リヒャルトゾルゲというスパイが第二次世界大戦に時に日本で活動していたことは、大東亜戦争の真実~リヒャルト・ゾルゲ 第二次大戦の伝説のスパイ~でご紹介しました。
リヒャルトゾルゲというスパイが日本国内で活動し、日本軍がソ連に侵攻しないことを突き止めて本国に情報を送ったこと、そして、その結果、旧ソ連はある意味において、大東亜戦争の勝者となったこと…。
国を救う諜報活動を成功させたリヒャルトゾルゲは、その後、日本で逮捕され1944年のロシア革命記念日、11月7日に巣鴨拘置所で死刑が執行されました。
こうやって読んて行くと、なんというかとても恐ろしい人間のようにも思えますが、実は、リヒャルトゾルゲには日本人の恋人がいたのです。伝説のスパイと呼ばれるリヒャルトゾルゲのことですから、日本人女性とお付き合いすることも、諜報活動のひとつだったのかもしれません。
リヒャルトゾルゲの彼女「石井花子」とはどんな人物だったのか、そして、そこから垣間見ることができるゾルゲの人となりを少し覗いてみましょう。
画像:Pixaboy
「リヒャルトゾルゲの妻」とか「リヒャルトゾルゲが愛した日本人女性」といわれることが多い、石井花子さんは、明治44年に岡山県に生を受けました。実家は地主だったそうで、22歳で上京します。そして、レストランでウェートレスをしているときに、ゾルゲと知り合うことになりました。
リヒャルトゾルゲは、諜報活動の末、逮捕され死刑になりますが、石井花子さんは取調をうけたものの罰せられることはなく、2000年に亡くなるまで生涯独身を貫いきました。
リヒャルトゾルゲの遺体は、死刑執行後しばらくの間、拘置所内に埋葬されていました。実は、リヒャルトゾルゲは日本では諜報活動をしたスパイですが、旧ソ連からのは二重スパイの疑いをかけられていたたのです。そのため、死刑執行後も本国は遺体の受け取りを拒否していました。
引き取り手がなかったゾルゲの遺体は、雑司ヶ谷霊園に土葬されるのですが、石井花子さんがこの事実を知ったのは戦争が終わった後でした。そして、石井花子さんは様々な方の協力を得て、ゾルゲの遺骨を探すことに…。そして、ゾルゲが使用してたメガネや足にキズ跡がある遺骨を発見するにいたりました。石井花子さんは、今、ゾルゲの妻として同じお墓で眠っています。
生涯独身を貫いたこと、そして、戦後、ゾルゲの遺体を捜索したことなどから見ても、石井花子さんにとってリヒャルトゾルゲは伝説のスパイではなく、愛しい恋人であり、自分の夫だったのでしょう。
ちなみに、ゾルゲに石井花子さん以外にもたくさんの女性を親しくしていたことが明るみに出たそうですが、それでも石井花子さんは89歳で亡くなるまで再婚することなくゾルゲに添い遂げたのです。
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参考資料:歴史が眠る多磨霊園 石井花子
みすず書房編集部編『ゾルゲの見た日本』みすず書房
画像:Pixaboy
スパイ容疑でリヒャルトゾルゲが逮捕されたとなると、当然、親しい人間にも疑いがかかります。
石井花子さんも当時、取り調べは受けたそうですが、罪に問われることはありませんでした。それはなぜなのでしょうか…。スパイとともに生活をしていたとなれば、蔵匿や隠避などの容疑がかかっても顔しくないのですが、取り調べだけで処罰はされませんでした。
実は、ゾルゲは「日本はソ連に侵攻しない」という内容の情報を送った後に逮捕された際に、自分に関わった日本人を守るために司法取引をしたと言われています。
ゾルゲは、スパイですが実に活動的で社交的な人物だったそうで友人や知人も多かったんだとか。そして、自分の逮捕後に関係者に迷惑がからないように「自分は刑を受けるので他の人は助けて欲しい」と懇願したとされています。そして、その中でもリヒャルトゾゲが最も守りたかった人物が石井花子さんだったのです。
参考資料:ゾルゲが恋人と眠る多磨霊園:伝説のスパイの足跡を訪ねて
日本では犯罪者のゾルゲですが、旧ソ連にとっては優秀なスパイでした。
ですが、二重スパイの疑いをかけられたゾルゲは遺体も本国に引き取られないままだったわけです。ですが、スターリンの死後1964年、ゾルゲは「ソ連邦英雄勲章」を贈られています。そもそも旧ソ連は諜報活動やスパイの存在を隠していたのですが、ようやくその存在が認められたのです。
ちなみに、ゾルゲは「ソ連と日独の戦争を防ぐために尽くした英雄」として知られています。日本にとっては、とんでもないことをしてくれたスパイともいえるわけですが本国では英雄です。
参考資料:Wikipedia
リヒャルトゾルゲが愛した女性…石井花子さんはゾルゲの死後も生涯独身を貫いて2000年に89歳でこの世を去りました。今は、ゾルゲの妻として同じお墓で眠っています。
リヒャルトゾルゲは、伝説のスパイとして知られる人物ですが、自らの逮捕後に周囲にいた日本人…とくに石井花子さんを守るために司法取引に近いことをした人物でもあります。そして、旧ソ連はスパイの存在をいばらく認めず、遺体の受け取りもしませんでした。
大東亜戦争の勝者ともいえる旧ソ連ですが、その勝利に貢献した人物の功績はスターリンが亡くなった後まで、隠されていたのです。