【事件】ドッペルゲンガー(分身)を利用した殺人計画事件 -前編- 【実録シリーズ】

“この世には自分にそっくりな人間が3人はいる”

これは生き写し(ドッペルゲンガー)に関する通説として有名なので、聞いたことがあるという方も多いでしょう。

ドッペルゲンガー


一般に自分自身とそっくりの姿をした分身(正確にはそのような別人)のことを指す。オカルト的解釈では、同一人物が別の場所にそれぞれ姿を現したり、同一人物が同じ場所に複数現れることを意味する。これは超常現象のひとつとして扱われ、実際にこのドッペルゲンガーに遭遇して騒然となる出来事が世界各地で巻き起こっている。
またドッペルゲンガーは死の前兆とされ、これに遭遇した人には近く死が訪れるといわれている。いわゆる死期の近づいた人にだけみえる生霊として扱われる側面もある。

かつて、このドッペルゲンガーを巧みに利用したなんとも信じがたい殺人未遂事件が巻き起こりました。本記事では、この『ドッペルゲンガー殺人計画事件』の顛末をご紹介していきます。

全米が震撼した『ドッペルゲンガー殺人計画事件』

『ドッペルゲンガー殺人計画事件』の舞台となったのは2016年のアメリカ・ニューヨーク。この事件の発端は2007年にロシアで起きた「隣人女性殺害事件」にまで遡ります―。

隣人女性殺害事件 (ロシア)


娘のナディア(左)と殺害された母アラ(右)
画像引用:
東洋経済ONLINE

この事件で悲劇のヒロインとなったのは、ナディア・フォード。彼女が以前より憧れていたニューヨークへ渡ったのが2007年でした。ナディアは非常に母親想いで、渡米後も故郷ロシアにひとり残してきた母アラを気遣い、毎日のように電話をかけていました。
そして、そんな仲睦まじい親子を引き離した事件が、ある日突如として巻き起こることになります―。

親子の運命を変えたのは2014年9月。母アラが住むアパート、その隣の部屋にひとりの女性が引っ越してきました。彼女はまるでセレブリティのような見た目をした美しい女性でした。この美女こそ、後に『ドッペルゲンガー殺人計画事件』を巻き起こすことになる張本人、ビクトリア・ナシロワだったのです。
彼女はロシアで恐喝や窃盗を繰り返す犯罪者でした。しかしそんなことは露知らず、アラはビクトリアの引っ越しを機に交流を深め、やがて二人は親しくなりました。

ある日、”ニューヨークへ行く”というビクトリアにアラは、ニューヨーク在住の娘ナディアへの伝言、現金6100ドル(約65万円)、高価なコートを預けます。ところがこれらはナディアに届くことはありませんでした。それどころか、それから間もなくして親子に悲劇が訪れることになるのです。

2014年10月、いつものようにナディアが母アラへ電話をかけますが、これがいくらかけても繋がりません。これを不審に思った彼女はロシアへ急遽帰国。ところが自宅アパートには母アラの姿はありませんでした。ナディアが部屋中調べていると、クローゼットの中からアラが残したメッセージが見つかります。

“DENGI (お金)”

実は、アラは部屋に現金5万ドル(約540万円)を隠していましたが、ナディアがその所在を確認すると、このお金が消えていたのです。部屋からは母が消え、お金も消えていたのです。

ナディアは行方不明となった母を探すために、自らチラシを作って周辺に配ります。さらに母アラに関する情報を掴むため、広大なロシアを車で走り回り、奔走します。ところが3か月が経過しても成果はありませんでした。そこでナディアは探偵を雇い、母の行方を徹底的に探ることに。
そして、道路上に設置された防犯カメラの画像を片っ端から調べ、ついにある1台の車の助手席に寝かされた母アラの姿を確認しました。アラを乗せたその車の詳細を調べると、それはレンタカーであり、その借主はビクトリアだったのです。その後、アラの遺体がビクトリアの故郷で発見されます。

やがて、ビクトリアは殺人容疑で警察による取り調べに応じます。これで事件のすべてが明らかになると思われましたが、ビクトリアはその美貌を武器に捜査官を誘惑し、ロシア国外へ逃亡してしまいます。
その後、インターポールはビクトリアを国際指名手配、彼女の行方を追うことになります。しかしその後、事件は予想外の展開を迎えることになるのです―。


『ドッペルゲンガー殺人計画事件』、その核ともいえる「隣人女性殺害事件」の進展の模様は【中編】にて。

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