誰もが知るように、宇宙空間で活動(生存)するためには宇宙服が必要不可欠です。 それもそのはずで、宇宙空間には私たち人間が生存する上で欠かせない酸素がまったくありません

例えば、私たちが生身で水中に潜ると、呼吸することができずにやがて苦しくなります。とはいえ、その水中ですら酸素は存在しています。そう考えると、酸素のまったくない世界というのは想像も絶する環境といえるでしょう。
しかし宇宙空間は「酸素が存在しない」こと以外にも、私たちが生存するには適さない要素が揃った環境なのです。

今回は、SF映画好きなら一度は考えたことがあるであろう

宇宙空間に生身でいたらどうなる?

これを解説していきます。

宇宙空間はあなたが思っている以上に過酷であり、神秘的な世界です。

空はどこまでも高い!では宇宙空間はどの高さから?

画像引用:ファン!ファン!JAXA!

空と宇宙空間の境目はどこ?

これは宇宙空間について考える際に、まず浮かんでくる疑問ではないでしょうか。それを確認する前に、まずは空(大気)の構成について知っておきましょう。これはいわば宇宙までの道のりです。地上から宇宙まで上昇していくイメージでみていきましょう。

対流圏 (たいりゅうけん)
高度0kmから約11kmまでの範囲を指す。
高度が増すに従って気温が著しく低下する特徴があり、100m上昇するごとに約0.65℃低下する。ちなみに対流圏の際(きわ)である高度10km付近は長距離の旅客機が飛行するが、この高度の気温は約-50℃という極寒の世界。およそ25℃の快適な機内と窓の向こうの世界とでは、実に70℃以上もの温度差がある。宇宙空間でなくても万が一、高度10kmの世界に生身で晒されたとしたら、その命が危ぶまれることは想像に難くないでしょう。
成層圏 (せいそうけん)

高度約11kmから約50kmまでの範囲を指す。この範囲では高度と共に気温が上昇する。この成層圏の際である地上50km~55km付近では、気温は-15℃~0℃(平均-2.5℃)にまで上昇する。成層圏では、対流圏のように高度による気温上昇率は一定を示さない。

中間圏 (ちゅうかんけん)

高度約50kmから約80kmまでの範囲を指す。この中間圏に入ると、再び高度に比例して気温が低下する。中間圏の際となる高度80km付近では、その平均気温が-92.5℃という超低温の世界となる。ちなみにこの中間圏では冬よりも夏の方が気温が低い状態になり、夏季にはその気温が実に-100℃以下にも及ぶ。それ故に、この中間圏は"地球上で"最も気温の低いところといえる。
アメリカ空軍では、この中間圏の終わりである高度80kmから宇宙空間と定義している

ちなみに超大規模の噴火が起きた際には、噴出物がこの中間圏にまで入り込むことがある。

熱圏 (ねっけん)

高度約80kmから約500kmまでの範囲を指す。この熱圏では、再び高度と共に気温が上昇する。高度500kmではおよそ700℃に、高度600km付近では1000~2000℃にも達する。しかし熱圏は真空に近い状態であるため、実際にはこうした高温を示さない。あくまでこれらの温度は"相当"ということになる。

この熱圏中の地上100km地点は「カーマン・ライン」と呼ばれ、国際航空連盟(FAI)により、これより上は宇宙空間と定められている

以上、地上から宇宙空間までをご案内しました。

先述の通り、アメリカ空軍は地上から80km、国際航空連盟は100km以上を宇宙空間としており、その定義が曖昧であるのが現状です。

2018年、国際航空連盟が"カーマン・ラインを高度100kmから80kmに見直す可能性がある"と発表しました。そのため、宇宙空間が今後「高度80km以上」となる可能性はありますが、現状(2020年3月現在)では、地上から100km以上の高度を宇宙空間といいます

宇宙空間はどんな環境?

