破傷風菌…震える舌…聞いたことがありますか?破傷風菌は、ご存知の方も多いでしょう。感染症を引き起こす細菌です。そして、震える舌は三木卓が1975年に発表した小説とそれを元にして制作された映画です。
震える舌のあらすじ
震える舌は1980年に公開された日本の映画です。主人公の昌子は、どろんこ遊びをするわけですが、このどろんこ遊びの途中で古い釘で怪我をしてしまいます。そして、これが原因で破傷風菌に感染してしまいます。
怪我から数日後に昌子の様子がおかしかったので、両親は病院につれていくわけですが最初は取り合ってももらえない…でも、どんどん様子がおかしくなって、自分の舌を噛み始めたので、両親は昌子を大学病院に連れていきます。そして、そこで「破傷風菌に感染している」ことが解るのです。
そして、隔離された生活が始まるわけですが、破傷風菌に犯されている昌子もそして、両親もどんどん心を病んでいきます。
映画では、最後には昌子は回復してチョコパンをねだるようになります。
この映画は病気になった少女とその両親、そして、舞台は病院ですが医療映画ではなくホラー映画…恐怖映画として作成されたそうです。
参考資料 シネマトゥデイ
破傷風菌の恐ろしさ…ただの風邪とは次元が違う
破傷風菌と聞くと「やばい菌だ」ということは医療や細菌に詳しくない人でもなんとなく解りますよね。
破傷風菌は、クロストリジウム属の細菌で毒素がとても強く「世界最強の毒素」を持っていると言われています。破傷風菌の毒素はテタヌストキシンと呼ばれる神経毒と、テタノリジンと呼ばれる溶血毒※1で、毒素は神経筋接合部から神経終末膜を介して神経内に取り込まれます。そして、脊髄前角に到達して細胞膜を通過し脳にまで達すると言われています。※2
※1 引用 松田守弘、破傷風毒素 日本細菌学雑誌 1979年 34巻 4号 p.631-665, doi:10.3412/jsb.34.631
※2 引用・参考 Wikipedia
震える舌でも破傷風菌に犯される昌子が、自分の舌を髪切って叫び声を上げ破傷風菌の毒に犯されたことが原因で筋肉発作で身体を反り返らせる様がリアルに描かれています。映画の場合は、女優さんの迫真の演技ですが、このような症状は破傷風菌に感染すると現実になるのです。破傷風菌は、地球上で数億年にもわたって生き残ってきた細菌で、感染すると中枢神経を犯していきます。発症してしまうと生存率はとても低く、患者さんはわずかな光や音にも反応して発作を引き起こしてしまいます。
細菌感染というと、風邪や食中毒を連想しますが、破傷風菌は人間の神経を犯していくのです。
破傷風菌は今も地球上に…私たちのすぐ近くに存在している
恐ろしい神経毒を作り出す破傷風菌ですが、今も破傷風菌は私たちのすぐそばに生息しています。破傷風菌は、土壌に生息していると言われており、動物の腸の中や糞にも生息しています。
ガーデニングをしていてちょっと手を切ってしまった…とか、校庭でスポーツをしていて転んだとか、山登りをしていてすりむいたとか、そういう日常の中のほんの些細な傷から破傷風菌が身体の中に侵入することがあるのです。
複雑で深い傷のほうがそのリスクが高く、患部の発赤や腫れ、疼痛がある場合には破傷風菌が疑われます。破傷風菌はほんの少しの菌でも感染することがあり、発症すると極めて強い神経毒が身体を蝕んでいきます。
参考資料 一般社団法人 日本血液製剤機構
つまり、ただの映画の中の話ではなく破傷風菌の感染は私たちの誰にでも可能性がある日常に潜む恐怖なのです。
目に見えないものに犯される恐怖
破傷風菌は細菌です。そして大きさは0.3〜0.6μm × 3〜6μmですから、当然、目視ではまったく見えません。目に見えないけど土壌や動物の糞の中に生息している…もしかしたら、あなたが今日、靴で踏んできた土の中にも破傷風菌がいるかもしれないのです。
破傷風菌もそして、破傷風菌が作り出す毒素も目で見ることはできません。ですが、感染すると中枢神経を犯して、まるで狂ったように叫んだり自分を傷つけたり…そして、致死率も極めて高いのです。
感染した人だけでなく、震える舌で描かれていたように、家族が心をやんでしまうケースもあるでしょう。神経を犯される恐怖…そして、患者もその周りもどんどん病んでいく様はまさに恐怖そのもの。そして、そんな恐怖が私たちの誰にでもリスクとして常につきまとっているんです。
まとめ
震える舌と破傷風菌…決して目視できない小さな生き物ですが、ひとたびその毒に犯されると私たちは命を落としてしまう事にもなるのです。
神経を犯されて自分で自分をコントロールできなくなる…周りの家族も病んでいく…。破傷風菌もそして、神経を犯されることもとんでもない恐怖です。
映画、震える舌は、主演を務めた若命真裕子さんの迫真の演技と、それを支える俳優陣も、、渡瀬恒彦、十朱幸代、宇野重吉と豪華なキャストが勤めていることもあり素晴らしい映画です。新しい恐怖を味わいたいのなら…見てみてください。。
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