたTシャツを着た人々をたびたび目にします。
さらにネット上では、Qアノンと名乗る者たちが「ヒラリー・クリントンやオバマ前大統領は小児性愛者。トランプ大統領はそんな異常者を一掃しようとしている」という陰謀論めいたアジをしているのですが……その中には、実際に政府中枢にコンタクトできる人物でないと知り得ない情報も含まれているといいます。
Qアノンの語った内容によれば、暗殺されたはずのケネディ・ジュニアは生きていて、盟友であるトランプ大統領を支持しているとか……。
アメリカの都市伝説・陰謀論で話題のQアノンとはなんなのか? 今回はQアノンの正体を追求します。
アメリカの都市伝説・陰謀論で話題のQアノンとは?正体は?
画像引用元:NBC News
2018年頃から、アメリカのトランプ大統領の集会に、「Q」もしくは「We are Q」と書かれたTシャツを着たトランプ支持者が多く見られるようになりました。中には、「Q」の文字を切り抜いたプラカードを掲げる者もいます。
彼らは「Qアノン」のフォロワー(支持者)です。
Qアノンやその支持者は、皆口をそろえて次のように語っています。
「ヒラリー・クリントンやオバマ前大統領は小児性愛者。トランプ大統領はそんな異常者を一掃しようとしている」
「北朝鮮の金正恩はCIAに支配されていたが、トランプ大統領が解放した」
「アメリカは現在『ディープ・ステート(闇の政府)』に支配されている。トランプ大統領はそれら巨悪と戦う救世主である!」
Qアノンとは、アメリカの匿名掲示板「4chan」と「8chan」で、2017年10月28日から投稿を続けている人物(組織?)を指します。
「アノン」はanonymous(匿名)の略で、「Q」は米エネルギー省のトップシークレットへのアクセス権限である「Qクリアランス」に由来するとされています。
Qクリアランス(権限)を持つ者には、ペンタゴン(国防総省)の軍事情報へのアクセス権が与えられ、核兵器に関する最高機密情報を知ることすらも可能だといいます。
匿名掲示板での「Qアノン」の発言には、実際に政府中枢の人物でなければ知り得ない情報が含まれていました。ですから「Qアノン」の投稿は、米エネルギー省高官のリークだろうとネットで話題になったのです。
しかしそのQアノンが、まるで陰謀論や都市伝説めいた内容を語り、トランプ大統領を苛烈に支持。そんなQアノンの発言に共感した人々が、最近集会で姿を現すようになったQアノンフォロワーです。
【Qアノン】ケネディ・ジュニアは生きている?トランプ大統領の盟友?
第35代米大統領ジョン・F・ケネディの長男(ジョン・F・ケネディ・ジュニア)は、1999年7月の飛行機事故でこの世を去りました。
Qアノンの語った内容によれば、「トランプ大統領とケネディ・ジュニアは盟友(幼馴染)で、トランプは彼との約束を果たすために大統領になった」とか。
さらにその死は事故ではなく、陰謀だといいます。ケネディ・ジュニアはヒラリー・クリントンの政治的キャリアを作るために暗殺されたというのです。
それだけではありません。実は死んだはずのケネディ・ジュニアはまだ生きていて、今はトランプ米大統領の熱烈な支持者だといいます。
そしてトランプ大統領の集会に参加している常連の、ヴィンセント・ファスカという男の正体こそ、隠棲しているケネディ・ジュニアだとか……。
いかにもな陰謀論、都市伝説といった触れ込みですが、恐ろしいのはこのQアノンの発言を信じているアメリカ人が多くおり、トランプ大統領を崇拝し、その政権の支持団体となっているという事実です。
なぜQアノンの陰謀論や都市伝説がアメリカで支持されるのか?
なぜアメリカ人の多くが都市伝説や陰謀論めいたQアノンの発言を信用し、トランプ大統領を支持してしまうのでしょうか。
2015年、連邦下院議長まで務めた共和党の議員デニス・ハスタート氏が、レスリングの生徒に性的虐待を行っていたことが発覚。この事件以降、党派に関係なく、「政治家は小児性犯罪者だ」というイメージがつくようになり、やがて「ヒラリー・クリントンやオバマ前大統領は小児性愛者らと結びついている」というデマが生まれました。
しかし一番の原因は、当のトランプ大統領が陰謀論や都市伝説を巧みに操り、自らの支持率を高めていることにあるでしょう。
トランプ大統領はSNSでたびたび「報道の裏には、常にメディアの陰謀・策略がある」と発言し、不都合な事実を「フェイクニュース」だとねじ伏せてきました。
実際に世論調査会社ギャラップの調査によれば、アメリカ国民の62%が「新聞、テレビ、ラジオの報道は偏向している」、44%が「不正確である」と回答しています(2018年6月20日発表)。
アメリカのマイノリティというと、一番に黒人が思い浮かびますが、実は人口比率から見ると白人はマイノリティーに転落しつつあります。2018年の選挙で上下院の候補者は約1000人でしたが、白人男性候補数が半数を割っていました。これはアメリカ史上初の事態で、白人社会には動揺が走ったといいます。
地位が脅かされることを危惧する白人の一部は、Qアノンを熱狂的に支持・拡散します。そして貧困層といった社会的弱者は、そういった陰謀論に救いを求めてしまいがち……。
Qアノン及びトランプ支持者に、「不法移民が職を奪っている」という信念を持つ人が多いのはそのためです。
そしてトランプ大統領は、Qアノンを巧みに利用します。
トランプ大統領はTwitterでたびたび「17」を含む意味深なツイートを投稿。Qはアルファベットの17番目ですから、支持者はこれをトランプ大統領からQアノンへのサインだと夢中になっているのです。
2020年5月現在、新型コロナウイルスの流行でアメリカ社会に再び白人と黒人の激しい対立が生じています。
地球最大の国家、アメリカの未来はどうなってしまうのでしょうか……。
参考:現代ビジネス