一般に宇宙空間といえば、真空(まったく物質の存在しない状態)であると思われがちです。ところが宇宙空間にも、ごく僅かにですが物質が含まれています。主に気体では水素ヘリウム固体ではケイ素炭素マグネシウムなどの微粒子です。いわずもがな、そこに酸素は含まれていません。

また、宇宙空間の温度は実に-270.42℃です。これは、あと僅かで絶対零度(温度の下限)である-273.15℃にも及ぶほどの超低温です。しかし、宇宙空間は決して極寒の世界ではありません。さて、これはどういうことなのでしょうか...。

先に少し触れましたが、私たちが温度を感じるのは空気が深く関係しています。
例えば、寒い環境において"私たちが寒い"と感じるのは、空気が身体の熱を奪うためです。要するに真空状態、つまり空気がなければ身体の熱が奪われることはないのです。

私たちの身近にある「真空」

普段私たちが何気なく使っている「魔法瓶」。その内部は二重構造になっており、真空の状態が作り出されています。そのため、中に入れた温かい飲み物の温度が長時間保たれるのです。これはまさしく真空状態によって熱が外に逃げないためです。

宇宙空間の環境を簡単に整理すると、

  • 限りなく真空に近い
  • 「熱い」や「寒い」のない世界
  • 音のない世界
  • 無重力

ということがいえます。なんとも不思議な空間です。

【結論】宇宙空間に生身でいたらこうなる

 

宇宙空間に生身でいたら〇〇になって死ぬ

  • 一瞬にして血液が沸騰して蒸発 ⇒ 死亡 
  • 一瞬にして身体が凍りつく ⇒ 死亡
  • 一瞬にして謎の圧力により身体が押し潰される ⇒ 死亡

上記は世間で流布している主な『宇宙空間に生身でいると~』の一般認識ですが、これらはあくまで都市伝説的に広まっているもので、ズバリすべて間違っています。
このような都市伝説が広まった理由としては、SF映画の影響が大きいと考えられます。

SF映画も間違っている
ここでその例をひとつ。
2000年に公開されたSF映画『ミッション・トゥ・マーズ (Mission to Mars) 』において、登場人物が宇宙空間で宇宙服のヘルメットを自ら外すシーンが。ここでは、一瞬にして身体の水分が蒸発して死亡するという描写がみられます。

Q.宇宙空間に生身でいたらどうなる?


A.宇宙空間に生身で放り出されたとしても、一瞬で死亡するなどということはまずあり得ない

[解説]
10秒ほどは意識がある。しかし興奮状態であれば体内のアドレナリンが酸素を消費するため、これが5秒ほどにまで短くなる。

その後は全身の酸素が枯渇し、脳に酸素が供給されなくなるため意識を失うが、脳や心臓は動いている。身体は麻痺および痙攣(けいれん)する。
また圧力の低下により体内のガスが膨張するため、これが鼻や口から水蒸気と共に排出される。このとき嘔吐や、尿や便を排出する可能性もある。さらに、肺の空気も排出される(このとき、呼吸を止めてしまうと肺が破裂してしまう恐れがあるので、息は止めずに口は開いておく)。
口を開けておくため、口内は凍結状態にまで冷やされる。舌の水分は蒸発し、その後生還しても2~3日は味覚を失う。

身体はおよそ2倍に膨れあがる。皮膚や血管はこの膨張に耐えられるので、身体が風船のように破裂するということはない。
耳には、飛行中の航空機内などで感じるような高所特有の痛みが生じる。また、太陽光が当たる場合には、酷い日焼けを起こす。

30秒程度であれば後遺症が残ることはほとんどない(最大90秒ほどであれば、後遺症なく生存できる可能性は十分にある)。

過去にはこんな実験も

かつてアメリカのテキサス州にあるブルックリン空軍基地では、真空に近い環境下に犬と猿を放つという実験が行われました。
犬は約90秒であれば、ほとんどのケースで後遺症もなく生存。
猿に至っては、3~5分間ほぼ真空状態の環境下に置かれながら、復活した例もあるようです。
そう考えると、人間はもう少し長い時間を真空状態に耐えうるかもしれません。

本記事をまとめると、

宇宙空間に生身でいても、それが90秒ほどであれば非常に高い確率で後遺症なく生存できる

先に挙げた都市伝説では、宇宙空間は生身で飛び出せば一瞬で死に至るほどの超危険な空間であるとされています。たしかに宇宙空間が危険な空間であることは間違いありませんが、そこに生身でいたからといって一瞬でどうにかなるわけではないのです。
また、宇宙空間に生身でいることでの死因は、都市伝説のような「失血死」「凍死」「圧死」ではなく、体内の酸素が欠乏することによる窒息死です。

 

万が一、宇宙空間に放り出されそうなシチュエーションに陥ったときには、ぜひとも本記事を思い出して落ち着いて対処してくださいね。

テンペワゾウスキ