昔から人間の理解を超え、奇怪かつ異常な現象を起こしてきた妖怪。
そう聞くと、「海坊主」「大百足」「玉藻前」のような恐ろしく、壮大なものをイメージするだろう。
だが、この世に存在する妖怪が全てさっきの例のように強く、恐ろしいものではない。
中には 「お前、それでいいのか」 「えっ、それだけなの?」 と言いたくなるような、やることがしょぼい妖怪もいるのだ。
今回はその中でも選りすぐりのしょぼい妖怪3選を紹介したいと思う。
長い胴体に蟹のような手、そして鳥のような頭をしている妖怪。
これだけ見るとなんだか強そうだが、この妖怪が何をしてくるのかというと、なんと 「蚊帳、漁網などの網を切り裂く」 だけなのである。
ちょっと想像してみてほしい。
大きなハサミ、ギョロリとした目、鋭い嘴の凶暴そうな妖怪がこっそり民家に忍び込んで網を切り裂きいそいそと帰っていくのだ。最早その姿には可愛らしささえ覚える。
まさに「しょぼい」と言うに足りる妖怪だろう。
そして更に面白いのがこの網切の伝承だ。
どんなものかというと、 ある夏、ある所の漁村が漁網を天日干ししていた所に網切が出て、干されていた漁網をズタズタに引き裂いてしまった。
網切はその日から何度も漁網を引き裂きに来るようになったので、ある日村の者が「漁網を家の中に隠す」という措置を取った。
するとその日はいつまで経っても流石に網切は来なかったので、村民達は一安心し「よし、これでもう大丈夫だ」と床に就いたが、網切は漁網の代わりに村中の蚊帳を切り裂いて回っていたため、村民達は皆仲良く蚊に刺されてしまった。 という話だ。
なんだろう、全体的にゆるくて、まるで四コマ漫画のような面白い伝承ではないだろうか?
この後、村民がかゆい思いをしながら漁網を編み直しているのが目に浮かぶようだ。
鋭いハサミにいかつい顔の可愛らしいイタズラ好き「網切」。
あなたの家の網戸が破れていたら、それは網切の仕業かもしれない。
明確な姿はわかっていないが、「犬、猫のような姿をしている」と言われている妖怪。
イメージとしては「犬や猫のような四足歩行の動物」を思い浮かべてくれれば問題ないだろう。 さて、気になるこの妖怪のやる事だが、この妖怪は 「夜道を歩いている人の足の間を擦りながら通り抜ける」のである。 つまり、夜道で突然足元をくぐり抜けて行く犬のような猫のような姿をした妖怪なのだ。
もはや危害すら加えてきていない。
いや、これはもはや「しょぼい妖怪」の域を超えて「かわいい妖怪」なのではないか?とさえ考えてしまう。
実際、動物が好きな人がすねこすりに出くわしたら恐れるどころか喜ばれ、癒されてしまいそうである。そんな妖怪だ。
先程も言ったが、すねこすりの正確な姿は分かっていない。まぁこれは逆に言うとどんな姿か自由に想像できるという事でもあるので、愛犬家は犬のような姿をしていると、愛猫家は猫のような姿をしていると想像してみるのも楽しいかもしれない。
だがしかし一方で、実は恐ろしい怪物のような姿をしているかもしれない、とも言える。
姿がはっきりと確認されていないとは、可愛さの影でまるで「オカルト」を体現したかのような妖怪だ。
皆さんはすねこすりはどんな姿をしていると思うだろうか?ぜひ想像してみてほしい。
まるで獅子舞の獅子のような顔をしたとても舌の長い、この三匹の中では唯一人型の妖怪。
名前からしてもはややる事はほぼ分かりきっているだろうが、この妖怪のやる事は 「夜中、家の天井を舐めて天井にシミを作る」というもの。
本当にこれだけなのだ。もはや情けなくなるほどのしょぼさを感じる。
想像してみてほしい。 長い舌を伸ばし天井を舐め、シミを作っている天井なめの姿を。
天井を舐めている時、天井なめは何を考えているのだろうか?「へへへ、天井にシミを作ってやったぜ!」とでも考えているのだろうか?
その舌でもっと他にやれることがあるのではないのか? などの疑問が生まれてくる。
まさしくしょぼい妖怪であると言えるだろう。 ここまでで天井なめの事は理解して頂けただろうが、これから更に面白い話がある。
なんと昔、この妖怪は武士に捕まり城の天井のゴミを掃除させられた、という話があるのだ。もはや掃除道具扱いである。
ここまで来るともう可哀想という感情すら生まれてくるが、しょぼいなりに天井を舐めて汚すという悪事(?)を働いているため、まぁ当然といえば当然なのかもしれない。
皆さんも、天井の掃除が大変な時はこの妖怪を探してみてはいかがだろうか?
まぁ、「そんな事をするより真面目に掃除した方がいいだろう」と言われれば、返す言葉もないが。
いかがだっただろうか。妖怪というのは二面性があるものが多く、子供が小さい無力な子供だと思ったら実は猛毒を持っている妖怪だったり、別になんでもない事をするだけだと思ったら人間を二度と目覚めなくさせる妖怪だったりする。
そんな妖怪の中でも今回はどこから見てもしょぼい妖怪をチョイスしたつもりだ。
この記事で、これら妖怪たちの”しょぼさ”を体感していただけたら何よりだ。
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