そもそも妖怪とはなんなのか、どういう存在なのか、どうやって生まれたのかを深く考えたの事がある人はあまりいないのではないだろうか。
今回は「妖怪」とはなにか、についてとことんまとめていきたいと思う。
この記事を読んで頂き、気になった所を自ら調べ妖怪について勉強するようになった暁には、あなたは立派な妖怪博士になっているだろう。
1.妖怪とはなにか、どうやって生まれるのか。
何を持って「妖怪」とするか、については諸説あるが、少なくとも基本的に妖怪とは「人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす非科学的な存在」というもので間違いないだろう。 そして、気になるのは何故妖怪という存在が生まれたのかという所だが、結論から言うと妖怪とは『人間による不可解に対する回答』なのだ。
当たり前だが科学が発展していない時代に生きた昔の人は疫病、災害等の自分達の理解が及ばない現象について一体この現象はなんなのか、何故起こるのか、という疑問について調べ知る方法はない。
そんな時、昔の人達はこれらの不可解な現象を「妖怪の仕業なのだ」と結論付けたのだ。例を挙げるとすれば、山で起こる奇怪な現象を現地の人が「山に住む天狗の仕業」とした、等があるだろうか。
こうして昔の人々は自分達が理解できない現象を妖怪、または妖怪の仕業とし、昔の人々なりに不可解と向き合ってきたのだ。
つまり妖怪とは、昔の人々が不可解と向き合う過程に生まれた副産物と言えるのかもしれない。
そして、当然だが時代が進み、様々な現象が不可解ではなくなってしまっていくにつれ「妖怪」という存在は減っていく。例えば「地震」という現象をとっても、過去の時代に生きた人ならば「誰かの怨念が血を揺らした」「妖怪が国を揺らしている」といった回答を出すしかないが、現代人ならば「海溝型地震は陸側と海側のプレートとのズレによって発生し、そして内陸地震は〜」といった事実が様々な技術の進歩により判明しており、こういった説明が可能になる。
もちろん技術が進歩したとはいえ全ての現象を論理的に説明できるわけではないので「そもそも何故地球のプレートは動くのか」といった不可解はあるのだが、そこに「妖怪が動かしているからだ」等といった回答を出すのではなく、「マントルが流動しているからではないか?」「プレートが自らの重みで沈んでいるのではないか?」という仮説をいくつも立て、いつか不可解を不可解でなくするために時代の進行と共に進歩した技術を使い日々真相へ近づいてゆくのだ。
こういった所を見るに、「妖怪は昔はいたけど今はいない」というのはあながち間違いではないのかもしれない。
2.妖怪とはどう楽しまれ、普及したのか。
そして、「妖怪は人間が理解できない現象に対する回答によって生まれる」とさっき説明したばかりだが、なんと妖怪が生まれるのは必ずしも不可解に対する回答からだけではないのだ。
妖怪が生まれる場所は2つある。「不可解への回答」とは異なる妖怪のもうひとつの姿、それが「創作としての妖怪」である。
前述の通り、妖怪とは昔の人々の不可解への回答として生まれ、時代の進行と共に消えてゆく。そう考えれば妖怪という存在はいつか人々の前から姿を消し、妖怪はその妖怪がいると信じられていた時代について知るための研究材料でしかなくなってしまうと考えるのが自然だろう。
だが時代が進行し中世、そして江戸時代に差し掛かった頃、なんと人々は 「不可解に対する回答とか関係なく、妖怪って面白くない?」 と考え始め、それから人々は妖怪を創作物として、キャラクターとして作るようになったのだ。
その姿は今までの妖怪とは違い、畏れの対象というよりは娯楽としての怖さ、キャラクターとしての親しみやすさ等が強調されるようになり、今までの不可解に対する回答としての妖怪はその「正体が不明の事物に対する回答」という性質上はっきりとした姿形を定めることは難しかったが、創作としての妖怪は姿形を固定化しやすく、「この妖怪はこういうヤツ」というイメージが容易になった。
例えば、驚かれるかもしれないが奈良時代頃に「山に住み怪奇現象を起こす」と信じられていた天狗は当時はどんな姿をしているか明確に知られていなかったのだ。
「赤くて長い鼻の扇を持ったヤツ」という姿は、創作として妖怪が姿形の固定化が進んだ中世、江戸時代以降に解釈、創作され広まったのだ。
そしてこの「創作物として妖怪を作る」という行為は現在もなされており、中には社会的ブームを起こすほどの影響力を持つコンテンツもある程だ。
皆さんが親しみ深いのも、どっちかというとこの「創作としての妖怪」では無いだろうか。
3.まとめ
一通り妖怪とはなにか、どう生まれたかについて説明した。
今までの説明をまとめると、
- 「妖怪」の明確な定義はないが、妖怪とは「人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす非科学的な存在」である
- 妖怪は「不可解への回答として」、または「創作物として」生まれる
といったところだ。
最初でも言った通り、ここまでこの記事を読んでくださった方には是非ここで気になった所を調べ勉強し、立派な妖怪博士になってほしい。
時に面白おかしく、時に畏れの対象となり、その時代の人々の価値観を映し出す鏡となる妖怪。
そんな妖怪が自分は大好きだ。